あの世界のはなし
しかし、昨日のこの子は楽し可愛いかったなぁ。
ビール一杯かからずにあんなに甘えてきて。
いやー、これだから、初めての食事でビール飲ませるのがやめられないんだけどねー。
とりあえず次は炭酸の入ってないのを飲ませてあげよう。
むせちゃったのだけは可哀そうだったしね、うん。私ってやさしー(笑
「先輩、ちょっといいですか?」
おっとっと、お仕事お仕事。
「ん、なにー?」
「今日の三件なんですが、三件ともあの世界のなんですね」
「あー、うん、そうだねー。っていうか、あの世界のことってどこまで知ってるっけ?」
「え、えーっと。人間種が他の世界より多くて、たくさんの食べ物の種類があって、科学の要素が大きくて、管理者がすごく多いってことくらいです」
「まぁ、そんな感じだねー。。。んー注文書は来てないし、時間もあるから、くわしく教えてあげよう、こっちへきたまへ」
「あ、はい…」
「あの世界の始まりからになるんだけど、あの世界には元々人間種はいない、管理者もいない、いわゆる放置された世界でした」
「はい」
「で、いつの頃からか管理者の間で人間種つかえば効率がいいって噂が広がって、ブームになってた」
「はい」
「まぁ誰が言い始めたんだか知らないし、よくあんな消費しか能がなくて繁殖まで時間がかかる種族をつかってみようと思ったのかは理解できないけど、効率だけはいい生き物だったらしい」
「あ、はい」
「まー、効率だけはいいって事だけが噂になってたことが問題で。。。ブームに乗っかって人間種をつかおうとする世界が増えたんだけど、害虫駆除がうまくいかなかったりで管理がうまくできなくなるのも増えてねぇ。。。」
「はい」
「たて直そうとした管理者はいるんだけど、まぁ少なくない数の管理者が管理しなくなって放置。そんな放置世界がかなり増えた」
「で、どうしたんです?」
「まぁ、状態がひどければ執行部が初期化するだけなんだけど、そこまでひどくない時はそうもいかなくてね、、、管理部でみておかないといけない。で、管理部の業務はまわらなくなってきちゃって、どうしようかって事になった」
「はい」
「これ以上放置される世界が増えるのは困るってことで人間種に固執しないように言っても、効率のいい管理がしてみたいってのが多くてね。で、いろいろあって、人間種の育成がうまくできてる管理者にアドバイザーになってもらおうって意見が出た」
「それから?」
「アドバイザーになってもらえませんか?って要請はしてみたけど、試算してみるととてもとても自分の世界管理ができなくなるので無理っ!って最終的には誰も請けてくれなかった」
「…」
「で、管理部にアドバイザー部門を作ろうって事になって、成功してる管理者から意見を聞きつつ、あの世界で人間種を育成してみようってことになった」
「ここで、あの世界につながるんですね」
「うん。でいろいろ大変だったけど人間種の育成には成功、たしかに効率がいいのも分かった。これでノウハウも分かった、で、後はアドバイザー部門を稼働させるだけなんだけど、あの世界の管理も続けてってのは実際むずかしいから管理者を募ったのね」
「はい」
「まぁ、もうできあがってる世界、しかも噂の人間種の育成ができてる世界だ。応募者殺到、ドタバタしてやっと管理者が決定して、アドバイザー部門の稼働開始。管理部あずかりの放置世界も公募かけて管理部の業務健全化を進めていこうって時にね。。。あの世界の管理者が人間種が多すぎる、助けて、って泣きついてきた」
「え?」
「なんのことか分からなかったね。上手く育成できないって時のノウハウは把握してたけど、多すぎるから助けてってのは意味が分からなくて。とりあえず管理者ふやしてみたらどうだろうかってことになった」
「はぁ…」
「あの世界の管理者をしたいってのは多かったから、ふやすのは楽だった。でやってみたら分散管理することで問題なくなるってことも分かった」
「よかったですね」
「まぁ、そこからびっくりなのが人間種。増えて増えて大増殖、管理ができないってことで管理者も増える増える。で、結果的に、だれがどこを管理してるのかよく分からない、人間種がたくさんいるってことだけはみんな知ってる、そんな世界になった」
「は、はぁ。。。」
「まぁ、それであの世界については一区切りってなったんだけど、一区切りできてなかったのがアドバイザー部門。いくつかの世界は成功したんだけど、放置が長すぎた世界だとどうもうまくいかなくて、結局管理部の業務は健全化せず。もうほんとどうしよーって中で、ふと誰かが言ったわけだ」
人間種に放り投げてみようって。