婚約者と晩餐会(前)
貴族の仕来り、分かりません。
この国独自ということで。
王宮は晩餐会と舞踏会の準備で従者や侍女たちがいつもにはない緊迫した雰囲気を出している。
私は、可愛い彼女を迎えに行くのに部屋を出た。
晩餐会には王族と高位貴族が参加する。
その後の舞踏会は参加出来る貴族が王宮に来る。
また、嫌なヤツに会ってしまったよ。
異母弟も婚約者を迎えに行くのか?
ナオプール伯爵令嬢だったはずだ。
最近、子爵令嬢と懇意にしている話を聞くが婚約者のいる者として節度を持って接しているのだろうか?
あまりいい話を耳にしていない。
「兄上、お迎えですか?」
赤みがかった金髪を揺らしながら鬱陶しそうに聞いてくる。
嫌なら聞かなければいいのに。
「異母弟は、行かないのかい?」
私は、どうどうと彼女に会える機会を無駄にしないよ。
只でさえ横槍が入りまくるのに。
「私は・・・。」
婚約者に対する礼儀は、守らないといけないよ。出来ないのなら相手に有利な状態で自由にしてあげないと。
問題がないのに王族との婚姻が流れたというと相手の女性の将来を潰すだけだ。こっちは婚姻話は来るけど、相手は王族に捨てられた傷物になるからね。
分かっているのか?
「悩みがあるなら相談に乗る。今は時間がないから。」
晩餐会に遅れるといけないからと、私は異母弟を置いて馬車に乗り込んだ。
今夜のためのドレスとアクセサリーは彼女に贈ってある。
晩餐会用と舞踏会用。
きっと似合うだろう。こういう時にしか受け取って貰えないのが寂しい。
私からの贈り物でいつも着飾ってほしいと思うのは我が儘か?
男としたら当たり前だと思うけど。
イハヤタカ家に着いた。
彼女が降りてくるまでアンタイルと情報交換する。
残念男の行方はまだ掴めない。
あいつを使って何をしようとしているのか。
目的が分からないため対策も立てにくい。
残念男対策の魔方陣もまだまだ開発途中だそうだ。
残念男の幼なじみであるカンサエルが必死に研究しているが。
カンサエルは、イハヤタカ家の次男、彼女のすぐ上の兄でアンタイルの弟だ。
「お待たせいたしました。」
彼女が現れた。
息を飲む美しさだ。
みんなに見せて回りたいし、もったいなくて一人占めしたい。
相反する思いに悩む。
黄色に青銀のレースの縁取りのドレス。緑と青の石で作ったネックレスとイヤリング。
長い青銀の髪にも緑と青の石で作った髪留めが使ってある。
全て私と彼女の色だ。
青銀を黄色の薄いレースで包み込んだドレスもいいかもしれない。
次回、仕立屋と相談しよう。
「綺麗だよ。」
そう言うと、彼女は頬を赤らめた。
そんな小さな仕草も可愛くてしかたがない。
「さあ、行こう。」
私は出発のため玄関にいたイハヤタカ侯爵夫妻にも挨拶をして王宮に向かった。
彼女は初めて会う異世界の前世持ちに期待と不安があるようだ。
話した感じでは悪い人ではなかったよ、ワタミタ王妃は。
やはり長い間国を支えていただけあって、ふとした瞬間に見せる威厳は半端なく怖いものだけど。
彼女をエスコートして晩餐会会場に入りたかったけど、私は国客であるワタミタ王妃をエスコートしなければならない。
護衛騎士に彼女を任せ控え室に行く。
そっと覗いて、彼女が私の隣の席にちゃんといるか確認する。
一度違う場所に案内されていたことがあるからね。
うん、大丈夫だ。
「心配なのですね。」
クスクス笑うワタミタ王妃に少し恥ずかしく思う。
過保護すぎなのは分かっている。
けれど、これでも大丈夫と安心出来ないのだから仕方がない。
「婚約者様は、異世界の転生者でしたね。」
前世持ちを転生者と言うのか。前世持ちより音がいい。
「はい、この国では風当たりがキツくて、肩身の狭い思いをさせています。」
ほんとに毛嫌いしている人がこの国では多い。
他国ではあまりされなくなったのに前世を覚えているか確認をまだしている。
聞き取りだから、前世を覚えていても隠している者もいるだろう。
「弟君は、婚約者様に心を開かれて無いようですね。」
憂いのある声に何故?と問いかけようと口を開く前に従者の声がかかる。
「時間です。」
私は、ワタミタ王妃に手を差し出し席までエスコートした。
異母弟の隣にはちゃんと婚約者令嬢が座っている。顔色は良くないが。
よく話し、よく話させなければいけない。
私がそう思っていると和やかに晩餐会は始まった。
さて、次回は、どんなドレスにしよう。
あまり派手なのは、彼女には、似合わない。
本当にシンプルな感じが似合う。
え、また胸のサイズが変わったのかい?
じゃあ、あまり胸の大きさが目立たないデザインで。
彼女に立派な胸があるのを知っているのは、私だけでいいからね。
他の男が胸に注目するようなデザインは、許さないよ。
デザイナーは、また眠れない夜を過ごすのであった。
6月20日に短編『婚約者と転生王妃(王妃視点)』を投稿します。




