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晴れ彼女  作者: はなとも
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1話

人生において、幸せの量は限られている。

これは得られる量でなく与えられる量だと俺は思う。


そして人は一生のうちでどれだけ与えられる幸せを取りこぼさずに過ごすかで、その人の人生の幸福度というものが決まる。


そう考える俺の人生の幸福度はいかほどのものなのだろうか…?




雨が降っている。

土砂降りでなく、小降りでもない。なんとも言えない程度の、良く言えばちょうどいい、悪く言えば中途半端な強さだ。


そんな中、俺は傘もささずに通学路を歩いている。

………正確には、さしたくてもさせる傘がない。持って来るのを忘れたのだ。


(今日の降水確率は低かったんだけどな…)


なので今日はほとんどの荷物を学校に置いてきた。持っているのは財布とスマフォと定期券、あとは家の鍵。それらを鞄の中につっこんで、鞄をビニール袋に入れて防水は完璧だ。


……そういえば、明日提出の分の課題があったっけ……まぁ、誰かに見せてもらうか。


そんな感じで一人歩きながら考え事をしていたせいか、危うく道路に飛び出るところだった。


周りを歩く人達は皆カラフルな傘をさし、うつむきがちになりながらも黙々と歩いている。


そして傘もささずにびしょ濡れになっている俺を変なものを見るような目でチラリと横目で見ていく。


雨の日だからだろうか…皆いつもよりも早足な気がする。


髪の毛が濡れて肌にくっつく。鬱陶しい。俺もそろそろ帰ろう。

そう思い踏み出そうとした時、不意に雨が止んだ。いや、止んだ訳でなくただ頭上に傘がさし出されていただけのようだ。


赤と黒の蛇の目傘。何故か落ち着く模様で好きな柄だ。


振り返ると予想通り、眩しいくらいの笑顔がそこにはあった。


「誰かと思ったら、雨乃さんじゃないですか。どうしてこんなところにいらっしゃるのですか?」


「私と同じ通学路だって知ってるでしょ。あとその敬語気持ち悪いから止めてね」


とこんな軽い会話が出来る数少ない友人A…もとい同級生の雨乃めぐみ(アマノ メグミ)さんがいた。


「珍しいな、いつもだったら俺よりも早く帰ってるのに。」


「ちょっと用事でね。寄り道してたから。てかなんで傘ささないの?風邪引くよ?」


「見てわかんない?」


「折りたたみは?」


「あったらさしてるよ。」


はぁ…と呆れたとでも言うかのように、雨乃はため息をついた。


「しょうがないなぁ…ちょうど途中だし送ってってあげるよ。ついでに雨宿りさせてね。」


「へいへい。」


そんなことを言いながら二人は歩き出した。雨は少し弱くなった気がする。





自己紹介がまだだった。

どうも、俺の名前は雨実(アマミ) 風悠来(フユキ)。虹ノ丘高校に通う高校1年生。雨乃と同じクラスになっている。


「結構濡れたね〜。おじゃましま〜す。」


「そうだな。ちょっと待ってろ。なんか拭くもの持ってくる。」


ありがとっ、と言いながら雨乃はリビングに向かった。まだ一月ちょっとしか経っていないのに、雨乃は勝手知ったる風に俺の家の中を歩いて行った。


俺と雨乃と会ったのは、高校に入ってからだ。


家は近いが学区が違っていたため、小中学校ではいっしょにならなかった。


だから高校からの帰り道がほとんど同じで、入学してからすぐの頃はいっしょにならないように、俺は時間を気にしながら登下校をしていた。


しかし、一度だけ雨乃が寝坊したのか、俺が家から出た時にばったり会ってしまった。


その時からだ。雨乃とは初めて会ったわりには、話が盛り上がり、その日は危うく遅刻するところだった。


そして、その日から時間があった時はいっしょに帰るようになった。話の内容はこれといって特になく、どうでもいいことばかりだった。


それでも不思議と飽きずに、二人でいることが多い。


だからといって、付き合っている訳ではない。よく言う、「友達以上恋人未満」と言うやつだと思う。


閑話休題。


今の使い方は合っているのかな?まぁ、いいか。


俺は濡れた制服を脱いで、適当な服に着替えた。


居間では雨乃が立ったままボーッとしていた。


「なんで座ってないの?」


「遅いよ。スカートが濡れてたからさ、座って汚すのも悪いかなってね。」


「そか、悪かったな。なんか温かいの飲むか?」


「んー、冷たいのがいいんだけど?」


「麦茶しかないから勘弁な。持ってくるから、髪とか服とか拭いとけ。」


ありがとー、と言う声とともに、ガサガサと衣擦れの音が聞こえてきた。何故か少し驚いた俺はそそくさと台所に向かった。


麦茶と一緒に台所にあったせんべいを持っていく頃にはだいたい終わっていた。あとは髪だけのようだ。


雨乃の髪は黒く、ショートカットが少し伸びたぐらいの長さになっている。まだ少し濡れているせいか、ぺたっとしている。


「ドライヤーいるか?」


「あ、いいの?なら甘えさせていただきます〜♪」


「あいあい。麦茶置いとくから、あとせんべいも食べていいから。」


麦茶とせんべいをテーブルに置いて、俺は洗面所からドライヤーと、もしかしてと思いくしを取ってきた。


「はいよ。あといるならくしも。」


「どもども〜♪気が利くね〜♪」


雨乃の髪の間をくしがスルスルと抜けていく。途中で引っかかることもなく、毛先まで抜けていく。やはり男の俺のと違い、よく手入れされているのだろう。


こんなことを言うのはおかしいかもしれないが、俺は黒髪が大好きだ。いつまでも見ていられる。


そのため、雨乃が髪をとく様子に見蕩れていると、


「そんなにじろじろ見られると落ち着かないんだけど…」


「あ…あぁ…ごめんごめん。」


恥ずかしくなった俺は慌ててテレビをつけた。ちょうどワイドショーのチャンネルだった。内容は最近あった傷害事件などなど。


「最近は物騒なことが多いな。」


「そう?だいたいいつもこんな感じじゃない?」


「そうかもなぁ…」


そんなどうでもいい会話からまたいつものように、だらだらと益体の無い話をしばらく続けた。




気がつくと結構な時間になっていた。


「だいぶ話し込んじゃったね。」


「そうだな。そろそろ帰るだろ?」


「うん。おじゃましました。」


2人揃って玄関へ歩く。少しだけ話し足りないと心の隅で呟く奴がいた。


外へ出ると雨も上がり、雲の量も減ったおかげで少し赤くなってきた空を見ることができた。


「気をつけて帰れよ。」


「私の家すぐそこだし、特に何もないでしょ。」


「わかんないだろ、最近物騒なんだから。」


「そっか。うん、そうだねありがと。」


そう言って、雨乃は笑った。


眩しい…自然と目が細まる。


頬が熱い…きっと太陽のせいだ。うん、そうに違いない、西日が強いからな。


「じゃ、また明日ね。」


「あぁ、また明日。」


お互いに手を振る。雨乃は力いっぱい、俺は小さく。


こんなことで俺は幸せだと思える。

これからもこの小さな幸せを取り零さずにいきたいと、雨乃と過す日々は本当に幸せに溢れている。

初めてこういう形の文章を書きました。

なんの知識もなしに書いたため、色々と見苦しいところがあったと思いますが。読んでいただけて、面白いと思っていただけたなら幸いです。

どこか御指摘いただけるところがあればオブラートに包んでお願いします(メンタルがシャー芯レベルなので。)。

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