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第六話『厄介』

「どうした?こんなものか」


「まだまだ!」


水瀬の道場で飛鳥と春那が戦闘訓練をしていた。

春那の両手には小太刀が一本ずつ握られており、飛鳥は片手に鍔なしの両刃剣を握っている。


「ハァ!」


斬りかかってくる春那に対して剣で全て防ぐ飛鳥。


「やはり、攻撃が単純過ぎる」


飛鳥が指摘すると同時に小太刀を剣で弾いて春那の首筋の直前に剣を向ける。


「もっと速さと力をつけろ、もしくはフェイントなどを使え」


剣を下げて、言い放つ。


「飛鳥にはまだ勝てないか」


「そう簡単に負ける訳にはいかないのでな。だが、筋は良いぞ」


不満そうに言う春那に対して、飛鳥は少しは誉める。


「次、春華」


先ほどの戦闘訓練を端で見ていた春華を呼ぶ。


「お願いします」


両手に鉄扇を持った、春華が飛鳥の前に出る。その間に端に行く春那。先ほどから順番で模擬戦闘をしているが飛鳥に疲れの色はない。


「いきます」


「ああ」


鉄扇を構え、飛鳥との戦闘を開始する。



数時間後



「今日はここまでにするか」


あれから何度も戦っていたのに顔色一つ変えていない飛鳥だった。


「終わったー」


「ありがとうございました・・・」


それに対して疲労感が現れている二人。


「(二人とも筋が良い・・・このままだと、俺が不味いな)」


水瀬宗主、志月に

「武器で自分に一撃を入れた方と婚約する」と問題を先送りにする為に言ってしまったが、このままだと・・・水瀬の次期宗主と同時に飛鳥の婚約が確定してしまう。


「(二人とも良い奴なんだけど・・・致命的な欠点があるだよな)」


この数週間でわかったこと。


春那は究極の方向音痴で観光案内を頼んだら・・・一日迷うことになった、観光案内位なら出来ると思った甘かった。それだけでなく買い物ですら迷うらしい。


春華は料理が趣味のわりに味が酷い、頼まれて味見をしたら死にかけた。・・・あれが毎日続いたら死ぬ、確実に死ぬ。しかも笑顔で聞かれるだけに断り難い。


「(もう少し・・・自由を満喫したいな)」


現実逃避、直前の状態になってしまった。


「・・・ハァ」


「溜め息なんかついてどうした?」


突然、飛鳥に話しかける者がいた。


「色々あるからな・・・って!流!?」


「久しぶりだな」


そこには現在仕事で日本各地の封地を調べている筈の流がいた。


「流?・・・真風流?」


春那が確かめる様に聞く。

いきなり現れた事については突っ込まない。


「そう。二人とも久しぶり」


「それより、どうして此処に?」


「仕事のついでに飛鳥の婚約者と次期宗主に挨拶に」


飛鳥に対して微笑みながら言うが


「誰からその話を聞いた?それにそれだけじゃないのだろう」


それだけじゃないのはすぐに解った。

わざわざ、流に行かせる位なのだ、ただの仕事ではないだろう。


「それも本題なんだけどな・・・調査報告書を届けと飛鳥に依頼を届けに。

話は飛燕さんから聞いた。それでどっちが婚約者?」


「・・・ハァ」


どうしても聞いてくる、流に諦めさせるのは無理そうだと飛鳥の方が諦めた。


「・・・まだ決まっていない。仕事の内容は?」


「まぁ、待て。水瀬宗主にも話さないとだから一緒に聞け」


「宗主の所に行ってないのか?」


「行ったけど、飛鳥とそこの二人にも関係あるから呼びに来た」


「私達にもですか?」


「多分ね」


春華に答えるが自信がないのか

「多分」らしい。


「ただ一つだけ言えることは、厄介なことだけ」


「・・・厄介?」


流の言葉に疑問を浮かべるがそれ以上ここでは言う

気がない様だ。



水瀬宗主の部屋


「では、話を始めてもらえるかな?」


「まずは、これを」


志月に報告書が入った封筒を渡して飛鳥にも封筒を渡す。


「・・・・・・!」


封筒の中にある書類を見て飛鳥の表情が変わる。


「流、これは事実か?」


「事実だ。複数の封地、霊地が何者かによって壊されていた。ただ・・・完全破壊ではなく一部の破壊だったので発見が遅れた」


「流君、一部の破壊とは?」


志月が確かめる様に問いかける。


「気脈を安定させる陣が一部だけが破壊されていた。陣の修復はもう完了しているので気脈は安定している」


「最近まで気脈が乱れていたのか?まさか・・・妖魔の大量発生は」


「飛鳥の想像通り、気脈の乱れが原因だろうな」


妖魔の出現には気脈の流れが関係あると言う説が退魔組織内では有力な説であり、気脈の乱れで妖魔が大量発生した可能性が高い。


「水瀬の管轄内の封地、霊地は警備の強化をして貰えるますね」


「当然だ。・・・流君、陣を破壊した者達については何か解っていないのか?」


「・・・未確認な情報だから、あくまで可能性だけど・・・魔闘士が破壊した可能性あり」


「!」


流を除く、全員が驚く。

自分達と同じ魔と闘う者が気脈を乱して妖魔を発生させた可能性があるとは。


「今の所は可能性だけ・・・事実はまだ解らない」


「・・・人工妖魔については?」


飛鳥がもう一つの疑問を聞く。


「調査中でまだ何も解っていない」


「・・・そうか」


気脈を乱した者達と何かしら関係があるかと思ったが現状では不明の様だ。


「・・・俺に依頼が来ているのだったな」


「ああ。多分、そこの二人にも来るだろうから一緒に聞いてくれ」


春那と春華にも仕事が来る予定でもある様な、流の言い方。


「国からの依頼で『陽月学園』に転入して欲しいそうだよ」


「・・・陽月学園?」


陽月学園、日本で唯一の魔闘士育成機関であり、日本各地から素質ある子供を集めた大規模な学園。

表向きは小、中、高一貫の進学校である。


「あの地は火桜一族の管轄内だが・・・奴等は反対しないのか?」


火桜、同盟に所属していない五大勢力で炎術に長けた一族である。

そして、どういう訳か天武を嫌っているので、天武の次期宗主である飛鳥が来るのを快く思わないだろう。


「言ったろう、二人に関係あるって」


「?」


「天武、真風、地静の次期宗主に学園に来る様に、という内容で依頼が来た。

この分だと水瀬にも来るよ。火桜はもういるらしい」


「・・・本当か?」


飛鳥が思わず聞き返す。

退魔五大勢力の次期宗主を集めるなどその地で問題が起きているという事を言っているのと同じである。


「だから、言ったろ?厄介事だって」


爽やかに言う、流を見て確かにと思う一同だった。




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