婚約者と雪花祭り(後)
私は、彼女の元へ急いだ。
レミマウボクヨ伯爵たちは私を呼び出す罠だ。
彼女と二人だけで会うために私を遠ざけた。
私の命を無視して、部屋に入れる人間は限られている。
部屋に戻ったとき、そこには意外な人物がいた。
異母弟だ。
呆れた表情でデザートを頬張る彼女を見ていた。
異母弟も私と同じで甘い物があまり好きなほうではない。次々と皿の上から消えていくデザートにげんなりするのも分かる。
「兄上。」
異母弟は、私の姿を見ると立ちあがった。
「レオン様、ティッオ殿下が新しいデザートを持ってきて下さったのです。」
「シャル、良かったね。ティッオ、ありがとう。」
私は彼女の美しい髪を撫でながら、異母弟を見た。
何が目的なのだろう。
「ソーリマ様がみえたのですが、すぐにティッオ殿下がみえて。ソーリマ様のご用事は何だったのでしょう。」
フォークを咥えながら首を傾げるのは危ないよ。可愛い仕草だけど。
ソーリマは、父の側妃、異母弟の母親だ。
後ろ楯のラーシナカ家が力を失ったため、どうにかして力を取り戻したいのだろう。分家のナオプール伯爵令嬢と息子の婚約も破談になったし。
だからといって、レミマウボクヨ伯爵の娘を私に勧めてくるとは思わなかったが。
形振りかまっていられないのかもしれない。
「ティッオ、ありがとう。」
異母弟がどういうつもりなのかは分からないが、お礼は言っておこう。
「いや、冒険のゲームが気になって。」
すっと異母弟は、私の視線から逃げた。
照れてるね。目尻が赤くなっている。
「勇者になって魔王を倒すってヤツだね。」
「ああ、乙女ゲームと同調したなら、冒険のゲームとしても可笑しくないだろ。」
異母弟の言うことにも一理ある。
異世界には、乙女ゲームの他に色々あるらしい。それが全てこちらの世界と同調していたら・・・、考えただけても恐ろしい。戦争シミュレーションゲームとやらもあるらしいから。
「魔王はゲームの中だけで十分です。」
彼女が可愛い眉間にシワを寄せていた。
「モンスターに全滅させられ、何十回リセットボタンを押したことか。ゲームだから何十回も生き返らせて出来るのです。」
全滅ということは全員死亡だね。それを生き返らせるとはすごいコトだ。現実で使えたら、その国は無敵になる。死なない国。魔王誕生より恐ろしいかも。
「魔王なんていりません。平和が一番です。」
うーん、ケーキを刺したフォークを片手に口にクリームを付けて言っても可愛いだけだよ。
とてもいいことを言っているはずなのに、異母弟の目が点になっている。
確かにお皿がキレイになるスピードが早いから、そちらに目がいってしまうのは分かる。この細い体の何処に?とは私も毎回思っているよ。
「シャル、休憩で動こうか?」
逆では!という異母弟の視線を無視して、彼女を立たせた。
もちろん、彼女の口のクリームは私の指で取り除いたよ。異母弟がいなかったら、いつもの方法だったのに。とても残念だ。
「ティッオ殿下、ありがとうございました。」
彼女は、優雅に異母弟に礼をする。
「あ、いや、また兄上の手が空いた時に異世界の話を聞かせてほしい。」
うん、照れてるね。異母弟が彼女に歩みよろうとしてくれて何よりだ。いずれ義姉になるのだからね。ある程度は仲良くなっていてほしい。
それに私と一緒に聞くと言った点は誉めてあげよう。今回は見逃すけど、二人きりは許さないからね。
「はい。」
彼女は嬉しそうに返事をした。
うん、良かったね。従兄弟だから仲良くしたいとは言っていたからね。けど、あくまで従兄弟としてだよ。それ以上はダメだからね。
心の中で語りかけておく。
私たちはまた挨拶周りに会場内を歩いた。
雪花祭りから三日後、国に神殿から聖女を連れてこの国を訪れると信書が届いた。
私は、国王である父からその信書を渡されて声を失った。
あり得ない名前を見つけたからだ。
聖女マリークライス・ラーシナカ
嫌な予感がした。
冬の休み、何をしようか?
雪遊びは当然だね。
温泉に行くのもいいなー。
もちろん泊まりでだよ。
混浴を貸切りにするから。
雪の次の日に孤児院?
雪合戦には、参加したらダメだよ。
集中砲火ですぐに雪だるまになるからね。
その後ろに隠れてが、あの子たちの作戦だから。
それでもやりたい?
ふう、仕方がないなね。
風邪をひかないように、雪だるまになって冷えた身体は私がしっかり温めてあげるよ。




