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7. 設置

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 ブルーレンの街は中心を流れる川によって東西に分かれていた。東西どちらにも大きな市場があり、それぞれ人口も多いが、どちらかというと東地区に行政や文化施設が集まっているらしい。それに加えて西の下流域にはスラム街もあるという理由から、治安は東区域のほうが良いそうだ。


 ランカスター商会は西地区にあったので、東地区に行くには川を越えなければならない。その時驚いたのは渡し船に乗って川を渡ったことだ。一応橋もあるが、数が少ない上に通行料が高く、さらに検問も厳しいから市民はあまり利用しないそうだ。


「ここですね。少し古いですが二階建ての地下室付き。外周寄りなので中心部からは遠いですが、自治軍の詰所に近いため治安は折り紙付きです」


 説明されながら間取りも見て回った。1階には居間、調理場、それに部屋が二つ。一つは応接間だろう。奥にある部屋には地下室に続く階段が設置されていた。地下室は結構広く、倉庫としては十分だ。2階には大部屋が一つと小さめの部屋が二つあった。


「水場はどこですか?」

「そこの道を曲がった先です。5分ほど歩きますが」

「ちょっと遠いですね」

「そうですね。奴隷にさせれば良いのですが、いないのであれば苦労されるかもしれません」


 往復10分というと結構な労働だ。自分でやりたくなければ、さっさと奴隷を買えということだな。


「いい物件ですね」

「ありがとうございます。家賃は月金貨1枚でいかがでしょう」


 残り資金は金貨4枚と銀貨が50枚ほど。少し苦しいが、まあ問題ないか。


「ぜひお願いいたします」

「ありがとうございます。それでは月末に使いをやりますので、代金はそれに支払ってください」

「わかりました……ところで、この街で奴隷を買うにはどこがよいですか?」

「奴隷商ですか? そうですね、我々は西地区のヨリッヒという商人をよく利用しています。もしご利用でしたら紹介状を書きましょうか」

「ぜひお願いします」


 ついでに奴隷の値段も聞いたが、最低でも金貨20枚は必要だそうだ。残りの手持ちではむずかしい。奴隷購入はまた稼いでからだな。


「最後にもう一つ、これは個人的にお聞きするのですが、アモス・コメニスキーなる人をご存じないでしょうか」

「アモス……いえ、ちょっと思いつきませんね。ブルーレンに居られるのですか?」

「はい。先日、世話になった恩人でして」

「それならば調べておきましょう。何かわかりましたらお伝えします」

「いくつもお願いしてしまい、申し訳ありません」

「いえいえ。これからもランカスター商店を利用してください」


 ジェフトットさん、かなり良い人らしい。色々とお世話になってしまった。結局その日は一度宿に戻り、借りた拠点には明日引っ越すことにした。



 翌日は拠点への引っ越し作業を行った。とはいっても持ち物はすべて馬車に入っているので、馬車を東地区に移動させるだけだったが。


 その際に橋を通ったのだが、たしかに通行料が高くて驚いた。人一人か馬一頭につき銀貨1枚に加え、さらに荷物の種類によっても通行料が追加された。今回は荷物がほとんど無かったから銀貨2枚ですんだが、それでも高く感じた。


 馬車を拠点近くの馬屋に預けた後は、東地区の市場に出て食材や日用品を買い出した。初日に見た西地区の市場より、東地区の市場は洗練されたイメージだ。食器や毛織物など高級品の市も多い気がする。


 とりあえず東方由来という触れ込みのお茶を買ってみた。100g程度で銀貨5枚という高級品だ。後でのんびり楽しもう。


 ついでに東市場の中心にあった石碑の前に行き、その石碑に印を設置しておくことにした。西市場にも似たような石碑があったので、そこにも昨日、印を設置している。


 これから東西市場にある石碑に扉を設置する魂胆だ。人の数は申し分ないし、川を挟んでいるから渡し舟や橋の代わりにもつかえる。さらに市場同士がつながれば、商人らも使用するだろう。


 もちろんいきなり東西の市場が自由に行き来できるようになれば騒ぎになるだろうし、色々と問題も起きるはず。しかし要は俺が犯人であることさえばれなければいい。俺の拠点は市場から距離があるし、まずばれないはずだ。


 夕方に拠点へ戻り、先ほど設置した東西市場の印を扉で繋いだ。使用ポイントは200ポイントだ。扉(小)×4kmという計算である。


 扉を設置した後は特にすることも無いので、買ってきたお茶を楽しんだあと、食事を取ってすぐに寝てしまった。



 次の日、様子を見に市場に行ってみると、とんでもない騒ぎになっていた。広場の中心にある石碑に向け人だかりができ、自治軍らしき武装した兵が慌ただしくわめいていた。


 そこら辺にいた人を適当に捕まえ、事情を聞いてみる。


「何の騒ぎでしょう」

「よくわからんが、どうも西市場に繋がる不思議な穴ができたらしい」

「西市場? どういう意味ですか?」

「俺にもよくわからん。だがみんな面白がって、見に来ているんだ」


 どうもこれは見物人の集まりらしい。移動に利用されると思っていたから拍子抜けだが、まあ最初はこんなもんか。


 幸い、ポイントは順調に増えている。まだ朝だというのに、昨日とくらべて100ポイント近く増えているのだ。この調子なら一日に1000ポイントくらい稼げるかもしれないな。


 しかし様子見はこれぐらいにして、今日は拠点で次の商売について考えよう。下手なことをしてあの穴を俺が作ったのだとばれるのは御免だし。まあ、そんなことありえないだろうが。


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