第九話『本気』
交わる炎と風が爆風となり辺りに届き。交わる殺気が、二人の殺し合いを見ている飛鳥に届く。
「流も本気で殺す気だな・・・」
久しぶりに本気の殺気を出している流を見て、飛鳥が予想していた以上に焔の戦闘力が高いことを感じる。
「俺も戦ってみたいな」
強者と戦いたい気持ちは、飛鳥も理解できた。だからこそ、一対一を認めて今は傍観者でいる。
「流に修復を頼めば良かった」
そんな事を呟いている飛鳥をよそに、いまだに殺し合いは続いていた。
「強力な炎だな!」
「貴方も良い風です」
風を纏い、片手に風を溜めている流と両手に炎の纏って構えている焔がお互いに、世辞ではなく本心で誉める。
「・・・一つ聞きたいんだが」
「何ですか?」
「何で、魔に墜ちた?お前は魔に墜ちなくてもかなりの力の持ち主だと思うけど」
流の疑問、人として強さより魔として強さを求めた焔。例え、魔人となっても人の時が弱ければ大した強さにはならない、その事から人の時からかなりの実力があったと思われる。
「・・・・人は愚か存在だ、と悟ったのです。そんな存在でいる自分に嫌気がさしたんですよ」
焔の目に絶望が映る、その闇は深く何を考えているか解らない。
「愚か、か・・・否定はしない」
「おや?意外ですね。てっきり、否定するかと思いました」
「俺達みたいに闇の世界に居れば、人間の汚いところは嫌でも目に入るからな」
「でも、貴方は魔闘士をしているのでしょう?人を守る為に」
「俺は全ての人間を守りたい訳でもないんだぜ?守りたい者だけを守ることが出来れば良いからな」
流は、自分にとって大切な者を守るために戦っている。全ての人間を守りたいなどと考えたこともない。
「・・・守りたい者?」
「友人、両親、可愛い女の子とかね」
「理解できません。人は裏切り、妬み、憎しみ合う・・・そんな存在を守りたいなんて理解できない」
焔の顔には笑みがなく本当に理解できない、とばかりに悩みの表情が現れる。
「・・・そろそろ、再開してもよろしいですか?」
悩みを打ち消すかの様に流に問い掛ける。
「ああ」
流の返事を聞くと、一瞬で間合いを詰めて炎を纏った拳を顔面に叩き込もうとする焔だが、咄嗟に後方に跳んだ流には当たらない。
後方に跳んだ流は片手に溜めていた風を風刃にして飛ばす、焔は焔を纏った片手で弾き飛ばす。
その弾き飛ばした瞬間、今度は流が間合いを詰めて掌を胸に叩きつける。
「グッ!!」
焔が少し後ろに引くが、両手の焔を球体状にして投げ、それを流が回避しようとした瞬間。
「な!?」
大爆発する。
火桜の炎術、炎爆。球体状に圧縮した炎を爆発させる。
一瞬で炎に呑み込まれた、流だがすぐに炎から現れる。
「危なかった・・・。風を纏ってなかったら死んでたな」
所々、服が焦げているが致命傷はない。
「今ので死にませんか」
「俺は死ぬかと思ったよ。・・・お前はダメージなし?」
「いえ、胸に掌をくらったのは痛かったです」
「痛いで済んだか、風を溜めてなかったらとはいえ結構、本気だったんだけどな・・・」
再び風を手に溜める流だが、焔は手に炎を纏っていない。それどころか構えてさえいない。
「炎術は使わないのか?」
不思議に思った、流が問い掛けるが
「見ていれば分かりますよ・・・」
そう言った瞬間、両手から炎を出して、その炎を下に伸ばす。一定の長さになると停止して、その炎の形のまま構える。その姿は・・・
「炎の双剣士みたいだな。なかなか、格好良いぞ」
二つ炎の剣をもつ、焔の姿を見て、流が呟く。
「そうですか?・・・それよりこの炎剣どうですか?魔人になってから作った技なんですけど」
「それもなかなか、だな。性質変化、形体変化の応用か?」
「そうです。今、この炎は斬ると燃やすを同時にできますよ」
