婚約者と中庭
誤字報告、ありがとうございますm(__)m
私は知っている。
″守る会″から報告を受けているからね。
シャリーブロン子爵令嬢は、確かに嫌がらせをされている。
が、シャリーブロン子爵令嬢か受けている嫌がらせの三割以上が自作自演だと。
(彼女たちがどう調べても他人が行うには無理な事例が幾つもあったらしい)
ほとんどの嫌がらせが平民によるもので、貴族に脅されたものであること。
脅した貴族は何人もいて、その中に彼女が入っているわけもないこと。
″守る会″は、実にいい働きをしてくれている。
『盛大に意地悪しているように見えて、小さな意地悪に出来るか』をシャリーブロン子爵令嬢に嫌がらせをしている平民に伝授して被害を最小にしていた。
近々、彼女にアクセサリーをプレゼントする予定がある。デザインの一部を使ったブローチを″守る会″に贈ろう。
彼女に渡すのは、唯一だからね。
「シャル、行こうか。」
私は無視することにした。
ハラハラと涙を流す姿は、庇護欲を唆るようで数人の男子生徒が心配そうにシャリーブロン子爵令嬢を取り囲んでいる。
嘘泣きだからね、それ。簡単に騙され過ぎ。
ワナミタ王妃によるとイベントと呼ばれる分岐点をどう対処するかで、ヒロインと恋愛対象者=攻略対象者の親密度が変わっていくらしい。
対処の仕方がよければ攻略対象者との親密度は増し、対処が悪ければ酷い場合は嫌われてしまう。
対処の仕方は選択制なので、間違えなければ親密度は増すだけらしい。無難な答えを選べば、それなりに親密度は増していくのだろう。
この状態も乙女ゲームのイベントか何かなのだろうが、付き合う必要などない。
なにより彼女に関わらせたくない。
「レオン様。」
戸惑う彼女の声に私は安心させるように微笑んだ。
何も心配することはないよ、言い掛りだと分かっているから。
「いくらティッオ様が仲のいい従兄弟だからと言って、酷すぎます。」
歩き出した彼女の足が止まった。
異母弟の名前が出たことに私に一つの懸念が生れた。
異母弟が彼女を嫌っているのは、周知のことだ。シャリーブロン子爵令嬢は、それを知らない?
私の婚約者が違うことを分かっていながら、それがどんな人物なのか調べていなかった?
だとすると・・・。
「あ、あの、私はティッオ殿下と親しくしておりません。」
躊躇いながら、彼女がシャリーブロン子爵令嬢に真実を話す。
シャリーブロン子爵令嬢は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしたがすぐに反論してきた。
「う、うそです!私みたいなのが、大切な従兄弟と仲良くしているのを快く思われなくて・・・。」
手で顔を覆って本泣きを始めたシャリーブロン子爵令嬢は、情報収集は全くしていないようだ。
簡単に手に入る情報さえも手にいれていない?
それを確認するよりも、私はすぐにここを立ち去るべきだと思った。
が、遅かった。
彼女が何故知らないのか不思議そうに首を傾げて言ったからだ。
「ティッオ殿下と私は確かに従兄弟ですが、前世持ちの私は嫌われておりますわ。」
ピタリと泣き声が止まった。
「ぜんせ?前世持ち?転生者?」
呟く声を無視して、私は彼女の体を押してその場を足早に後にした。
シャリーブロン子爵令嬢は、彼女が前世持ちだということを知らなかった。
知っているから警戒して彼女に近寄らないのだと私は思っていた。
ワナミタ国のヒロインは、前世持ちであったワナミタ王妃を邪魔をする者として殺そうとした。
異世界の前世持ちであり、乙女ゲームの知識を持っているワナミタ王妃を。
シャリーブロン子爵令嬢の力は弱いが、ワナミタ国のヒロインのように彼女に何かしてくるかもしれない。
すぐにでも彼女の魔道具を強いモノに入れ換えよう。
何かあってからでは遅いから。
けれども可愛い彼女に焦りは見せられない。
あの場所から離れたベンチに彼女を座らせる。
「シャル、大丈夫?」
守るからね、絶対。
「レオン様。わたし・・・。」
ギュッと握りこんだ彼女の手に私の手を重ねる。
「シャルは何もしていない。向こうが勘違いしているだけだ。」
私は、ちゃんと分かっているからね。
だから、気にやむことは何もないよ。
安心させるように彼女の額に口付ける。
「はい。」
頬を染めて彼女が頷いてくれた。
食後の運動は、必要だからね。
彼女はデザートを五つも食べて、今日もぽっこりお腹が出てる。
そのお腹、可愛いんだけど・・・。
でもねぇ・・・。
撫でたら、怒るだろ?
すごく撫で回したい。
ほんとにそのポコっと出ている部分を優しく撫で撫でとしてみたい!
でも、ダメだろう?
だから、運動しようね。
中庭に花を見に行こう。
本当はお腹と言わず、彼女の身体中撫でたいけど。
お、お巡りさん、こっちです。




