「良き人生を」
「死ぬ...ね。随分と簡単に言ってくれるじゃないか、けふっ」
「もう貴方はこの世界では助からない。心臓病はもうすぐ最終ステージに行く」
「もうすぐってどれくらいなんだ?」
「...多く見積もって後一日。それを越したら貴方はもう自分の力では殆ど動けなくなり、苦しくなり、三日後辺りに死ぬ」
そこまで聞いてまた小さくふぅ、と息を吹く。もう溜め息にも近い。
「明日まで待てるけど、どうする?」
「...」
「どうする?」
「行くよ。行く。死ぬくらいならば――って言うことだ。ところでこっちの世界での俺の存在はどうなるんだ?」
「行方不明という設定になる。こっちの世界は鎖が強すぎてそこまで干渉ができない。創った人お上手」
「行方不明ね...元々居なかった設定とかは無理なのか?」
「できない」
行方不明が限界か...母さん父さん、西条達は心配するだろうな。
置き手紙くらい置いて―――
「もう終わりですか?じゃあ転移します」
「え、ちょっと待っ―――」
視界が揺れる段々とまぶたが重くなってくる...これが転移?
後、置き手紙くらい置かせてくれよ、
「ようこそ。ここはステータス申請の場です」
頭に声が響く。目を開けると回りはピンク色の空間に切り替わっていた。
「ここが転移先...ていうか何でピンクなんだ?」
「それは私の趣味です...って貴方は!」
目の前にいた頭に輪を付けている人が俺の顔を見て驚きを表した。
「あ、...貴方名前は?」
「白瀬だけど、え、急に何ですか?」
名前をいうと今度はガッカリしたような顔になった。
「酷くない!?」
「あ、いえすいません。ではステータス決めましょうか」
強引に話を進められパソコンを渡される。
「ではパソコンを開いてください、まず右上にある数字は貴方の所持しているポイントです。ポイントは自身のステータスを変更するときに増減し、HP等は右の+-のボタンから、スキルはスキル一覧表と書かれているページに変えると色々と入手することができます」
「ようはTRPGのステータスを決めるのと一緒なんだね」
「あ、そんな感じです」
ふむ...ポイントは1000...これって多いのか少ないのかよく分からないな。
「僕のポイントってこれ多い方なの?」
「ええ、かなり多い方ですね。平均的に30~50の方が多いですからね。時には最初から-に振りきっていてステータスを弱くしてスタートしなければいけないなんて事もありますし」
え、じゃあポイント数やばくね!?いや嬉しいけど...どうしてだろうか。
「ポイント数は善行をすれば増え、逆に悪行をしたら減ります」
なるほどね。まあ自分のステータス設定していきましょうか!
できた!
―――――ステータス―――――
名 白瀬颯真
lv 1
HP 2000/2000 (200)
MP 1000/1000 (100)
筋力 1000 (100)
知力 1000 (100)
敏捷 2000 (200)
【スキル】
無限収納 (20)
隠蔽&鑑定 (5)
製作神 (110)
賢者の魔法 (50)
等価交換 (100)
+薬の知識 (10)
+薬製作に必要な道具 (5)
―――――――――――――――
これで良いだろ。西条から借された中で一番好きだった薬で無双する話。それをやってみたくなったんだ。
「こ、これはまた変な構成ですね...ほんとうにこれでいいんですか?」
「いいよ」
諦めたように「はぁ」と溜め息をつかれた。
「ではこのステータスで申請しておきます。良き人生を」
視界が暗くシャットアウトする。また転移かと思いながら僕は意識をあずけた。
ステータス申請の場に残された彼女は何かを小さく呟いた後、笑みを浮かべながら涙で頬を濡らしていた。