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婚約者と秘密の会(後)

私は学園にある王族専用の部屋にいる。

この授業と次の授業は帝王学で習ったことだから、この部屋で公務(しごと)の書類を片付けていた。

執務室から持ってこられる書類だから簡単に終わってしまう。

重要書類は、持ってこられない。

見られたり、紛失したり、()()()()られたりしたら、大変だからね。

綺麗に片付いた机にさっきの嘆願書を置く。

さあ、どう処理をしよう?

取り敢えず、キャスター・ユインスキーを次の休みにここへ呼ぶように伝える。

休み時間が短すぎて私は彼女のところに行けないからね。

その次の休みは昼休憩になる。長い休み時間に彼女以外に時間を使いたくない。

紙を取り出し、ペンで″取り決め″を書き出した。

「殿下、申し訳ございません。」

部屋に来たなりキャスター・ユインスキーは、またガバッと頭を下げた。

机にあたっていたらまたいい音させていたね、きっと。

立場を心得ている、空気が読める、態度もいい、ユインスキー宝飾商は()()なければ安泰だろう。

「″これ″を守れるのなら、認めよう。」

私は彼の前にさっき書いた紙を差し出した。

「拝見致します。」

緊張しているのは分かるけど、そのギクシャクな動きは笑いを堪えるのが大変なんだけど。

キャスターの目が大きくなっていく。

「彼女はね、自分のせいで誰かが傷付くのを凄く嫌がる。だから、″それ″を守れないのなら、認められない。」

私が彼女に婚約解消だの、婚約破棄だのをお願いされて傷ついていることは無視されているけどね。

「わ、わか、りました。伝えます。」

キャスターはマジマジと文字を見ながら言葉をつむぐ。

「彼女は、君の婚約者に感謝しているよ。二人組の授業では、いつも組んでもらっていると。」

「いえ、エメリンは、恐縮だと。上手く出来ず、足を引っ張ってばかりで申し訳ないと。」

キャスターは青白い顔をしながらも汗を垂らして立っている。

元公爵令嬢(マリークライス)に命令されて、わざと彼女と組んで意地悪していたのは知っているよ。

その後、友人と集まって反省会をしてるのも。

反省会の題目はいつも『盛大に意地悪しているように見えて、小さな意地悪に出来たか』だったよね?

あーだ、こーだと騒いでいると聞いているよ。

うん、女性の彼女の隠れファンなら仲良くしておいて大丈夫だろう。

「今まで通り、他の令嬢たちの反感を買わない程度で接してもらえたらいいよ。″それ″を()()()のなら、″友達″でもね。」

「わ、わかりました・・・。」

この件はこれくらいでいいだろう。

「ところで、シャリーブロン子爵家の鉱物は、どんな感じなのかな?」

鉱山が見つかったことにより急に潤ったシャリーブロン子爵。

平民から引き取ったばかりの令嬢も夏の休み明けから学園に編入してきた。

異母弟(ティッオ)の側をウロチョロしている令嬢だ。

「鉱物の種類も採掘量は多いですが、質としては中級の上がたまに出るといった感じです。」

質より量で潤っている感じなんだね。調べた結果と同じだ。

新しい鉱脈を見つけなければ十年も持たないだろう、今の採掘スピードでは。

早く()()()を見つけておかないと、鉱物が採れなくなったら終わりだ。

「ありがとう。戻っていいよ。」

休み時間も終わりになったためキャスターに退出を促した。

逃げるように部屋を出ていかなくても別にとって食ったわけでもないだろう?

ふう

ため息が出る。

もう一限我慢しないと彼女に会えない。

平民の中に″イハヤタカ侯爵令嬢を守る会(守る会)″なんてものが出来たと知ったら、彼女は悲しそうな顔をするだろう。

貴族に睨まれるようなことはしないで欲しいと顔を歪ませる。

だから、約束させるからね。

保身に走ること。

自分の身、家族を考えて無理無茶はしないこと。

優しい彼女が嫌がるからね。

彼女のために誰かが犠牲になることを。

まあ、そんな彼女だから守りたくなるのだけど。

ワナミタ王妃の書いた資料の写しが目に入る。

この国を出発される間際に渡された物だ。

何回も読んだ。だから、どんな人物がヒロインになるのか理解できているはずだ。

ヒロインが平民もしくは平民の生活をしたことのある者なのは、異世界の遊び手(プレイヤー)のほとんどが平民だからだ。

遊び手(プレイヤー)が、共感できる存在がヒロインになれる。

異世界(ぜんせ)が平民だった彼女も遊び手(プレイヤー)が共感できる存在だといえる。

だが、彼女はヒロインではない。

彼女は、私の可愛い婚約者だ。

私が選んだ私の愛しい人。

早くお昼になってほしい。

彼女に早く会いたい。

キャスターの額は、どうなっているのだろう?

あれだけいい音がしたのに、赤くもなっていなかった。

コブのようなものも出来ていなかった。

次は、鉄でも置いてみよう。

どこまでの硬さなら耐えられるのか?

その挑戦、受けて立つ!


※人体実験は、法律で禁止されています。


7月3日に短編『婚約者と平民の誓い』を投稿します。

キャスターの婚約者の話です。

お読みいただき、ありがとうございますm(__)m

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