プロローグ
ここは太陽の光を完全に遮断された地下世界
空を見上げても代り映えしない景色がそこに広がっていた
街の景観や、作りは地上のころのそれとほとんど変わらない
朝や昼といった区別がつかないため、そこに住む人々は機械的に動く時計の針だけを頼りに、時間というものを感じていた
そして、忘れてしまっていた
春、秋、夏、冬といった季節の変化を
2028年、4月
新宿で巨大な地盤沈下が起きた
新宿の地下には巨大な空間があると専門家からは言われていた
専門家たちは、地盤がいつまでもつか分からない、と危惧していた
しかし、国は何の対処もすることなく、予算を使いたくないがために、「そんな空間があるという証拠はない」と一転張りだったのである
そしてとうとう地上の重みに耐えられなくなり、新宿は巨大な地下空間に飲み込まれた
地上は砂と瓦礫に飲まれた
それからすぐに、全世界を巻き込んだ最大級の救助活動が行われた
しかし、街そのものはどうすることもできなかった
それからさらに月日がたち、2060年ごろには、そのくぼみに雨によって水がたまり、新宿のあった一帯は完全に湖と化した
これが「新宿湖」である
新宿湖の底には、かつて世界一高いと言われた、電波塔とホテル、住居、オフィス、商業施設を兼ね、更に地下では駅と直結した「新宿ヒルズタワー」の頭が少しだけ見えている
この物語は、のちに「大冒険家」と呼ばれることになる男の話である
リアル路線で