第十七話 目覚め
何時もより3000文字くらい多いです。
俺は夢を見ていた。
その夢の中で俺は酷い空腹で、目に付くものは全て殺し、喰らおうとしていた。俺はそれを必死で止めようとする。
夢の中の俺は、襲撃者をバスタードソードで切り刻み、叩き潰し、次々に襲撃者の命を刈り取って行く。それは生きている襲撃者が居なくなるまで続いた。
そして、その矛先は調査隊に向く。俺は懸命に止めようとしたが、止まらない。調査隊は戦い、疲弊し、動ける者はいなくなった。リアナの叫び声で俺は声の限りを尽くし声を上げて抵抗したが、止める事は出来ない。
リアナが絶望の声を上げ、アーシェはボロボロになりながらも悲しげに笑っていた。
(アーシェ、リアナッ!!)
そして俺は夢から覚めた。感情が溢れ出る。アーシェは、リアナは、調査隊はどうなった。
「んーあふぇ、んあれ!! んんっー!?」
上げた声は言葉にはならなかった。口の中に納まっている何かが俺を喋るのを妨害し、言葉を発せない。
「んんーうぉうなんふぇんうぁ」
俺は更に体を動かし、言葉を叫ぶが、全身からがちゃがちゃという金属音が鳴るだけで僅かにしか身動きが取れない。
見える範囲だけで俺の鎖には何重にも鎖、手錠、足枷、ベルトなどあらゆる拘束具が体中に巻き付いている。
腕の拘束具は腰に巻き付いたベルトにより自由に手を上げる事も出来ず、足も僅かに開けるだけだ。
(調査隊は、襲撃者は……何がどうなってるんだ!? 俺は森の中にいたはずだろう。この体中に巻き付いている拘束具は!!)
驚き過ぎて、逆にパニックにならず冷静になって来た。
落ち着いて周りを見渡すと、そこは森とは似ても似つかない部屋の中だった。俺の周りに寝具が置かれ、俺はその上で寝ていた。
部屋の明るさから言って、もう朝だろう。少なくとも襲撃から一日は経っている事になる。
「ぬがぁ、ぬぁれか、おないのあ」
まるで芋虫のように体をくねらせ暴れていると、横からどこか間伸びた声が聞こえてきた。
「あら。起きたのォ?」
ごろりと転がり体の向きを入れ替え、声の主の方向を見る。
そこに居たのは服が開け、横になっている女性。長い緑色の髪と自己主張の強い胸、そして爬虫類のような鋭い目が特徴的だ。
「んあい、んんなっ、てんだ」
「何を言ってるか分からないわよ?」
クスリと笑った女性は俺の頭の後ろに両手を回す、女性の胸と体が迫り、俺は圧迫されるが、猿轡が取れるとゆっくりと離れて行く。
「すまない。助かった……ここはどこだ。何がどうなってるんだ」
「落ち着いて、そんな一度に言われても分からないわよ。ここは私達の村の中、シンドウ君が森で暴れていたから、捕まえてここまで連れて来たのよ」
森の中、調査隊、暴食。
断片的に記憶がフラッシュバックする。
体中を突き抜けた凶器、訪れた飢餓感、そして――。
「アアアァァァア!!!! 思い出した。思い出したぞ!! 俺は、俺はッ……食べたのか」
人を、仲間を、俺は食べてしまったのか。
「食べたわよ」
女の一言が重く突き刺さる。その一言は食べたという、覆しようのない事実。体が強張り、胃の中のモノを吐き出そうと酷い吐き気が訪れる。
「ウッ……はぁ、そんな、そんな、食べたのか。俺は、俺は……」
震える声で何度も何度も呟く。そんな俺に女は言葉を続ける。
「ええ、ワイルドボアをね」
「わ、ワイルドボア――?」
その言葉に全身の力が抜けた。拘束され横になっているが、立っていたら腰が抜けて立つことが出来ないだろう。
「な、仲間はどうなったんだ?」
「みんな無事よ。獣人の子もソードブレイカーの子も」
「良かった。本当に良かった」
溢れ出る感情を押さえきれずに、涙が出そうになる。見ず知らずの人、それもいい歳して泣く訳にはいかない、奥歯を噛み締め、耐える。
「それで調査隊は今どこに」
「他の部屋で休んでるわ。話をするにも丁度いいし、皆で話をしましょうか。ちょっと待っててね、拘束を解くから」
体中を束縛する拘束具を一つ一つ外して行き、俺の体は自由に動けるようになった。
「あんた、名前は?」
「私? そうねぇ。オサとでも呼んで」
俺がオサに案内された部屋には、12人までに減った冒険者達がいた。
そんな12人の中でアーシェとリアナ、2人の姿を見つける。衣服は戦闘によって汚れ痛んでいたが、四肢の欠損や怪我をしている様子は無い。
話しかけようとしたが、俺は声が出ない。
そうこうしているうちに、二人は俺を見つけると駆け寄って来た。
「ジロウ!! 無事だったんだね」
「シンドウさん、本当に良かった……」
2人が俺の腕を掴むような勢いで迫ってくる。見慣れた顔がそこにあった。
「すまない。本当に、本当に、迷惑を掛けた……」
「役者も揃った事だし、話を始めましょうか。時間もそうある訳じゃないし」
後ろでその様子を見ていたオサはそう言うと、部屋の入り口から四人の男を引きずり出す。調査隊の前に移動した四人は、憔悴しきった様子でその場に地面に座り込んだ。
「喋って」
オサの掛け声にビクリと体を震わせ、男は喋り出す。
「俺はローマルク帝国の議会直属の工作員で、任務はアルカニア王国内にいる上位冒険者の殺害。基本的には自分達では動かず、武闘派の犯罪組織であるメルキドに仕事をさせていた。主にした任務は5ヶ月前の大規模な盗賊事件、リュブリスの迷宮内の冒険者狩り、第一次、第二次調査隊の殲滅――」
工作員が語る内容に、俺も含め、冒険者は驚きを隠せない。
(こいつらが冒険者狩りを先導していたのか。こいつらの所為で調査隊は……だが、なんで冒険者を襲っていたんだ。何の為に?)
