第三話『今後』
合コンから数日後、廃墟となった工場の中で飛鳥と流は妖魔と対峙していた。
「今度は・・・ケルベロスもどきか?」
飛鳥の前には三つ首に鎧をつけられた狼系統の妖魔が唸り声を上げて威嚇している。
「此方は・・・虎と鬼?合わせてタイガー鬼、または鬼虎かな?」
流の前には鬼の体に虎の様な模様があり、指には鋭利な爪、口には鋭い牙が生えている。
「コイツ等も人工妖魔だな」
飛鳥が嫌な顔をして呟く。
人工妖魔、以前の鬼の変種が人為的に造られた事が判明し、それに似た妖魔、もしくは同じ様に人が手を加えたと思われる妖魔が発見され、それ等を総じて『人工妖魔』と命名した。
「妖魔の大量発生の事も解決してないってのに」
「まったくだ。仕事を増やすな」
人工妖魔に文句を言う、飛鳥だが返ってきたのは唸り声だけ。
「今日から見たい刑事ドラマがあるから、さっさと終わらせるぞ」
両手に風を溜めて、風刃を鬼虎(?)に打ち出す。
「それ・・・明日からだぞ、放送」
流に突っ込みを入れながらも拳を構え、襲い掛かるケルベロスもどきに応戦する。
「頑丈だな」
流が人工妖魔の攻撃を交わしながら呟く。
風刃を幾つも叩き込んでも多少のダメージしか与えていない事が解り、どうするか悩み始めた。
「風弾きかないし、天風ないしな・・・」
研いで貰う為、研師に渡したので現在しようできる武器がない。
「仕方ない」
一旦間合いを開けて向かってくる人工妖魔に右手を掲げる。その手には風の塊が渦を巻く。
「死んでくれよ」
手のひらに出来た小さな竜巻を放ち、人工妖魔に当たり風の渦が人工妖魔の動きを止め、同時に切り裂き消滅させる。
旋風弾、風の渦で敵の動きを止め、中の敵を風で切り裂く技。
「あー、やっぱり周りがズタズタか・・・まぁいいか」
妖魔が居た所を中心に周りがぼろぼろになってしまったが、廃墟だから問題ないと言う結論に至った、流だった。
「流の方は終わったのか・・・」
飛鳥と戦っている人工妖魔はもう既にぼろぼろで動く気配はない。
「此方も終わりか・・・頑丈なだけだな」
飽きた様に呟き、人工妖魔に背を向け歩き出そうした瞬間
「グアァー!!」
最後に一矢報いる為に襲い掛かるが
「うるさい」
感情も何もない声で回し蹴りを放つ。回し蹴りが当たった瞬間、人工妖魔が真っ二つになり消滅する。
閃断脚、足に溜めた気を刃状の形体に変えて敵を蹴ると同時に斬る事が可能。
「終わりだな」
先に妖魔を始末した流の方が飛鳥に話しかける。
「そうだな」
「じゃ、帰るか」
「ああ」
流に返事をして廃墟を後にする二人。
「もう少しで夏休みだな」
暗くなってきた帰り道で、いきなりそんな事を言う、流。
「・・・そうだったな」
「忘れてたのか?」
「忙しいからな」
「そうだな、最近になってから仕事が増えたからな」
妖魔の大量発生、人工妖魔の出現で二人が仕事に出るのも多くなってきた。
「それで本題は?」
「ああ、夏休みの間は仕事で飛鳥とは暫く組めない」
「・・・そうか、各地の調査か?」
「正解。大量発生の原因の調査で霊地や重要な封地に行くことになった」
霊地、封地、星に流れる気脈と呼ばれる力を利用、封じた土地の事である。
「丁度良いな、俺も仕事で居なくなるから」
「飛鳥も?・・・どっちにしろ、暫くコンビは解散か」
寂しそうに言う、流だが
「コンビ?・・・俺が突っ込みで、流がボケか?」
「いやいや、そういうコンビじゃないから。後、どっちかって言うと飛鳥がボケだろ」
飛鳥のボケに突っ込んで元気になる、流だった。
「・・・ボケコンビ?」
「俺もボケにしたいのか!?・・・まぁいい、飛鳥は何処に仕事で行く?」
「沖縄の水瀬の所に」
水瀬、水術を得意とする五大勢力の一つの一族。
「武器造りにか?」
天武の次期宗主だけに、飛鳥は武器造りにも長けている。
因みに、流の天風、飛鳥自身の魔狼は飛鳥の作品である。
「そうだ」
「・・・気を付けるよ。飛鳥は沖縄で死にかけたんだからな」
飛鳥は十歳の頃、ある原因により沖縄で妖魔に殺されかけた過去を持っている。
「まぁ、今の飛鳥ならそんな事にはならないか」
「・・・たが、気を付ける様にしよう。流も気を付けろよ・・・風邪に」
「風邪にかよ!」
何処か違う心配をする飛鳥に流が突っ込みを入れる、やはり、飛鳥がボケで流が突っ込みの様だ。