婚約者とヒロイン(前)
直接対決!
今のところ、何も起きていない。
が、″守る会″の報告では、シャリーブロン子爵令嬢の目付きが怪しいらしい。
彼女の魔道具は強力な物に替えた。
魔法も直接攻撃も効きにくいはずだ。絶対といえないのが不安だ。
異母弟たちもどうしていいか分からないようだ。
シャリーブロン子爵令嬢と冷静に話し合おうとするにも向こうが聞く耳をもたないらしい。
拘束してしまう?とも思う。強制力で無理かな?
このままだと彼女に危害を加えそうだ。
ワナミタ王妃の資料によると、ヒロインの当て馬役の悪役令嬢も異世界の前世持ちの場合もあると。その場合、悪役令嬢は最悪な未来を回避するため色々するらしい。
この間のことを考えると、シャリーブロン子爵令嬢の悪役令嬢は私の婚約者みたいだ。
シャリーブロン子爵令嬢に彼女が異世界の前世持ちだと知られた。
それを知るのが今さらだとは思うがどっぷりゲームの世界観に浸っていた結果なのだろう。
たぶん、シャリーブロン子爵令嬢は彼女が邪魔をしていると思っているね。
口振りからしてゲーム通りに進んでいないから。
それは、彼女が乙女ゲームの知識を使って妨害しているためだと責任転嫁していそうだ。
早々に片をつけよう。向こうが動き出す前に。
これ以上、彼女を不安にさせたくないから。
私は場を設けることにした。
私の隣には可愛い彼女が座っている。
向かいのソファーには、異母弟とシャリーブロン子爵令嬢と父親のシャリーブロン子爵。その後ろに赤・黄・緑の三人が立っている。
学園長と王宮からの文官たちも私たちから少し離れた場所にいる。
ここは学園の応接室。
派手にしたくないため学園で行うことにした。
どうせ議会扱いになるけれど。
「さて、何故、呼ばれたのか分かっているかな?」
私の言葉にシャリーブロン子爵令嬢がビクリと肩を震わせた。
「シャリーブロン子爵令嬢、君は、異世界の前世持ちだね。」
私ははっきりと聞いた。
「・・・・。」
うん、黙りだね。認めるとどうなるか分かっているだろう。
「それもこの国を舞台とした乙女ゲームのヒロインなのだろう?」
異母弟が悔しそうに顔を歪めている。
彼女のように乙女ゲームを知らない前世持ちであってほしいと思っていたのだろう。
「レオンクラウド殿下、娘はそんな者ではありません。」
青白い顔をしながらもシャリーブロン子爵がはっきりと断言する。
「ワナミタ国からいらっしゃったワナミタ王妃は、乙女ゲームの知る前世持ちであられた。ヒロインは、平民か平民の暮らしを知っている貴族が多いと仰られた。」
文官が私の言葉に頷いている。
「すぐに平民から貴族になった者たちを調べ直したが、シャリーブロン子爵令嬢は対象にならなかった。」
文官が重たそうなカバンから資料を取り出し、音を立てて捲り始めた。シャリーブロン子爵令嬢の書類を探しているのだろう。
「それは、娘が平民から貴族になったばかりで。」
「そ、うかな・・。わたしは、なんども、ぎかいで・わだい・・に、しよ、う、と・・・。」
強制力の影響か話すのが辛くなってきた。
息苦しい。頭の中も霞がかかったようにボーとしてくる。
駄目だ、思考がまとまらない。
スッとそれらが無くなった。
腕から暖かい何かが流れこんでくる。
隣を見ると心配そうな彼女の青い瞳と目が合った。
ありがとう。大丈夫、守るから。
私は腕にかかった彼女の手を優しく握ると言い直した。
「私は、何度も議会でシャリーブロン子爵令嬢を調べるように言おうとしたが叶わなかった。」
すらすら言葉が出る。
息苦しくなることもない。
「ワナミタ王妃は、この国を舞台とした乙女ゲームをされたことがあるそうだ。ゲームの内容を話すことは出来ないと仰られた。強制力という見えない力でゲームの内容を変えてしまうようなコトは、言えなくなるようだ。」
先ほどの私のように。
「シャリーブロン子爵令嬢に対して強制力が働いている。つまり、シャリーブロン子爵令嬢はゲーム関係者と考えた。」
文官が首を振っている。シャリーブロン子爵令嬢の資料が見つからなかったと。
「ワナミタ王妃は、ゲームと違うところがあると教えてくださった。違うから話すことが出来ると。それをシャリーブロン子爵令嬢は知っていた。」
シャリーブロン子爵令嬢は、睨むように私の隣に座る彼女を睨んでいる。彼女が私に話したと思っているのだろう。ワナミタ王妃から聞いたと言っているのに。
「ワナミタ王妃歓迎の舞踏会で、私の婚約者がイハヤタカ侯爵令嬢だと知った時、とても驚いていたね。″うそ″と呟いたのを私は見た。」
「シャル、これとこれは外してはいけないよ。」
「これは、こうすると作動するからね。」
「これは、こう投げるんだよ。」
「・・・。」
「シャル?分かった?」
「レオン様、重過ぎて動かせません。」
見たら、彼女の腕が魔道具だらけだった。
過保護な殿下です。




