表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時紡ぎと呪われた×××  作者: ながる
蛇足

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/61

キスの日SS

キスの日SS:時紡ぎIF


「誰か試してみる猛者はいないか」


 その場にいたのは竜と猫と人。

 一頭と一匹と一人は頭を突き合わせて唸っている。


「人じゃなきゃ、大丈夫なんじゃねーの?」

「じゃあ、君が試す?」


 目の前にはリンゴを齧って倒れたシェスティン。


「そもそもそのリンゴはどこから……」

「妖精が差し入れだと……」

「なに疑いもせずにもらってんだよ!」

「だいたい、シェスは死なないはずじゃないの?」

「そうだ。だから、自分が確かめるからと言って……」


 竜はシェスティンの様子を確認する。


「こうして眠ってる」

「え。眠ってるだけ?」

「かれこれ1週間だけどな」


 猫の呆れた声に人はその目を見開いた。


「だから、一応あんたも呼んだんだろ。気付け薬とか効くかと思って」

「効かなかったけど……」


 ちなみに、リンゴが喉に詰まってた時のことも考えて抱き起こしたり、背中を叩いたり、一通りのことは試し済みだった。

 残った最終手段。「王子様のキス」。

 これが、こと彼女に関しては最大の難関だ。

 キスした相手は漏れなく死んでいる。

 竜と猫と人はもう一唸りした。


「消去法に、する?」


 人はおずおずと提案した。


「残りの寿命を『持ってかれる』ことを考えると、竜はNG」


 少々残念そうに竜はうなだれた。


「少しでも生き残る確率を上げたいのなら、人の俺もNG」


 人は肩を竦めた。


「残った猫君、覚悟は?」


 猫はシェスティンを見てから一度体を震わせた。

 もしかしたらシェスは眠ったままの方が幸せなのかもしれない。そんな思いもよぎる。


「……やる」


 ひらりと彼女の上に飛び乗って、その頬を舐めてみる。

 もう何度も試してちっとも起きやしなかった。

 ごくりと喉を鳴らして、その赤い唇に自分の口を寄せる。


「あ」


 猫は竜と人の重なった声に驚いて閉じていた目を開けた。

 目の前には黄色。


「え?」


 きらきらした何かが猫の鼻をくすぐった。


「ぶ、えっくしょんっ!」

「……くしゅんっ」


 重なったくしゃみは、誰の――


「眠りの国に行けるリンゴはどうだったー? いっぱい遊んだ?」


 陽気な声がのんきに語りかける。

 ひらひら黄色い蝶の羽をもつ妖精は、まったく悪びれた様子がない。

 猫はパンチを食らわせてやろうと腕を振るが、ちょうど届かないあたりをひらひらされてイライラする。


「邪魔すんな! キスし損ねただろ!」

「えー? キス、したいの?」


 黄色い羽の妖精は、ひらひらと猫の正面に下りてきて、ちゅ、と彼にキスをした。

 一瞬呆気にとられて猫の動きが止まる。


「えへへ。ごちそうさまー!」


 そのまま妖精はひらひらと窓から出て行った。


「まったく――相変わらず妖精は碌でもないな。スヴァット、無事か?」


 起き上がって手を伸ばす彼女に気付いて、猫は突進する。

 竜と人も顔を見合わせて顔を綻ばせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