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婚約者と花守り1

お月見は、百二話目でした。

芋団子と南瓜団子は、子供たちに食べられました。

団子は、蒸した芋と南瓜を砂糖を入れて潰し、耳たぶくらいの固さまで小麦粉を混ぜ、丸めてお湯で茹でたものです。

王宮を出るまでが一苦労だった。

キャスターを外に連れ出すことに何人もの者に難色をしめされた。

彼らの危惧は分かるが、私の近くにいない時にキャスターは襲われている。護衛騎士も信頼できる者が少なすぎるため、王宮に残していくには危険が大きすぎる。なら、目の届く場所にいたほうがこちらも対処がしやすい。

それに相手も動きやすくなるだろう。王宮内より外のほうが大勢の人を動かせる。

さて、何をしかけてくるのやら。

馬車に揺られ、まずは襲撃現場を見に行く。手掛かりが残っているかもしれないからだ。

青白い顔のキャスターが目の前に座っている。

私は、()()()()心配しているのか、推し量ることが出来なかった。

ビナダ川の畔に着いた。

護衛に装備させていた位置を確認できる魔道具は川の中を指している。

馬車を降り襲撃を受けたと思われる場所に行くと、争ったように()()()跡が生々しく残っていた。

馬車は、()()()()()()()と報告を受ける。

川の方に向かう車輪の跡がくっきりとあり、川の中に馬車らしき残骸が見えた。

あの状態だと生きている者はいないだろう。

「目撃は?」

「早朝でしたので・・・。」

分かりきった答えだ。この者はその答えしか持っていない。

「では、出発しよう。」

「で、でんか?」

指揮を取っていた騎士が慌てて声をかけてくる。

不手際かあったのかと不安になっているのか、それとも?

「馬車の引き上げに尽力しておりますので。」

今どんな状況なのか必死に説明してくる。

引き留めか?それとも職務に忠実だとアピールか?

「偽物には用がない。今も狙われている馬車を保護するほうが先決だ。」

「に、にせもの・・・。」

この驚きかただと何も知らされていない者だろう。

「ああ、偽物だ。あの馬車からは、私が探している魔道具の痕跡がない。」

あの馬車にエメリン嬢がのっていたなら、必ずあるはずだ。それが微かでも感じられない。

だが、花守りを乗せた馬車はこの道を通っている。その痕跡は残っている。

「襲撃者の手がかりを探してくれ。宜しく頼む。」

その騎士にこの場を任せて、私は馬車に乗った。

「橋を渡らず、真っ直ぐ行ってくれ。」

私は、馭者にそう指示を出した。

花守りを乗せた馬車は、襲撃現場近くの橋を渡り王都に向かうはずだった。だか、何だかの理由で橋を渡れず川沿いを走り去ったのだろう。

胸から取り出した石に宿る微かな光が少しずつ強くなっていた。

″守る会″に渡したブローチには、魔道具が仕込まれている。簡単な結界機能とある程度近付くと位置が分かる機能だ。

彼女を守ることによって、酷い嫌がらせや誘拐があった時に対処出来るようにと付けた機能。

アンタイルには″こんな小さな物に!″と散々文句を言われたが、付けておいて良かった。

位置が分かる魔道具は、異世界の位置情報からアンタイルが考え出した。この世界に人工衛星などないから、対になるものが引き合う力を利用してアンタイルが試行錯誤を繰り返し生み出したものだ。

あのブローチは、引き合う力のある石を幾つもに割って作ってある。親石と呼ばれる私が持つ石とブローチに嵌め込んだ子供石が引き合う力を利用している。

親石の反応がどんどん強くなってきている。

もう少ししたら、追い付けるだろう。

無事だといいのだが。

キャスターは、手を組んで何かに祈っている。

ブツブツ呟いている言葉を拾う限りは、物損を気にしているようだ。

花守りは大丈夫だろうが、父親のユインスキー氏と婚約者の生死は分からないのだよ。

いや、キャスターも私と同じなのだろう。大丈夫だと分かっていても彼女が心配だった私と。だから、最悪を考えないように現実に起こり得ることを必死に思い描いている。

「キャスター、準備しろ。」

キャスターがイソイソと動き出す。彼の役目は、人質にならないことだ。護身術は使えるから、無茶をしなければ大丈夫だと思う。

微かに金属音が聞こえている。

外でフェルプスたちが戦闘準備に入ったことを感じる。

彼らにはもう状況が見えているのかもしれない。

「キャスター。」

剣を持ったキャスターがガクンと頷いた。

私はほとんど止まりかけた馬車から飛び降り、視界に入った神官兵たちに風を放ち道を開けさせる。

見えたのは、妖艶な美女と打ち合うフードを被った男の姿だった。

うん?

彼女を守る魔道具の中にキャスターも一緒にいたら良かったのではないか?

何故、彼女を私以外の男と二人っきりにしなくてはいけない?

男の護衛を付けること自体、しぶしぶなのに。

キャスターが彼女に気がないのは分かっているよ!

だからといって、彼女と狭い部屋に二人っきりは許せるわけがないたろう。



殿下、狭量すぎます。

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