第五話『悩み』
「お久しぶりです」
「飛鳥君も久しぶりだね。元気だったかい?」
水瀬邸にて水瀬宗主にして春華と春華の父、水瀬志月に挨拶していた。
「はい」
「それはなによりだ」
「・・・この度の武器製作の依頼は、この天武飛鳥が勤めさせていただきます。若輩の身でありますが必ず満足する武器を造り上げます」
「・・・相変わらずだな」
親しくない目上の人には礼儀を持って接するのが飛鳥なので、七年前と同じ態度でいる。
「仕事ですので」
「・・・まぁいいか。春那と春華の武器を造るのが依頼なのは知っているな?」
「当然です。武器を使った戦闘方法を二人に教えることも含めた依頼であることも」
「・・・それとは別に君に相談したいことがある」
「何でしょうか?」
次期宗主を決めることに関わる事だと聞いたがどのような内容かは見当がつかなかった。
「重要なことだ。心して聞いてくれ」
「・・・・・・」
「春那と春華・・・どちらが好みかな?」
「・・・は?」
予想外の問い疑問の声が出る。
それと宗主を決めることに何か意味があるのだろうか?
「・・・それはどういう意味がある問いなのですか?」
「そのままだが・・・飛燕さんから何か聞いていないのかな?」
「父からは話がある、とだけ聞いています」
嫌な予感を感じながら答える。
「直接聞いてみろ、と言ってたからな。確かに本人の意思が大切だしな・・・」
「?」
一人納得している志月を見て何のことだかわかっていない飛鳥は疑問しかない。
「仕方ない、簡潔に言うからよく聞いてくれ」
「はい」
「春那か春華を嫁に貰ってくれないか?」
「・・・・・・は?」
予想外にして理解できる範囲を越えた問いに呆然とする飛鳥。
「あの、それは冗談ですよね?」
「冗談ではないよ」
「・・・」
爽やかな笑顔で返答され言葉が出てこない。
違う退魔一族同士の結婚はないことはないが本当に極僅かな前例しかない。
それが宗家の直系同士だと前例さえない。
「まぁ、急には決まらないか。まずは依頼を頼むよ」
「・・・はい」
その夜、水瀬邸の飛鳥が泊まっている一室にて
「・・・何故だ?」
今日一日のことを思い出して、何故こうなったかを考えていた。
「親父、何故話さなかった?こう言った話は苦手なのは知っているだろうが・・・戻ったら殴ろう」
飛燕に対して報復を決めてこれから、どうする考え始めた。
「どうする・・・」
逃げるのは却下、仕事がある以上、逃げる訳にはいかない。
次、断る・・・一番妥当だが退室する時に
「断ったらどうなるかわかっているな?」と言われ、断るなどしたら命が危なくなるので却下した。
「・・・困ったな」
本当に困っているのだろう。一人独り言が多くなっている。
「この地にくると何かしら問題が起きてる様な気がするな・・・」
半分呆れた様に呟く。
二回しか訪れいないのに何故かそう思う
「まずは仕事だ・・・それからどうするか考えよう」
問題を先送りしてしまうが今は休もう、と決めた。
数週間後
「(そろそろ、やばいな・・・)」
武器製作が終わり、二人に武器を使った戦闘を教えている最中、あの話をどうするか考えていた。
「飛鳥さん?」
「・・・どうした?」
春華が急に話しかけてきた。
「いえ、先ほどからずっと悩んでいたので」
「もしかして、婚約の話で悩んでいるのか?」
春那が正解を言う。
他に悩むことなんて今のところない。
「そうだ・・・」
「・・・やっぱり、嫌なのか?そうだよな・・・七年前、ある意味では私達が飛鳥を殺しかけたんたがら」
七年前、飛鳥が死にかけたのは二人が原因だった。
七年前の妖魔は人に寄生して人を襲う、珍しい妖魔だった。
そして、その時に寄生されたのは春那と春華の友人だった。
その寄生された友人は海にいた飛鳥と流が近くに現れた邪気を探っていた時に発見した。
だが、当時の二人には妖魔に寄生された人間の救出など出来なかったので飛鳥は時間稼ぎをして流が応援を呼んでくる、ということで飛鳥が戦闘をした。
「あの時、邪魔をしなければ」
春那が後悔した様に呟く。
飛鳥が戦闘を開始してから少し、春那と春華がやって来たのだった。彼女等もまた近くの邪気を感じて訪れたらしい。
そして、飛鳥が友人を攻撃しようとしているのを見て、二人が止めようとした。
そのせいで飛鳥に隙が出来てしまい、妖魔の大量の邪気が込められた一撃が飛鳥に届いた。傷自体は酷いものではなかったが、妖魔の邪気が体内に侵入してそれが原因で危うく死にかけたのだった。事実、飛燕逹が遅れて来ていたら死んでいた。
「もっと冷静でいられたら、飛鳥さんは・・・」
今度は春華が呟く。
「友人が目の前で襲われていたんだ・・・二人の行動は悪くない。・・・お互い未熟だったが一番の原因だな」
軽いフォローを春那と春華に入れる。
実際、二人が冷静であったなら、飛鳥も隙をつくらなかったなら結果は変わったかもしれない。
「・・・一つだけ言わせて貰うが、別に二人を嫌っている訳ではないからな。
あの時のことはもう謝罪を受け取ったからな」
「・・・本当ですか?」
「嘘じゃないよな?」
春華と春那が不安そうに聞いてくる。
「嘘ではない。後・・・婚約の話は二人はどう思っている?」
「そうだね・・・飛鳥はいい男だしタイプだから、私は良いけど」
春那、普通にOKらしい。
「私は、そ、その・・・飛鳥さんに一目惚れしていましたので」
七年前からOKな春華。
「・・・冗談だろ?」
「「本気」」
余計やばくなった気がする飛鳥は一体何が悪かったのか悩み始めた。
「(何がいけなかった?初めて会った時、笑顔で挨拶したのが悪かったのか?
それとも・・・二人と友達になろうとして積極的に関わり過ぎたか?)」
当時の飛鳥は今より友好的で多くの人と友達になろうとして頑張っていて、笑顔の似合う少年だった。
今も笑えば似合うが。
「(何がいけなかったんだ?)」
多少、女難の相があることを知らない飛鳥には分からなかった。




