スタディサポート
スタディサポート。
スタサポと略されるベネッセが行なっている模試なのか何なのかはっきりしない学力テスト。
これが行われるのは自称進学校レベルマックス。むらいでもコンボを起こせないほどその高校は自称進学校だ。
昨日のクラス分けを経て、今日はそのスタディサポートの当日だ。はあ、今日土曜日だよ?休日出勤してまでやることじゃねえよな。
試験開始20分前に学校に着いて席に座る。
D組の生徒はまだ揃っておらず、また、誰一人勉強などしていない。
ある者は談笑し、ある者は眠っている。
そして俺は…
「だから!スタサポなんて意味ねえんだよ」
俺にそう言うのは神林莞爾。理系で志望校はまだ知らない。
「確かに明確な偏差値や判定は出ないしな。問題もそこまで難しくない」
問題は問題がそこまで難しくないということだ。
しかしここで重要なのが難しくないから解けるという意味ではない。
難しくなくても我々自称進学校の生徒は解けないことだってある。それだから余計にこのスタサポは厄介だ。
「だいたいなんだよスタサポって。全然俺らのサポートになってねえよ」
「supportというよりpreventだな」
fromを付けたくなるほどスタサポは俺たちにとって邪魔な存在だ。
神林と呑気な愚痴をこぼしている間に生徒も揃い始めた。
いよいよスタサポの試験が始まる。
始めの科目は英語。
俺の出来としては何とも言えない感じだ。
語法の問題で一つわからないのがあったし、長文も少しあやふやだった。
「あんな語法知ってるの甲斐高で俺だけだよ、きっと」
宮城野が試験の休み時間にわざと他のクラスに聞こえるように言っている。
「ま、まあ他のクラスに知ってるやつはいないだろうな…はぁ」
神林。わかるぜその気持ち。俺も神林も知らなかったもん、あのtakeの語法。
「三原はわかったよな?あの語法」
宮城野が尋ねたのは甲斐高校で1番の天才三原栄治だ。東大の理科二類を志望している。
こないだ書いた目標の紙にも『東大合格』としっかり書いていた。
「あー、ネクステには載ってないけどスタサプで見たからなあ」
ネクステとはネクステージという英文法の参考書で、スタサプとかスタディサプリという映像授業のサイトのことだ。
「げっ、俺だけじゃなかったのかよ。知ってたの」
宮城野の最初にした発言は語法だけに誤報だったようだ。ゴホッ。
次の科目は国語だ。
文系として国語で朝は引っ張ることができない。
と言ってもまだ古文単語はそこまで覚えてないし、現代文だと小説は苦手だ。
というわけで国語の後のブレイクタイムの会話は省略させていただく。
に、逃げているわけじゃないからな!ただ慣用句の意味知らなかっただけだから!
最後の科目は数学。
理系も文系も同じ問題を解く。
範囲は満遍なく出題され、俺の苦手な確率と数列も出た。あと整数。あいつはダメだ。手に負えない。
「きた?満点」
宮城野が目をキラキラさせながら三原に尋ねる。
「多分数学は満点。あれは簡単だよ」
さすが三原だ。だてに山梨県で1位を取ったことのある人間だけはある。すごい。
「そういう宮城野はどうなんだよ」
宮城野だって学年2位の秀才だ。天才タイプではないけど努力の天才だし、聞いてみる価値はあると思い尋ねてみた。
「俺は内分と外分を読み間違えたわ」
なんだそれ。
「あ!あ!俺も俺も!そうなんだよなぁ。普通内分だよなぁ!外分とか外道だぜ外道」
飛びつくように言ってきたのは梅原航平。理系で数学と物理は超出来る。だけど授業中に寝たり、課題を提出しなかったりと先生からの評判は悪い。
それでいて模試では学年4位の成績をとるから凄い。
俺より1つ上の順位を常に取り続けるのが腹に立つ。
「梅原も宮城野もそれなりにできたんだろうけど、俺は数学使うのにあんまりだったよ」
そう俺は国立文系志望だからセンターはおろか二次試験でも数学を使う。まったく私立文系が羨ましい。
「大丈夫だよ樽崎なら。青チャやってんだろ?」
宮城野や三原は高2から青チャートをやっているのに俺は最近青チャをやり始めた。
黄チャにしようか悩んだけど、青チャにした。
数学に関してはこいつらが理系ってのもあるけど、かなり遅れている。
とりあえず帰ったら例題を解こう。
こうして土曜日に行われたスタディサポートは幕を閉じた。