婚約者と学園(前)
『婚約者と転生王妃』は、学園の前後編が終わってからになります。
今回は、説明が多い・・・。
他者視点の短編『婚約者と平民の受難』が投稿済みです
私の名前は、レオンクラウド。
この国の第一王子である。
夏の長い休みが終わり、学園が再開された。
学園とは、十三歳から十八歳まで五年間、通う学校のこと。
国民なら全員通うことができる訳ではなく、お金のある家の子供しか通うことができない。貴族でもお金がなければ通えない学校だ。
あと、士官学校と魔術学校もあるが、こちらは才能があれば平民も入ることが出来る。騎士や魔術師が才能のある子供を勧誘し連れてくることが多い。
通う期間は学園と同じ五年間だが、魔術学校のみ研究者として二年の延長が認められている。
士官学校は特に人気だ。騎士になれない平民でも上級兵になる道が開けるからだ。
私は事件の後処理もあり、数日遅れで学園に登校することになった。
私がいる教室は、休み時間だというのにシーンと静まりかえっている。
同じ部屋で学ぶ者たちは、怯えた表情で私を見ては慌てて視線を逸らすを繰り返している。
煩わしいコトで彼女の元へも行けず、私は不機嫌さを隠しもせずに席についていた。
そう、私は、とても不機嫌だった。
学園の最新の噂を知って。
私の元を訪ねる者たちによって。
私と私の可愛い婚約者が襲われた事件のことは、皆知っていた。
それに寄って、高位貴族が三家、降格したことも。
関係者に処罰が下され、処刑された者がいたことも。
そして、この事件のことで臆測や噂が飛び交い、彼女が悪く言われることも分かっていた。
だが、この噂は許せるものではなかった。
可愛い彼女が、元公爵令嬢に騎士の慰め者になる罰を強く私に望んだというものだ。
この噂のおかけで、ますます彼女は学園で孤立している。
優しい彼女は、全ての罪人の減罰を望んだというのに。
また、あの事件で一番傷ついているのは彼女だというのに。
彼女は、ほとんど交流はなかったとはいえ血縁者に襲われた。
その出来事は、どれだけ彼女を傷つけたかわからない。
私は、他人の心無い行為に憤りを感じていた。
確かに元公爵令嬢は、令息はもちろん令嬢たちにも人気があった。
その元公爵令嬢が、こんなことを起こしたなど、信じたくなかったのかもしれない。
だからか、元公爵令嬢が死んだ祖父と次兄に騙され、彼女に陥れられた悲劇の令嬢と祭り上げられつつある。
(何故、前公爵と次兄と彼女が組んでいたと考えられるのか? 突っ込みたいところは多々あるが。)
事実、実態を知ろうとせず、空想・妄想で偶像化しているだけだ。
だからといって、こんな噂をたてるのはお門違いすぎる。
きちんと調べられ、議会で承認されているのにこんな噂がたつなど。
議会に参加した生徒の親たちは、子供たちになんて説明したのか。
次の議会できっちり締め上げなければならない。
私としては、元公爵令嬢が修道院送りになったこと自体が罰が軽すぎて不服なのに。
彼女の触り心地の良い頬が赤くなっていたのは、元公爵令嬢に殴られたからであった。
それを知った時は、騎士の慰め者より処刑を望んだくらいだ。
それが、修道院送りなどで。
恩赦があれば模範生としてすぐにでも出てくるだろう。
外面だけは取り繕うのが上手いから。
私と同じだと思ったのは、誰かな?
「マリークライス様は、悪くない。悪いのは、イハヤタカ令嬢だ!」
ほぉー、私を怒らせたいのかな?
側にいた者たちが、呟いた男子生徒の口を思いっきり塞いでいる。
顔色がみるみるうちに青くなっているよ。
息が出来なくても仕方がないね。自業自得だ。
殺人にならないように手は回してあげるよ。
苛ついて、机を指で叩いてしまうよ。
そのリズムに合わせて、クラスメイトたちの肩が揺れる。
可哀想だけどね、我慢してもらうよ。
元公爵令嬢の刑を軽くしようと、朝から何人も私の元に来ている。
刑が重すぎる、おかしい、理不尽だ、騙された、陥れられた、その他色々。
そんな下らないことで、私は可愛い彼女の所に行けなかったのだ。
不機嫌になり、苛ついても仕方がないだろう?
誰か言いたいことあるのかい?
クラスメイトのほとんどが寒そうに腕を擦っている。
まだ夏の日差しで汗ばむような天気なのに不思議だね。
私は授業が終わると素早く教室を出た。
いい加減、あんな女のことはもう聞きたくない。
向かうは、彼女の所だ。
階段を降りていると、踊り場に青銀の髪を見つけた。
やっぱり彼女の髪も美しい。
待っているように声をかけようとした時、グラリと彼女の体が揺れ宙に浮く。
私は魔法を使い、階段を飛び降りた。
机を指で叩く。
トン、トン、トン、トトン
じゃあ、これは?
トン、トン、トン、トトントン、トン、トトン
これもついてくるか。
ト、トン、トトン、トン、トン、トトントン
あ、一人脱落した。
イライラ解消法
ただし、付き合っている人たちのイライラは、解消されません