爽やかな笑顔で答える焔に苦笑する流。
「そいつは恐いな」
「そうですか?まぁ身を持って実感してください」
そう言った瞬間、炎の双剣を構え流に斬りかかる。
流は片手の風を風弾にして放つが双剣によって切り裂かれ消滅する。
「出ろ!天風!」
風弾を切り裂かれた瞬間、自身の武器である鞘に収まった天風を喚び出し柄を握り締めて双剣の刃に合わせて切り返す。
「刀ですか?」
双剣を切り返された、焔は一旦間合いを開けて聞く。
「ああ」
短く答え、刀を鞘に戻し少し腰を落として抜刀体勢をとる。
「なるほど、一撃勝負と言う訳ですか?」
「そんなところだな。あんまり長引かせる、と術の力の差が多くなるんでな」
まだ、表に出てないが確実自身の方が力を消費している、と悟った流はまだ力が残っている内に決着をつけることにした。
「いいですよ。一撃勝負でいきましょう」
そう言った瞬間、炎の双剣が更に力を増したように激しく燃え上がる。
「負けられないな」
大量の風を纏い、力で対抗する。流を中心とした竜巻の様に風が激しく吹き上げる。
「いい風ですね」
「褒めるには早いな」
更に風が強くなる。
「!まだ余力があるんですか?」
「いや、俺の力だとこの辺りが限界」
そう言いつつも更に風が強くなり続ける。
「・・・・・・」
「不思議そうだな。どうして風が強くなり続けているか。種明かしをしよう」
不思議そうな顔をしている焔に手品の種を明かすように話しかける。
「この天風は天武の次期宗主が作った」
「天武・・・?まさか!?」
「ご想像通り、天武の作る武器には何かしらの能力がある。因みにこの天風は風の力を増幅してくれる」
特殊武装の製作、天武が独自に考え、自身の使う武術、体術に合わせ造っているなかで出来上がった技術。
「天風の欠点としては、かなり集中しないと暴走する。・・・今の俺が制御できるのはここまで」
「・・・厄介ですね。僕も限界まで力を出させて貰いますよ」
炎が爆発的に増加し、自身も炎を纏う。
旋風と業火がお互いに衝突しあう。
「「勝負!」」
旋風を纏いし流と業火を纏いし焔が叫ぶと同時にお互いに間合いを詰めて交差する。
「「・・・・・・」」
刀を振り切った流と炎の双剣を振り切った焔はお互いに背を向けて沈黙している。
「・・・強いな、お前」
沈黙を破った流が称賛した瞬間、風が拡散し地面に倒れる。
「貴方も」
焔は倒れそうになるが炎の双剣と業火を消して倒れかけるがなんとか耐えている。
「脈あり、腹部に重度の火傷。・・・やばいな、速く治療しないと」
倒れた流に駆け寄り、状態を確認した。飛鳥は流を肩に担ぎ去ろうとするが
「貴方は僕を殺さないのですか?」
ふらつきながらも飛鳥を見る。
かなりのダメージを受けた焔なら今の飛鳥でも一撃だろう。
「・・・全力の俺と戦いたいのだろう?俺もお前と全力で戦いたい」
「・・・」
「それに・・・お前は俺達と同じだからな。強い奴と本気で戦いたい、お互いに殺す気だが、生死にそれほど執着がない。俺達と同じただのケンカ好きだな」
飛鳥が言ったことはなんとく当たっていた。
もし、流を殺す気なら飛鳥が流に近ずく前に攻撃しただろう。
「ああ、ここの陣は壊さないでくれ。直すのが面倒だから」
「・・・分かりました。・・・一つ、聞きますが貴方の名は?」
「天武飛鳥」
「飛鳥・・・。次に会うのを楽しみにしていいですか?」
「俺も楽しみにしてるぞ」
お互いに笑みを浮かべ、同時に去る。
「次に会うのが楽しみだ」
流を担ぎながら焔との再開を楽しみにする。
「俺も・・・リベンジするぜ」
「生き返った・・・?」
「最初から死んでねぇよ!」
意識を取り戻した流に突っ込みを入れられる飛鳥だった。




