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婚約者とヒロイン(後)

ヒロイン編、最終話です。

7月11日に短編『婚約者とヒロインの懺悔』を投稿します。

彼女をそっと見る。

両手を膝の上に置いて俯いている彼女は、約束を破ったと身を小さくしていた。

怒ってはいないからね。

私は座り直し、彼女の髪をそっと撫でた。

「シャリーブロン子爵令嬢、君は私たちをゲームの中の登場人物としか見ていない。私たちは、現実世界でちゃんと生きている。ゲームの世界ではないから、違うことも当たり前に起こる。」

私は、彼女の肩を抱き引き寄せた。

うん、約束を破ったことに動揺してて何をされているか分かってないね。いつもなら赤い顔をして逃げようとするのに。

こんなことなら、王宮でしたら良かった。寝室(へや)に連れ込めたかも。

不埒なことを考えながら、シャリーブロン子爵令嬢に視線を戻す。

「ティッオたちもゲームの攻略対象者と見ていただけで、現実のティッオたちを見ていない。攻略対象者たちがそれを知ったら、どうなる?知らなくてもゲーム終了後に彼らは今と同じように君を思っているだろうか?」

シャリーブロン子爵令嬢は、目に見えて狼狽えていた。未来のことなど考えてもいなかったのだろう。

「所詮、俺は攻略対象者としか見られていなかったのか。いや、俺を通してゲームの攻略対象者(ティッオ)を見ていたのか。」

シャリーブロン子爵令嬢は、異母弟(ティッオ)の言葉にビクリと体を揺らす。

「ゲームの知識で俺に近づいてきて、ゲーム通りに攻略(こうどう)しただけ。現実(ほんと)の俺を見てくれていなかった。」

異母弟(ティッオ)の声は、とても重く冷たくそして悲しそうだった。

シャリーブロン子爵令嬢は、違うと口を動かしているがそれが音として出ることはなかった。本当に違うと言い切れないからだろう。

もう終わりでいいかな?早く彼女と二人になりたいし。

私は学園長の方を見た。視線が合った学園長が頷いている。

学園だから学園長の許可は取らなければならない。

「シャリーブロン子爵令嬢、処分が決まるまで謹慎を言い渡す。シャリーブロン子爵、王宮に行き事態の説明をするように。」

これで終わりだ。我が国を舞台にした乙女ゲームは、ヒロインのバットエンドで幕を閉じる。

わたしは彼女を立たせ、学園長と文官に後を任せた。

異母弟(ティッオ)たちは、そっとしておいたほうがいいだろう。婚約者との問題もあるし。

学園の私の部屋に入ると彼女を膝の上に乗せて座る。

降りようとする彼女をホールドして離さない。

「シャル。」

少し低い声で呼ぶ。

約束したよね、何もしないって。だから同席を許したんだよ。

「ごめんなさい。」

上目遣いで見るのは反則だよ。ここにベッドは無いのだから。

「ありがとう。」

怒られると思っていたのだろう。驚いた顔になっている。

彼女が側にいたから強制力に勝てた。

シャリーブロン子爵令嬢をヒロインの座から降ろすことが出来た。

けどね、約束を守らなかった罰は受けてもらうよ。

私も頑張ったご褒美が欲しい。

私は、彼女の後頭部を支えた。

何度も何度も唇を重ねる。

やっぱり美味しい。止められなくなる。

彼女がぐったりするまで存分に味わった。私はもっともっと食べたいけど。

今度は私の私室にしようね。あそこなら朝になっても大丈夫だから。


今日は、元シャリーブロン子爵令嬢が修道院に行く日だ。

処刑を望む声もあったが、すぐ前世持ちで生まれ変わられても厄介なので修道院で落ち着いた。

還俗は出来ない。一生、神に仕えることになる。

そこで考えを改めてもらう。

「あら、見送りに来てくれたの?王子様。」

元シャリーブロン子爵令嬢は、少し疲れた顔をしていたがすっきりした笑顔を浮かべていた。

異世界では三十まで生きた女性だった。

「イイコトを教えてあげるわ。」

憑物が落ちたようなその笑みに安心するが、イイコトとは?

風を使って、元シャリーブロン子爵令嬢の言葉が他の者に聞こえないようにする。

「『月明かりのワルツ』には、続編が作られる予定だったの。聖女様を救うね。」

とても嫌な感じがした。

「聖女様はねぇ、青い焔を持つ青銀の髪の美少女よ。ゲーム会社が潰れたから、話だけなのか作られたのかは知らないけど。」

握り締めた手に力が入る。

「確か氷に閉じ込められている聖女様を救うとか書いてあったかしら?」

元シャリーブロン子爵令嬢は、一瞬、私を同情するような目で私を見た。

すぐに吹っ切れた目になったが。

「せいぜい頑張ってねー。」

質素な馬車に乗って、元シャリーブロン子爵令嬢は去っていった。

ゆっくりと力を抜く。

開いた掌には、血が滲んでいた。

私は、周囲に分からないように深いため息を落とした。

「シャル。」

「・・・。」

「シャル?」

彼女がさっきから返事をしてくれない。

ちょっとやり過ぎたかな?ちゃっかり弾力のある膨らみも堪能させてもらったし。

「シャル?ティアシャルドネ?」

逃げるように私から離れ、ソファーの肘を抱き締めるように座る彼女の顔を覗き込む。

真っ赤になってフルフル震えている。

その目には、涙が浮かんでいる。

か・わ・い・い!

また愛でてしまったのは仕方がないよ、ね。


次話から聖女編になります。最終章、かな?

お読みいただき、ありがとうございますm(__)m

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