婚約者と花守り3
『何気無いことで取り返しのつかないことになってしまう時もある』の″時″を″コト″に変えました。
タータラをタータラ殿に変えました。
「貴女が花守りですか?」
美女は、妖艶に笑う。
茶金の髪と瞳、少しつり上がった目は猫のようだ。
「その名で呼ばれるのは、百年ぶりだろうか?」
その答えに絶句してしまう。
百年ぶりだとすると、目の前の女性は何歳になるのだろう?
「色男は、女性の年齢を考えちゃあいけない。」
確かに女性の扱い方は難しい。何気無いことで取り返しのつかないことになってしまうコトもある。
特に年齢や容姿は要注意事項だ。
可愛い彼女には、ちょっと困らせたくて、少し拗ねさせたくて、意地悪をしてしまうことは多々あるけれど。それは、計算しているし、愛情表現だから大丈夫なはず。
「王宮にいらしていただけますか?」
こんな生臭い場所でゆっくり話せるわけもなく、移動を提案する。美女も私も血塗れの体をどうにかしなければならないし。
「眠れる姫にも会いたいし、お邪魔しようか。」
キャスターがズンズンズンとやってきて、美女の腕を引っ張っかた。
「婆様!こ・と・ば!!王太子殿下だよ!」
私はそんなこと気にしないのに。
本当に百年以上生きてみえるのなら大先輩だ。こちらのほうが気を使わなければならない。
「キャスターは、真面目だな。」
美女は、キャスターの頭をポンポンと叩くと荷物を取ってくると壊れた馬車に向かって行った。
「君の母上では?」
一応、確認する。納得は出来ているが、やはり若すぎる。
「いいえ、祖母です。」
小さくなってキャスターが答えてくれた。
キャスターの家系は、思った以上に複雑なようだ。
到着した応援に後を任せて、私たちは王宮に向かった。
朝が早かったためか、それとも合流して緊張が解けたのか、ユインスキー氏とエメリン嬢は寝てしまっていた。
「父が寝ているので大丈夫です。」
キャスターがホッと息を吐いていたが、王族の前で寝るなんてとぶつぶつ言っている。
確かに不敬罪ともとれるね。だが、そんなことはしないよ。
「だから、あの子と合う。危ないか危なくないか分かるから。」
美女がニヤリと笑った。
それにどう答えて良いのか。キャスターの母君は危険を呼び寄せる?危険に突っ込んでいく?人なのかな?
「王には、すぐに会えるのかい?」
「長くお待たせすることはないでしょう。」
知らせは送ってある。
身なりを整えたらすぐに謁見の間に通されるはずだ。
陛下も千年樹の蜜は早く処理されたいはず。
「聞きたいことがあると思うが、説明は一度で済ませたい。」
つまり何度も同じことを話したくない、もしくは話せないということか。
千年樹の花守り、何か制約があるのかもしれない。
「では、これだけはお教え願いますか?」
美女が形の良い眉を上げた。
「なんとお呼びしたらよろしいのでしょうか?」
花守り、祖母様、ユインスキー老夫人、色々呼べるが正体が分かるような呼び方をあまりしたくない。
美女で目立ってしまうから、結局同じかもしれないが。
「タータラ、と。花守りの弟子ということにしておこう。」
自分の外見がキャスターの祖母と受け入れられないことを分かっている。聡明な女性だ。
長く生きている分、彼女を早く助ける方法を知っていたらいいのだが。だが、多くは望まないでおこう。縋って彼女を救えなかったこともあったから。
「ところでキャスター、お前、どうしたんだ?」
美女、タータラ殿の問いに擬音をたっぷりつけてキャスターが首を動かす。
「調子が悪いのかい?さっきから、ギィーとかガッシャンとか聞こえそうな動きだよ。」
それは、私の隣に座っているから。
私が少しでも体を動かすとビクリと跳ねる。そこまで過剰反応される理由が分からないが、疲れるのはキャスターだからそっとしておこう。けして、面白いから放置というわけではないからね。対処のしようがないからだから。
「それはそうとエメリンは楽しい子だな。」
うん、この行動力には驚かされた。
さすがヒロインといっていいのかどうか。いくらヒロインが型破りといっても破りすぎだろう。
「行動力もあり、状況判断もしっかり出来る。さっきも魔道具を起動させて大人しく馬車の中にいた。」
だから、彼女への嫌がらせも最小ですんでいた。派手にみえて小さな嫌がらせをしてくれていたから。
「キャスター、ちゃんと捕まえておけ。逃がすと大きいぞ。」
確かに。攻略対象者たちは魅力的な者ばかりだ。
婚約者だと安心していると盗られるかもしれないよ。
タータラ殿の言葉に焦るキャスターを見ながら、眠る彼女に早く会いたいと思った。
女心は難しい。
何がきっかけで機嫌が急降下するかも分からないからだ。
「シャル?」
「どうせ子供っぽいです!」
どうやら彼女を拗ねさせたようだ。
「もう十六になっているのに・・・。」
うん、そうだね。
十六だともう立派な大人だね。
「大きな口を開けてプリンを食べているなんて。
」
いやいや可愛いよ。
ただ、プリンに夢中で私を見てくれないのは寂しいけれど。
「でも、吹き出されたではないですか!」
だってねぇ、いくらバケツプリンだからって、スプーンを使わずかぶりつくのは・・・。
「・・・。」
あまりにも可愛すぎたからだよ。
可愛い口の回りがプリンだらけだ。(舐めて)綺麗にしてあげるよ。
だから、こっちを向いて。




