婚約者と攻略対象者(後)
私はため息を殺しつつ、次の話題に移った。
悪役令嬢を生み出さないためにも必要なことだ。
「ところで、婚約者とはどうなっている?」
全員、顔をしかめている。
「レオンクラウド殿下は、ご自身で選ばれた方を婚約者にされましたから。」
赤の言うことも分かる。
確かに私は、私が選んだ彼女を婚約者に出来た。
それはとても幸運なことだ。
私はそのための努力は十分したからね。
けれど、自分で選んでいないからと蔑ろにするのは可笑しいだろう。
「では、立場をかえよう。」
三人は、訝しく眉を寄せる。
「君たちの婚約者が、人目を憚らず一人の男性と懇意にしている。婚約者にも男性にも苦言を伝えても態度を改めるところか、余計酷くなる。」
何を言っている?という顔だね。
「君たちは、婚約者に相手にされない者と嘲笑われ、婚約者は常識がない者として嘲笑され、そんな子供たちを育てたと家の格は落ちる。」
「そんなの浮気した婚約者が悪いに決まっている!」
緑が怒気を露に言い放っているが、私はため息しか出ないよ。
「君たちが、婚約者にしていることだよ。男性をシャリーブロン子爵令嬢に代えてごらん。」
「スマラタ嬢は、まだ学園に慣れてなくて。」
だから、何?
「彼女たちは、スマラタ嬢に嫌がらせをして。」
苦言を言っただけだよ。貴族としての常識で。
「私たちは、心の狭い者とは付き合えない。」
赤、黄、緑、三人、言いたいのはそれだけかい?
「私は、大切な婚約者に不必要に近づく男性がいたら、二人に注意する。私の立場から注意したら、男性は苛められているように感じるかもしれないし、回りからもそう見えるかもしれない。」
例えでも私以外の男が彼女に近づく話をしなければいけないのだろう?
ああ、ムカついてきた。
私の可愛い彼女に近付く男なんて許せるはずがない。
許す気もないね。許せなくて当然だ。
本当にそんな男性がいたらどうしてくれよう?
楽に死ねないことは確かだろう。
「婚約者に悪評がたつのも許せないからね。直らなかったら、むろん行動するよ。幸いそんな男性がいたら排除する力を私は持っている。」
あれ、全員、顔色が悪いよ。震えているのは何故かな?
例えの話だよ、本当の話だったらこんな所に私はいないよ。
とっとと彼女を閉じ込めて、相手を・・・内緒にしておこう。
まあ、話をもどしておこう。
「君たちが婚約者を蔑ろにし、他の女性に懸想している常識のない者と嗤われるのは仕方がない。
だが、君たちの婚約者が、婚約者を盗られた者として嗤われるのはそれこそ可笑しい。良い条件で解放してあげなさい。」
婚約者たちに恥をかかせている、その自覚を持てないようだね?
これほどバカではなかったと思ったのだが・・・、強制力の影響か?それとも恋は盲目という言葉通りなのか?
どちらにしろ、これ以上言っても無駄だろう。
異母弟だけは何かを考えているようだ。
良い方だと思いたい。
「では、失礼するよ。」
私は異母弟の部屋を後にした。
あれから何もしなかったわけではない。
異母弟たちやその婚約者たちに話をしようとすると何か用事が入ってしまう。
シャリーブロン子爵令嬢に対してもそうだ。
異母弟と一緒に呼び出そうとすると邪魔が入る。
やはり強制力が働いているのか?
そうしているうちに、シャリーブロン子爵令嬢の話をよく聞くようになった。
もちろん悪い話ばかりだ。
乙女ゲームと同じように高位貴族や富裕層の婚約者がいる男性と仲良くしている、と。
同性から無視され、持ち物は破られたり隠されたり、水をかけられたり、嫌がらせを受けている。
嫌がらせをされては、男性の前で儚げに泣いて庇護欲を誘っているらしい。
私の可愛い彼女には近づかないように、異母弟たちが頑張っているようだが・・・。
とうとうシャリーブロン子爵令嬢がされている嫌がらせを彼女がやらせていると噂がたつようになった。
何故、そんな話になるのだろうね?
シャリーブロン子爵令嬢が彼女の名前を出す度に、異母弟たちがそんなことないと言っているらしいが聞く耳を持たないらしい。
どうやら、私の婚約者を悪役令嬢にしなければならないようだ。
そんなシャリーブロン子爵令嬢の思惑に乗った者がいる。
彼女は困惑の顔をして私の隣に立っている。
秋の花を見に中庭を彼女と散策中だった。
「大丈夫かい?」
私は彼女の肩を抱き寄せた。
私たちの目の前には、ポロポロと涙を流したシャリーブロン子爵令嬢がいる。
「何故、こんなことをするのですか?」
甘い声で訴えてきた。
もし、彼女に近付く男がいたら、て?
本気で彼女のコトを思っていたのなら、見逃してはやる。
二度と彼女には会わせないけど。
そうでなかったらどうするって?
逃がすわけないよ。
彼女を騙そうとしていたわけだ。
殺してくれと言っても殺さないよ。
男のむさ苦しい叫び声など聞きたくないから、喉は潰しておこう。
動けないように手や足を切っておくのは当たり前かな?
二度と彼女の顔を見れないようにしてもおかないとね。
彼女の声を聞かせるのももったいない。
えっ?何、真っ青になっている?
冗談だよ、そんなこと本当にしないよ。する必要もない。
その前にどうにかしているからね。
一番権力を持たせてはいけない人だと思います。
7月6日に短編『婚約者とヒロインの迷走』を投稿します。




