婚約者と公爵令嬢2
「そう、この屋敷から出てきたように見えたが?」
はっきり言っても表情を変えない。
まあ、私の王子の仮面と同じか。
フラッと元公爵令嬢の体が傾いた。
媚薬が効いてきたのだろう。それとも演技?
「殿下、どうかお嬢様を馬車に。」
すぐ側にいた侍女が、元公爵令嬢を支えていた。
「断る。馬車に運んだ途端、襲われても困る。側にいる従僕に運んでもらうといい。解毒剤を飲ませてあるのだろう?」
狭い馬車に運んだ途端、押さえ込まれて襲われたら斬り捨ててしまうよ。
「レ、レオンクラウド様、違います。」
潤んだ瞳、薄紅色に染まった頬、甘く掠れた声、人が見たら色っぽいのかもしれない。
そんな表情を私に見せて欲しい人は別にいるから。
「夕方、王宮に来い。」
あ!今からを考えたら優しい声になってしまった。
どんな表情になるか楽しみじゃないか。
元公爵令嬢の潤んだ瞳が輝いた。
私が落ちたとでも思ったか?
「騎士の館に今夜の衣装を準備しておく。彼らを十分に癒してやってくれ。」
元公爵令嬢は、潤んだ目で私を凝視していた。
お付きの者たちは、言った意味が分からないようだ。
「私に慰み者に、なれ、と?」
媚薬は、強い物では無かったようだ。
それは、そうか。
強いのを私に飲ませて、その気にさせなければならないのだから。
自分が媚薬に酔ってしまっては、それが出来ないからね。
「媚薬を使ってまで男が欲しいのだろう。それに、給与も支払われる。貴族で無くなるお前に仕事を与えただけだ。」
お付きの者たちの険悪な雰囲気が濃くなる。
彼らは、己の主に忠実なだけだ。
それが間違っていると分かっている者もいるだろうに。
「違います。わ、わたくしは、わたくしが、求めているのは・・・。」
そう言うだろうね。
「私の意志を無視して、お前の願いを叶えるのが当たり前だと?」
「レオンクラウド様は、あの子に騙されているのです。」
こう返してくるよね、その根拠は?
騙されていたとしてもこのやり方が正しいと?
「だから、私の意志は無視するというのか?薬で無理矢理抱きたくない女と繋がりを持たすのが正しい、と?」
はっきり言う。
お前など抱きたくもない、と。
「わ、わたくしが、わたくしは、レオンクラウド様、ただ一人をお慕いして・・・。」
真っ青になって震えているが、その目だけはまだ強い光を持っている。
諦めるつもりはないのかもしれない。
だが、私を慕うからと好き勝手していいわけではない。
「私の意志を蔑ろにし己の思いだけを押し付け、隣に立とうとする者を私が好きなる、愛せると思うのか?成功していたとしても、妃に、いや、側にさえ置かない。」
そう出来るだけの力を、私は身に付けた。
「自害は許さぬ。私のティアシャルドネと違い、騎士の館で何をすべきか理解できるだろう。夕方までに覚悟をしておけ。」
ここで何を行おうとしていたのか、分かっていたことを伝える。
何を血迷ったのかお付きの者が襲ってきたから、返り討ちにしたけどね。
服は汚したくないんだ、彼女を抱き上げなければならないから。
血の匂いも本当はさせたくないけと仕方がない。
「しばらくしたら兵が来るだろう。ここにいるのも良し、屋敷に戻って荷物を整理するのもよし、好きにするがよい。」
泣き崩れた元公爵令嬢を捨てて、私は屋敷の中に急いだ。
何故、会った回数が多いだけで筆頭婚約者候補になっているのか分からない。
優しい言葉も贈り物も礼儀の範囲でしか行っていない。
押し付けてくるから最小限の物を返していただけ。
勘違いしない物と注文をつけて人に任せていた。
そいつが買収され、高級品を贈っていたが。
分かった時点で迷惑だという花言葉を持つ花を返すようにした。
いつの間にか、花屋も買収されていたが。
そんなヤツ、好きになる要素がどこにある?
それに、私は可愛い彼女に出会ってしまった。
彼女と出会わなかったら、バランスを考え妃の一人にしたかもしれない。
名前だけの妃にね。
マリーちゃんは、ほとんどのことが思い通りに出来た令嬢です。
我が儘を我が儘だと分かっていません。




