悪魔と独りの少女
久しぶりに短編を書きました。
・・・恒例の思い付きです。
古めかしい分厚い本から
黒い煙が出てきて、こう言った。
「・・・我を呼んだのは汝か?」
この煙は悪魔である。
長い間先程までの本に封印されていたが
今回、本の封印がたまたま破られたため
煙の姿ではあるものも出てきた。
「あなた、だあれ?」
と悪魔の目の前にはいる少女は聞いてきた。
年はまだ5歳にもなってないだろう。
「我か・・・?我は・・・」
悪魔はやや困惑した。
理由は簡単、悪魔には名前がないからだ。
悪魔達はその時々で違う名前を
名乗っているからだ。
「我の名前はいい、汝の願いを
言うがいい。汝の命と引き換えに
叶えてやろう。」
と悪魔は無理矢理話を変えた。
「なんじ?いまはおひるだよ?」
どうやら目の前の少女は”汝”という単語を
時間と勘違いしているようだ。
「時間は聞いていない・・・
汝の願いはなんだ?」
「ことばわからない・・・
むずかしいよ・・・」
と少女はべそをかき始めた。
「む、むぅ・・・」
悪魔は更に困惑した。
なんでこんな小さい少女が封印を解いたのかも
困惑の理由だが、現在は泣かれているからだ。
女性に泣かれるのは今まで何度も
見てきたが、子供が泣くのは
慣れていない。
・・・というか悪魔にとって子供は苦手であった。
ここで悪魔は一計を投じた。
「よし‼︎君のお願いはなんだい?」
と言っても口調を変えただけだが。
「わたしのおねがい?」
「そうさ‼︎君のお願いを俺が叶えて
あげるよ‼︎」
「う~んと・・・
あっわかった!」
「なんだい、言ってごらん」
と悪魔が優しく促すと
「わたしはかぞくがほしい!」
と笑顔で言ってきた。
「・・・家族?」
「うん、かぞく!」
「家族って、あれかな
あの、人間が沢山集まって一緒に生活する
グループかな?」
「うん、たぶんそんなかんじ!」
「ほ、本当にそれでいいのかい・・・?」
若干悪魔の側が混乱してきた。
今まで金、地位、名誉などを欲しがる人間は
山ほど見てきたが家族と言われたのは
初めてであった。
・・・まぁ小さい子供が相手だからということも
あるだろうが。
「うん!
・・・もしかしてかなえてくれないの?」
とまた泣きそうになったので
「いやいや!叶えますとも!
とりあえず俺が君の家族になるから!」
「えっほんとうに!?」
「・・・あっ、しまった」
悪魔は後悔した。
何故変なことをいってしまったのだろうかと。
「ちがうの・・・?」
「いやいや間違ってませんとも!」
・・・これ以上泣かれるのは困る。
とりあえず同意しておこう。
「やった~!」
「じゃあ君の名前教えてもらえる?」
「わたし?わたしは、はるか!」
「はるかちゃんね、分かりました・・・」
悪魔は思った。
人間なんてたかが100年も生きれない。
100年ぐらいなら待って、それから
目の前の少女の魂をいただこう。
「ねぇ、あなたのなまえは?」
「俺かい?」
「うん、なまえ!おしえて!」
悪魔はやや困った。
先ほども述べたが決まった名前は無い。
いつもは適当に名乗るからである。
と悪魔の頭にふととある名前が思いついた。
・・・今回はこの名前でいこう。
なんかこの名前とは長い付き合いになりそうだ。
たまにはこのような気まぐれもいいだろう。
「俺の名前はーーー」
13年後
「ほら遥、起きて朝ごはんできているよ」
「あと、5分・・・」
と目の前の少女はとても眠そうにしていた。
そしてその少女を見上げている男性は
15年前に遥と契約した悪魔である。
「起きないと遅刻するよ」
「う~~~ん・・・起きる」
ともそもそと遥が起きだしたのを
確認して、悪魔は下に降りて
朝食の準備をしていた。
悪魔自身は食事をする必要がないのだが
遥は人間であるため、毎回ご飯を作っている。
「あはよう!お兄さん!」
と制服に着替え終えた遥が下に降りてきた。
悪魔は何故か遥からは”お兄さん”と呼ばれている。
一応見た目が人間でいうと20前後の姿をしているのと
気が付いたら遥にそのように呼ばれていた。
一応、戸籍は遥の従弟という形を取っている。
・・・無論、悪魔の能力で書き換えたのだが。
「遥、もう少し行儀良く食べたら・・・?」
「いいもん!私にはお兄さんという貰い手がいるから!」
と自信満々にいう遥。
「勘弁してくれ・・・」
「ほらほらJKの従妹がいるんだよ?
羨ましくないの?」
と悪魔を煽ってくるのだが・・・
「いや、全然」
悪魔はそういうことに興味はない。
なぜなら悪魔なので、人間の容姿に興味は無いからだ。
「酷い・・・」
「はい、そんなこと言ってないで
学校に行きなさい、遅刻するよ」
「そうだった!じゃあ行ってくるね!」
と慌ただしく登校していった遥。
「さて、これから家の掃除をするか」
と悪魔は掃除機を片手にそう呟いた。
さて”家族が欲しい”と言った少女と
その願いを叶えている最中の悪魔。
この二人の物語はまだ終わらない。
なぜなら契約は少女が死ぬまで
続くからだ。
これからの2人の物語はどのように
なっていったのかは、また機会があった時に・・・