婚約者と会談
疎外感。
「わたくしの話でご迷惑をお掛けしているようですね。」
部屋に入ったワタミタ王妃は、小さく息を吐いた。
今日は、ワタミタ王妃とお茶会だ、私の可愛い彼女と三人で。
乙女ゲームの反響は、すごい。
異世界の前世持ちを危険視する者たちも出てきた。
「わたくしが語れる乙女ゲームのことを、紙に残しておきます。」
私は、ありがとうございますと頭を下げた。
異世界の前世持ちとして、彼女への風当たりが強くなってきている。
彼女が、国を揺るがすヒロインにはなり得ないのに。
今も文官が二人、部屋の隅に控えている。
異世界の者同士、不穏な話をしていないか見張っているのだ。
「この国は、転生者を差別しないことになっているとお聞きしたのですが・・・。」
「はい、法律上は。前世持ちは平民に多く、貴族はほとんどいないため、受け入れにくいのかもしれません。」
そう、平民の間では前世持ちは受け入れられている。
前世の世界を本や芝居にしたりして、商売をしている者もいるくらいだ。
「ところで、あれは、扇風機ですの?」
ワタミタ王妃は、窓際に置いてある魔道具を見て、一発で名前を言い当てる。
さすが異世界の前世持ちだ。
側にいって、ジッと見ている。
「あら、氷が前に置いてあるわね。」
「はい、そうすると冷気が扇風機の風に乗り、涼しくなるとテレビでしていたので。」
テレビは、映像を流す機械だったよね?
テレビがある所は、同じ映像を観ることか出来る。
不思議な機械だ。
「テレビ!懐かしい。月九、今、何してるんだろ。」
げつく?テレビに関係している機械?
「レオン様、月九は、テレビで観られるお芝居です。月曜日という日の夜九時から、見られるので月九と呼ばれています。」
テレビでは、色々な番組というものが観られるんだったね。
ハンググライダーを使うアニメもテレビで観ることができた、と。
「竹トンボも町で見たわ。」
竹トンボは、分かる。
アンタイルや残念男と作った覚えがある。
羽を薄くするのに苦労したことと、空に竹トンボが飛んだ達成感、いい思い出だ。
「竹がなくて、木トンボですが。」
竹という材質が見つからなかったから、仕方がない。
海を越えた遠い国ならあるかもしれないが、行くまでに何年もかかってしまう。帰ってくるのにも同じだけかかる。
もっと移動が早く出来るようにならないと無理だ。
「竹コプターは、無理なの?」
竹コプター、聞いたことがある。
竹トンボとよく似た機械で空を飛ぶことが出来る。
ロボットというものが出てくるアニメのアイテムだったか?
「やはり、あの小さな羽では、よほど小さな物しか支えきれず。」
「作ってみようとしたんだ。スゴい!」
ワタミタ王妃、口調が砕けてますよ。
「どこでもドアは?」
「あれも難しくて。」
凄いね、どんなモノか分かっているから会話がスイスイと続く。
彼女が楽しそうにしているから、何も言わないけど・・・、私がいるコトを忘れていない?
「レオンクラウド殿下、失礼しました。あまりにも懐かしくて。」
一人占めしてごめんなさい。
ワタミタ王妃、面白そうに笑わないで下さい。
彼女に忘れられたみたいで、思わず貴女を睨み付けていた私も悪いのは分かっています。
「ほんとに大切になさっていらっしゃる。」
どうかしたの?と彼女が見てくるが、相手にされず拗ねていたなんて言えるわけがない。
すっと、視線を反らしてしまう。
ワタミタ王妃が生暖かい目で見ているのが分かる。
そういう目で見られると、居心地がすごく悪い。
「お茶にしましょう。」
私は、照れ隠しにお茶の席に二人を誘った。
「本当にごめんなさいね。」
ワタミタ王妃は、笑いながら言った。
彼女が楽しそうにしていたから・・・。
あれほど、楽しそうに話す彼女を見られたから・・・。
うん、良かったはず・・・。
きっと、そう、絶対・・・。
「幸せにしてあげてね。」
言われなくとも。
けれど、私は、その言葉に力強く頷いた。
異世界の前世持ちに負けた殿下でした。
6月21日に短編『婚約者と怪談』を投稿します。
その話で、転生王妃編は、終了です。
お読みいただき、ありがとうございます。
7月に『婚約者とヒロイン』編を投稿します。




