「貴方は不治の心臓病で死ぬから」
肌寒い冬の日。僕の体に異変が起きた。
「けふっけふっ」
「風邪でもひいたのか?」
「そうみたいです...何か急に、けふっでも頭も結構痛くて、」
最近体が怠い。動くのもキツイ状態だ。高1の時にもこんな状態があった。
「そうか、保健室にでも行ってなさい」
「分かりました、けふっ」
教師に言われた通り保健室へと向かう。その途中友達の西条 悠にばったりと出会った。
「ああ、悠じゃないか、けふっ」
「白瀬って風邪か?」
「風邪っぽいけふっ、今から保健室だよ」
「お!保健室か。ならこの本を持っていけ!」
西条から一つの本を渡される。その本の内容は見なくても大体理解できる...何故なら―――
「今回のその異世界転生の話もめちゃくちゃ面白いぞ!是非読んでくれ!」
西条から渡される本はいつも異世界系の本だからだ。正直よく飽きないなと感心してしまうくらいだ。
「まあ、気が向いたら読んどくよ、けふっ」
「面白いからな!読んで損はしないぞ!」
西条と別れ保健室へ向かう。足がちょっと重い気もする。
「失礼します」
保健室のドアを飽け、中に入っていく。
「ちょっとベッド借りますねー」
「はーいどうぞー」
保健室の人にも許可を取ったのでベッドに潜り込む。
布団から顔を出すと横のベッドにも人がいた。どうやら先客のようだ。
「君も風邪?」
普段はあまり自分から知らない誰かに話しかけることはしないのだが、今日は何故か自分から話しかけてしまった。
と言うよりも、話しかけるように誰かに指図されたような気もする。まあそれは気のせいだろうが。
「私は風邪じゃない」
「じゃあサボり?けふっ」
「違う。私はここの生徒じゃない」
「まじか。 どうしてここに居るの?」
気になってしまった。どうして彼女がここにいるのか。
「貴方を待っていたから。だから私はここにいる」
「...へ?」
「貴方を待っていたから」
「いや、二度も言わなくても分かるから、けふっ」
「そう」
彼女が分からない。でも何故か、こんな風に話すのがどこか懐かしく感じられた。
「私はブリージア王国の第三王女。ブリージア・クロン・インフィニティ」
「僕は白瀬 颯真。でさ、」
「ん?」
「ブリージア王国ってどこだよ!?」
「この世界じゃない、ドールと言う星にある国の名前」
駄目だ。分からない。
「確かに貴方達には言葉だけで信じてと言う方が無理なのかもしれない。だから、証明する」
クロンは右手の人差し指を前に出して小さく「ウォーター」と唱えた。すると人差し指の前を浮くようにして水の球体が現れた。その大きさは直径3cmほどで、目で確かに現実と見てとれるものだった。
「これは魔法と言って、私たちの世界ではこれが普及している。これが貴方達とは違う世界から来ていると言う証明」
「魔法...」
僕もまた小さく呟く。魔法と言えば西条が頻りに貸してくる本にも出てくるものだ。魔法、又の名を超自然現象だっけか。
それをまさか目の前で見せられる何てな...トリックではないだろう。
何故なら指の先を中心として回りから集められるようにして水球は出来ていたんだ。そんなトリック聞いたこともない。
「どう?私の世界へ行きたくなった?」
「どうって言われても...そっちの世界も楽しそうだけど、こっちの世界も楽しいからなあ、けふっ」
僕があっけからんとしてそんな事をいうとクロンは驚いたような表情をした。
「そんな事...こっちの世界も楽しいなんていう人初めて見た。皆魔法を見ると大抵二つ返事で楽しそうに行くって言っていたのに」
「それはそいつらが特殊なんだろう、て 皆ってことは他の人もいるのか」
「貴方以外もいる。けれど貴方は、この誘いを断れない」
「...何で?」
聞かなければよかったと思った。クロンが本当の事を言っているのか嘘の事を言っているのか分からないが、クロンの目は本気だった。
「貴方は不治の心臓病で死ぬから」