婚約者と転生王妃
プリン、再登場!
ワタミタ王国の王妃がやってきた。
ワタミタ王国は、隣国のルイブロン国の向こう、険しいアーミサ山脈を越えた我が国と国交も無かった国。
来国されたのは、病弱だった夫である王を早くに亡くし、幼い息子王の摂政として国を支えてきた女傑の方。
息子王の妃が子育てが一段落ついたこともあり、王妃の座を譲り周遊を兼ねた外交の旅に出たとなっている。
息子王妃に気を使って、国外に出たということが真相なのだろう。
在位期間が長かったためか、ワタミタ王妃と呼ばれることが多く、息子王の妃は現王妃と呼ばれているらしい。
ワタミタ王妃は異世界の前世持ちであり、平民育ちの男爵令嬢であったのにも関わらず、王妃の座についた人であった。
そう、議会の者たちが私の可愛い婚約者と別れさそうとしているネタと良く似ている。
ワタミタ王妃は良い例なのに、議員たちは悪い例のみネタにしている。
まあ、私もワタミタ王妃を調べて知ったことなのだが。
困ったものだ。
「ようこそいらっしゃいました。」
私は、立派な馬車から降りてきたご婦人に腰を折った。
黒髪の黒い瞳の貴婦人。
身長はそれほど高くなく、顔は重責を背負われていた証が刻まれているが、しわくちゃということではない。
微笑まれると可愛らしいお婆様に見える感じの方。
「お出迎え、ありがとうございます。」
優雅に挨拶する姿は、さすがに元王妃と思えるくらい自然で綺麗なものだった。
私の彼女の格式ばった挨拶は少しぎこちなくて、それが初々しくて可愛い。
やっぱり彼女も連れてこれば良かった。
「あなたが、レオンクラウド殿下なのかしら。」
さっと全身を見られる。
賓客を迎えるので、私も今日は正装をしている。
可愛い彼女は、この白の正装も軍服も頬を染めて、格好いいと言ってくれたから、他の人の印象なんてどうでもいいが。
「はっ、レオンクラウド・ヒロド・ファス・コードストブルーと申します。」
「ワタミタ王国、ルミ・サマタラナと申します。よろしくお願いいたします。」
まず、長旅から休んで頂くのに部屋に案内する。
国王陛下との謁見などは、明日からの予定だ。
「本当にスチル通りね。なら、もうあの子に会っているのかしら。」
別れ際に小さな声で呟かれた言葉が気になった。
今日は、学園に来ていた。
ワタミタ王妃ルミ殿下の来国で、また学園を休みがちになっていた。
彼女に会える学園は、貴重な時間なのに。
害になりそうな奴らは、学園から去って行ったけどね。
消えたのではないから。
なんだかの理由で学園に通えなくなり、去っていっただけ。
学園は、裕福な家の子供しか通えない。
何故か、急に先立つものが用意出来ない状態になってしまったのだろう。
子供の教育より、生きることのほうが大切だからね。
それでも彼女の回りには、小さなトラブルが多々起きている。
人を見て学ぶをいかせられない人たちは、痛い目をみるしか分からないのかな。
で、私は可愛い彼女とお昼を食べていた。
話題は、今夜のことだ。
ワタミタ王妃を歓迎する晩餐会と舞踏会が今夜行われる。
そのため、授業も午後からは中止になった。
貴婦人は、仕度に時間がかかるからね。
「黒髪と黒い目なのですか?」
彼女が青い瞳を輝かせている。
「どうしたの?」
何故、そんなに嬉しそうなの?
「前世、黒髪で黒い瞳だったのです。」
ああ、懐かしいのか。
この国に黒髪、黒い瞳は、滅多にいないからね。
私は、今の青銀の髪も青い瞳も大好きだよ。
彼女の青銀の髪を手に取って遊ぶ。
彼女は、頬を朱色に染めながら、デザートを食べている。
大好きなプリンだからね、私の分もあげるから。
「次回、ゆっくり話せるようにお願いしてあるから。」
嬉しそうに頷く彼女に小さく笑ってしまう。
少しじゃなくて、けっこう嫉妬してるよ。
私の所に来る時も、それくらい嬉しそうにしてくれているのかな?
だからね。
手にしていた彼女の長い髪に口付ける。
首まて赤くなったね。
異世界の話が出来るのは嬉しいのかもしれないけど、私のことを忘れてはいけないよ。
「レオン様。」
恨めしそうに見てくるけど、私には煽っている様にしか見えないよ。
学園でそんな顔しないで。
我慢するのが辛いのだから。
「はい、シャル。口を開けて。」
名残惜しく髪から手を離して、プリンをすくったスプーンを彼女の口元に持っていく。
だから、そんな目をしてはいけないよ。
襲ってと誘われているようだよ。
「シャル。」
スプーンで可愛い唇をノックする。
小さく開いた口にスプーンをそっと差し込む。
照れながらも美味しそうに食べる彼女。
これで、最後の一口だよ。
ああ、唇の端についてしまったね。
彼女に顔を寄せ、唇の端についたプリンを舐めとり、そのまま唇を重ねる。
うん、キスには慣れてくれたかな?
抵抗は無くなったね。
顔を離し、彼女と視線が絡み合ったら、ボンと音がしそうな感じで彼女が真っ赤に染まった。
私は、可愛い彼女をそっと抱き締めた。
赤いのがおさまるまでここにいよう。
王族専用の部屋だからね、滅多に人は来ないから。
護衛と侍女は、いるけどね。
やっぱり睡眠学習というのは、有効なものだね。
彼女に起きている時に唇を重ねても、顔を赤くして固まっただけだった。
叩かれるかな?と覚悟していたのに。
けれど、彼女は覚えてないけど、初めて唇を重ねたのはもっと前だよ。
あの時も、真っ赤になって固まっていたね。
私は、よく覚えているよ。
その時、彼女が来ていたドレスの色も、髪を結んでいたレースのリボンの色も。
さあ、次の睡眠学習は何にしよう?
一緒に寝るを言い続けたら、泊まりに来てくれるのが少しでも早くなるかな?
私に触れられて赤くなるのは、可愛いらしいから慣れてほしくない。
難しい・・・。
寝ている彼女に睡眠学習として、何をしていたのかは秘密です。彼女は殿下の前で寝てはいけません、本当は。
『婚約者と学園(前)』の平民視点の短編『婚約者と平民の受難』を投稿済みです。




