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この異世界はラノベよりも奇なり  作者: 折笠かおる
―――第33章―――
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第191話 北の跳ね橋

 双剣から噴射される風に乗り、なだらかな坂を一気に駆け下りる修馬。その後、針葉樹の森をノンストップで突っ切ると、やがて帝都中心部の町並みが見えてきた。だが、先行していった仲間たちの姿は、未だ確認することが出来ない。


「うわー、負けたぁ。シューマは足が速いねぇ。疲れてたんじゃないの?」


 市街地を前に立ち止まった修馬の後から、飛行してきたココが悔しそうにそう言い地面に下りる。


「疲れてる? 俺が?」

「うん。疲れてたからあそこで寝てたんでしょ」

「ああ……」


 確かにハインとの戦いでかなりの体力を消耗していたが、ひと眠りしたせいか今は元気を取り戻している。打ち付けた足の痛みさえも、どういうわけか感じられない。


「これは俗に言う、火事場のクソ力ってやつかな。まあそんなことより、アーシャたちを捜さなきゃいけないね。どこに居るんだろ?」


「えー、違うよシューマ。二手に分かれて攻めるって、話し合ったじゃないか。アーシャたち虹の反乱軍は南に回り込んで『凱旋橋がいせんばし』から、で僕たちは堀を飛び越えて、北側から侵入するんだ。シューマもその双剣があれば、堀くらいは跳び越えられるでしょ」


 先程の作戦を説明してくれるココ。その辺りの話をしている時は意識が無かったので、ほぼ記憶がない。


「大きな堀じゃなければ、いける……かな?」


 涼風の双剣は上から下へと滑空程度なら難なく出来るが、飛び上がるとなると何処に行くかわからないところがある。ユーカは同様の能力である黒鳥の鉤爪を使って器用に飛んでいるが、あんな風に上手くは出来ない。


「あんまり広い堀だったら、僕がお城まで運んであげるよ。イジュもマリアンナを連れていくって張り切ってたしね」


 そう言って再び飛翔し、城の方角を目指すココ。修馬も軽く駆け出し、その後を追った。

 そこからは町中ということもあり、あまり目立たぬよう速度を抑えて移動した。静けさを守る帝都の町並み。市街地ということもあり、沢山の民家や商店があったが、全て扉が閉ざされており、出歩いている人もまるでいなかった。


「人が居ないな。軍人以外は、避難しているのかな?」

「そうだねぇ。もしかすると、リクドーって人が言ってた話は本当なのかもしれないよ」


 リクドーと呼ばれていた白い軍服の大男は、アルフォンテ王国軍だけでなく、共和国騎兵旅団も攻めてきていると言っていた。帝国の戦力が分散されるのはありがたいが、市街地での戦火は極力小さなものにしたいものだ。


「騎兵旅団に先を越されると厄介だ。俺たちも急ごう」


 気持ち速度を速め、市中を駆けていく。

 そうして進んでいくと、通りの先に大きな城が見えてきた。壁の色は少しくすんでいるが、荘厳な雰囲気の美しい城だ。だがその近くまで接近していくと、ココが「あれ?」と不思議そうに首を捻った。


「どうかしたの?」

「見て。例の跳ね橋が下りてるんだ」


 そう言われ目を向けると、確かに橋が架かっており城内に入れるようになっていた。伊集院は確か、跳ね橋は通常閉まっていると言っていたはずだ。


「まさか、帝国側の罠?」

 橋の欄干に触れ、恐る恐る城の扉を覗き込む修馬。しかしそこからは真っ暗で中の様子は伺えなかった。


「んー? けど先に行ったイジュたちが下してくれたのかもしれないよ」

「……確かに」


 実際に伊集院たちが城の北側にいないということは、すでに内部に侵入しているということだ。ココの言うことは一理ある。


 慎重に橋を渡ろうとする修馬。宙を飛んできたココが修馬の目の前に着地すると、彼は身動きも取らずに、城の扉の奥を数秒間凝視した。


「……あれ?」

「どうかしたの?」

 不穏な空気を察知し、一歩後ずさる修馬。


「あいつだ」

 ココはそう言うと、急に跳ね橋の上を真っすぐに駆けだした。


「あいつ!? 待って、誰がいたの!?」

 後ろから呼びかけるが、ココは振り返りもせず跳び上がり、そのまま城の扉に奥に突っ切って行く。


「ヴィンフリートッ!! 絶対に逃がさない!!」


「ヴィンフリート……?」

 それは天魔族、四枷よつかせの一角で、かつては伊集院の師匠でもあった人物。以前修馬も戦ったことがあるが、強力な火術を使う奴だ。そいつが居たというのか?


 橋げたを蹴った修馬は、わけもわからぬままココの後を追い、真っ暗な扉の奥へと進入していった。

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