工作員が話を続ける中、リアナとアランの目付きは、特に鋭く光っていた。冒険者とオサに怯えながら、工作員は淡々と喋り続ける。
工作員が喋り終える頃には場は冷え切っており、部屋の中は殺気と怨嗟に満ちていた。
「ベルン、連れて来て」
そんな部屋の空気を気にすることも無く、オサは誰かを呼んだ。
「はい」
ベルンと呼ばれた大男は、手に小柄な男を持って現れた。
オサもベルンもそうだが、この村の住民は、共通して鋭い爬虫類のような目とエルフに近い耳を持っている。
「この子はダリオ、優秀な回復魔法が使えるから、メルキドに捕まっていた冒険者よ、ベルンが森で拾って来たの」
まるで犬猫を拾って来たかのような口調でオサは言う。
「だ、ダリオと言います。僕が答えられるものなら、なんでも……」
おどおどとした青年は、詰まりながらもゆっくりと話を始めた。
ダリオの話と工作員の話を纏めると、工作員は本国からリュブリスの冒険者を狩るように資金と装備を渡され、犯罪組織であったメルキドを使いアルカニアの各地を荒らしながら冒険者を狩っていた。
今のようにメルキドの構成員の数は多くなかったが、各地を転々とする際に優秀な盗賊、奴隷、囚人を仲間として引き込んでいたらしい。
そしてダリオは護衛クエスト中に隊列ごと襲われ、死か、服従を迫られ、服従を選んだそうだ。
事の大きさと展開に、俺を含めた冒険者達は付いて行けなかった。困惑していた冒険者達は互いに話を進め、理解を深めようとしている。
そんな時、話を聞きながら一人考え込んでいたアランが唐突に立ち上がり、オサの元へと行く。
「少し、話がしたい」
「ええ、いいわよォ。少し離れるわ」
アランの呼びかけにオサは応じ、2人はそのまま部屋の外に出て行った。
「助けられた事には、感謝している。その上で聞きたい。何故こんな場所に住んでいた」
「あら、ここはどこの国でもない未到達地域だから、何の問題もないはずでしょ」
にっこりと笑うオサに無表情でアランは話を続ける。
「ああ、特に問題はないだろう。だが、こんな魔物が跋扈する中、それも独力で村を作るのは、異常な事だ。……ここから四日ほど歩いたところにある村が何者かに襲われた。その手際は見事なモノで、数百人の村人が死体どころか全員が行方不明、手がかりは何も残っていない。何か知っているかハイゴブリンよ?」
オサの顔は相変わらず笑っているが、先程までの笑みとは全くの別モノだった。
「あら、物知りなのね」
「獣人のルーツに関する古い文献で見たことがある。鬼人は大国と戦い滅んだ、と書いてあったが――まさか本当に実在するとはな。それでどうなんだ」
「さぁ、どうかしらね。でも相応の理由があったから襲われたんじゃないかしらァ。同じ国でも仲間の報復や領土の争いで村が滅びる事もある。仮にあなた達の土地を侵略され、仲間を殺されたら報復し、仇を討ちたいんじゃない?」
「……あそこの村に警備隊長の知り合いが居たんだ。戦いが好きで戦士らしい男だった。戦って満足出来る死に方が出来たといいが」
「きっと、立派に戦って逝ったと思うわ」
「そうか……これは独り言だが、あそこの村の調査は第一次調査隊の仕事だった。第二次調査隊の仕事は異変の原因の解明と第一次調査隊の捜索」
アランはオサを見ずに喋り続ける。
「異変の原因も第一次調査隊が壊滅した理由も、ローマルク帝国による妨害工作を受けたメルキドによるものだ、と俺は報告書を上げる。……最後に2つ聞きたいんだが、シンドウが暴走した原因は知っているのか、そしてなぜ我々を助けた?」
「あなた達を助けたのは面白そうだからよ。それにお互いの為に有益と感じたの」
オサの顔から笑みが消えていた。
「シンドウくんが暴走していた理由は知っているわ。けど、あの場で話す事ではなかったから言わなかった。丁度いいし、当事者だけ呼んで話しをしましょうか」
部屋から出ていたオサとアランに呼ばれて俺、アーシェとリアナの2人と共に別室へと移動する。
部屋に入り、木製の扉を閉める。室内には5人以外は誰もいない。
「シンドウ、森の中での出来事は覚えているな。それについて話しがしたい」
