第四話『再会』
「やはり・・・慣れないな」
沖縄行きの飛行機の中で外を眺めている飛鳥が呟く。苦手と言うわけではないのだが、乗り物に乗るのはあまり好きではないらしい。
「しかし、あの時親父が言っていたことは何だったんだ」
沖縄は行きの前日のことを思い出しながら呟く。
前日
「飛鳥。明日から水瀬の所に行ってもらうが失礼のない様にな」
黒髪に蒼い瞳を持ち胴着を身に纏い、つい先ほどまで飛鳥と組み手をしていた現宗主にして、父の天武飛燕が飛鳥に言い放つ。
「わかってる」
「・・・やはり、子供の一人旅は心配だな」
「こっそり、ついてくるなよ・・・後、分家の護衛もいらないからな。
ただでさえ、忙しい時なんだから」
妖魔の件などで多くの退魔組織は忙しいのである。
「・・・・・・そんなことはしない」
「(今の間は・・・)」
本当に大丈夫なのか、不安になる飛鳥だが、飛燕は話を続ける。
「もう一つ、水瀬の宗主がお前に話があるそうだ・・・内容は直接聞いてくれ」
「俺に・・・?」
回想終了
「(宗主である親父ならともかく・・・俺に話しとはなんだ?)」
次期宗主とは言え、違う一族の宗主が話を持ちかけることなどそうあることではない。
「・・・行けば分かるか・・・観光してから帰ろうかな」
考えていても分からないと思い、仕事の後に観光しようかどうか悩み始めた。
那覇空港
「・・・迎えが来るらしいが何処だ?」
沖縄空港に着いた天牙は辺りを見渡すが迎えらしい人は見えない。
「・・・・・・待つか」
迎えが来るなら、少し待てば来るだろう。来なければ直接向かえばいいだけこと。
荷物を持ち近くのベンチに座る。
「(・・・それにしてもあれから・・・七年か)」
沖縄にきたせいか、十歳の時に死にかけたことを思い出す。
「(未熟だったな・・・)」
昔を思い出す様に懐かしむ。
七年前、沖縄に来たのは退魔組織同士の交流を兼ねた目的でこの地には、父と流で来たのだった。流の父はその時は外せぬ仕事があったので来なかった。
交流と言っても、お互いの技量の確かめる為でもあるので宗主同士の組み手と言う形だった。
組み手が終われば、互いの退魔状態の確認をする。
それには子供であった飛鳥、流にはつまらないだろうと、海で遊んでくる様に言われたかそれが失敗だった・・・。
「(そして・・・・・愚かだったな、あの頃は・・・)」
海で遊んでいたとき、妖魔に襲われた・・・それだけなら逃げれば良かった。いや、当時の実力でも倒せる程の妖魔だったたが・・・
「すみませんが・・・天武飛鳥さんですか?」
「ん?」
昔を思い出すのをやめて声をかけてきた者を見る。
そこには黒の瞳に空に近い蒼の長髪を後ろで束ねた私服の女性。
「水瀬・・・春華か?」
昔の記憶を掘り起こし該当する人の名を呼ぶ。
水瀬春華、水瀬一族の次期宗主『候補』である人物。
「は、はい」
「久しぶりだな・・・元気そうで何よりだ」
「飛鳥さんも元気そうですね」
「そうか?・・・迎えは春華だけか?」
「いえ、姉さんも一緒ですよ。今は手分けして探していたので」
「春那もか・・・」
それを聞いて複雑そうな顔をする。
「・・・アイツ、方向音痴じゃないのか?」
「さすがに迷いませんよ、空港内を探していますから」
「それなら、良いが
「京都より御越しの天武飛鳥さま、空港ロビーにて水瀬さまがお待ちしています」・・・見つからないからの呼び出しか?」
「・・・どうでしょう?」
空港内で迷ったのか、見つからないから放送で呼んだのか、できれば後者であって欲しい。
空港ロビーに行くと春華と同じに髪と瞳に長い髪をポニーテールにした女性、水瀬春那がいる。
「春華!・・・その目は・・・飛鳥!」
「目?そこしか印象はないのか?」
「そこが一番印象に残るのですよ」
春華に言われてそう言うものかと、納得する。
「飛鳥〜!久しぶり!元気だった?」
「ああ、春那は元気そうだな」
「当たり前だろ」
春華と違い、フレンドリーな態度で飛鳥と接する春那。
「飛鳥はどこに居たんだ?」
「ベンチに座っていた。それよりも迷ったのか?」
「え!?そ、そんなわけないだろ」
「目が泳いでいるぞ」
まさか本当に迷っていたのか、と呆れながらも変わっていないと懐かしくもなる。
「しかし、迎えが次期宗主候補とは・・・それとも、もう決まったのか?」
「いえ、まだです」
春華がすぐに答える。
次期宗主候補、宗主はその家、長男か長女が継ぐのだが双子の場合は力が強い方が次期宗主となる。
春華と春那は双子の姉妹にして力も同じ位なのでどちらが宗主なるか決まっていない。
「ですが、もう少しで決まります」
「そうなのか?」
「飛鳥に協力してもらうみたいなことを言ってたな」
「何?」
春那の言葉に疑問の声が出る。次期宗主を選ぶのに飛鳥に協力してもらうわけがない。
「ではそろそろ参りましょうか」
「・・・ああ」
悩んで答えがでないのでとりあえず会って話を聞くしかない。
この時は飛鳥は思いもしなかっただろう。大変なことになるとは。