婚約者と晩餐会(後)
おとゲー、分かりません。
隠しキャラって、裏ボスみたいなモノなのかな?で、解釈しました。
「何故、ヒロインと言われる方は、それほどまで人を惹き付けたのですか?」
そうゲームに似た世界だからといって、ヒロインが、何故、そこまで同じように気持ちを操れたのか。
周りはただ聞いているだけだ。話についていけないのだろう。
「第二王子は、第一王子に強い劣等感を抱いておりました。
聡明叡智であられた第一王子は、病弱でさえなければと常に言われておりました。第二王子は、体が丈夫なだけで第一王子に劣る自分が王に成って良いのか悩んでもいらっしゃいました。それをゲームで知っていたヒロインは、ゲーム通りに第二王子を癒したのですわ。後の方々もそうです。」
それなら、異世界の乙女ゲームはとても恐ろしいモノだということだ。将来、国の中枢を担う者たちを虜にする術を教えるのだから。
傾国の美女と吟われた女性たちは、皆、乙女ゲームをしていた者たちだったのだろうか?
「けれど、本当にうまくいったのでしょうか?」
ポツリと言ったのは、彼女だった。
「どうしてそう思われます?」
不思議そうに聞いたのは、ワタミタ王妃だ。
「友人がそういうゲームをしていたのです。友人は、恋愛対象となる男性が五人いる場合、それぞれ恋愛を成就させないと、つまり五回ゲームをしないと、六人目の恋愛対象と恋愛できないと申しておりました。」
そうか、経験が足りないと言いたいのだ。
五回分の恋愛経験が無いと、六人目とは上手くいかない。いや、全員、最後にはうまくいかないのかもしれない。
あの王殺しの前世持ちのように。
対象者一人に対し一度のゲームを対象者全員に対し一度でするのだから、経験不足がどの対象者に対しても必ず出来る。
だからといって、それに巻き込まれる者たちは堪ったものではない。
「この世界では、異世界のゲームのようにやり直しが出来ません。一度限りです。それに回りの方々もゲームの駒ではなく、生きていらっしゃいます。
ヒロインの方が、ゲームのつもりで生きていらっしゃったから、ゲーム通りに進まなくなったのでしょう。」
やり直しがきく、それは便利な機能だね。
ゲームならではの機能なのだろう。
現実世界では、そんな機能、存在しない。
だから、みんな足掻きながら一生懸命生きている、私も。
ワタミタ王妃は、瞬きを繰り返したあと嬉しそうに笑った。
「その通りだわ。ゲーム通りに進んでいたら、ヒロインは、幸せになっていたはずだもの。」
私は、彼女の手を握った。
どうしたの?と問いかける彼女の眼差しに、何でもないと微笑んで答える。
もしかしたら、この国を舞台としたゲームがあるのだろうか。
将来、そのゲームに振り回されるかもしれない。
ワタミタ王妃は、それを知っていてこの話をされたのかもしれない。
彼女は、乙女ゲームはしたことがないと言っていた。
けれど、彼女はこの世界がゲームと似ているだけで、同じ世界では無いと言っている。
それがとても嬉しく誇らしかった。
大丈夫、私は、そんなゲームには振り回されないから。
彼女一筋だからね。
私は浮かれていて、晩餐会に参加した貴族たちの表情を見ていなかった。
彼らのほとんどが、前世持ちを嫌っているのを失念していた。
ワタミタ王妃のこの告白が、私と彼女の婚約に大きく影をさしたことに気が付けなかった。
晩餐会はお開きになり、彼女は着替え用に与えられた客室にいる。
私の部屋で着替えたらいいのに、と言いたい。
部屋に戻ったら彼女がいるのは、どれだけ幸せなことだろう。
私は、ワタミタ王妃を部屋にエスコートしていた。
「先程のお話、我が国も無関係ではないと?」
私の言葉に目を丸く見開いて、ワタミタ王妃は笑った。
「貴方と青銀の騎士は、後から対象になる人なの。」
聞きたくなかった言葉だ。
疑似恋愛対象者が何人いるのか知らないが、全員と恋愛成就の状態になったら、ヒロインとやらが絡んでくるのか?
「けれど、ストーリーがずいぶん変わっているわ。悪役令嬢はもう退場しているし、青銀の騎士は姿がない。そもそも貴方の婚約者自体、ゲームと違うから。」
そう言いながらもワタミタ王妃の表情は、優れない。
「ゲームの強制力というモノもあるし、ヒロインが魅了や魅縛を持っている場合があるわ。」
強制力?魅了?魅縛?魔法か何か、か?
ただ、油断は出来ないということだ。
彼女に心配をかけたくないのに。
ワタミタ王妃の部屋に着いてしまった。
「ありがとうございます。」
部屋に消えていくワタミタ王妃の背中を見て、グッと手を握りしめる。
詳しく聞かなければ、彼女との未来のために。
シャル、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
まだまだデザートはあるし、私の分もあげるから。
美味しそうにデザートと頬張る彼女に苦笑してしまう。
淑女の仮面が外れかかっているよ。
そんなところも可愛いけど。
大丈夫、料理人たちは分かっているから。
部屋にデザートを用意してくれているよ。
食べ過ぎても大丈夫なドレスにしてあるから。
本当は、食べさせてあげたいな。
あっ!口の端にクリームが。
仕方がないから、指でとってあげる。
本当は、舐めたいけど。
はい、私の分。
食べられるだけでいいからね。
いつも思うけど、そのお腹にどうやってあれだけのデザートが入るのかな?
6月20日に短編『婚約者と転生王妃(王妃視点)』を投稿します。