アランは真っ直ぐに俺の顔を見つめ言う。
「ああ……俺もその話を聞きたかったんだ」
断片的にしか記憶が無いが、俺が調査隊を襲ったのは、間違いのない事実だ。
「私が話すわね。シンドウくんが森の中で暴走したのは、固有能力の中でも最凶のユニークスキル。《七つの大罪》の一つ、《暴食》の所為よ。このスキル群の最大の特徴は、持ち主の意思を捻じ曲げる」
持ち主の意思を捻じ曲げる……。
体の底から湧き上がる飢餓感を、俺は今でも覚えている。抗っても抗ってもその行動を止める事が出来なかった。
「《暴食》が働いている間は、身体能力は獣人を凌駕し、単純な魔力ならエルフすら上回る。肉体的強度も格段に増すから、シンドウ君は頭を少し吹き飛ばされたぐらいじゃ死なないんじゃない? ふふ、どこまでやれば死ぬのか、私にも分からないの」
今でも断片的にしか思い出せないが、俺が戦闘中に何度も怪我を負った。けれど、その全ての怪我が瞬間再生していたのは、おぼろげな記憶の中でも覚えている。
「異世界から来たと言われるアルカニアの勇者は、よく神々に二つのスキルを貰った。と言われているけど、実際にアルカニアの勇者に与えられたスキルは二つではなく三つだった。最強の肉体と魔力、そしてシンドウくんと同じ七つの大罪の一つである《色欲》。強大な大国からアルカニアを守るために力を使えば使うほど、彼は《色欲》に蝕まれて行く。でもその力でアルカニアの勇者はレネディア大陸最強の生物となった。彼に勝てそうな生物と言ったら龍ぐらいなものだった」
「なら、どうしてアルカニアの勇者は死んだんですか……?」
丁度いい、と言った様子でリアナの質問にオサは答える。
「昔、九つの頭を持つ怪物の体内からこの世には存在しない金属、神の金属が出てきたの。そこから作られたのがオリハルゴンの武具。神話や伝説に出てくるオリハルゴンの武具は知ってるわよね?」
その話はレネディア大陸に住むものなら誰でも知っている常識だ。
異世界から来た俺ですら訓練場の歴史の座学で学んだ。オリハルゴンの武具はあらゆるスキルを無効化し、敵を切り裂く。だが、それは現存するオリハルゴンの武具が一つも存在しない事から、レネディア大陸に置ける御伽話だったはず。
(それとアルカニアの勇者と何の関係が……)
「アルカニアの勇者は《色欲》に耐え切れなくなった。そして何度も暴走し、絶望した彼は自らの命を断つ事にした。最後は自殺したとも、自国に殺されたとも、最愛の人に殺されたとも言われてるけど、真相は分からないわ。けれど、大陸最強と呼ばれた彼の命を奪ったのは、オリハルゴンで出来た一本の短刀だった。その短刀はいつの間にかに紛失し、行方不明になったの。けれど短刀は再び現れた」
オサが取り出した短刀に俺は見覚えがあった。それは迷宮での死闘の末に、俺が得た歪な短刀。
「俺の短刀……?」
「そう。その短刀は何の因果か分からないけど、短刀は再び、七つの大罪を持つシンドウくんのところに現れた」
「そもそも、なんでジロウがそんなスキルを」
アーシェが困惑した様子でオサに尋ねる。
「さぁ……《七つの大罪》はどんな人物が持っているか分からない。羊飼いの少年が、商店の主人が、異世界から来た迷い人が、様々な人にスキルは宿って来たの。不運としか言えないわね。……悪いけど、少しシンドウくんと2人で話をしたいから外して貰える?」
「ああ、分かった。行くぞ。2人とも」
アランが声を掛けて先に部屋の外へと出る。
アーシェとリアナは不安と不満が入り混じった表情をしていたが、それでも何も言わずにアランに続いて部屋を後にした。
三人が部屋から居なくなり、部屋には俺とオサは2人だけになった。
オサは俺の方へと歩いてくる。
「こんな偶然がなんで重なると思う?」
「……何の事だ?」
そして俺の直ぐ目の前で止まった。
「大変だったのよォ。私は、苦悶と恍惚に塗れながらシンドウくんと戦っていたんだから、何度シンドウくんを殺しそうになったか。今もアナタと戦いたくて身体がどうしようもなく疼いているの。元々ね。私はホブゴブリンだったのよ」
オサの赤く高揚した顔が俺に近づいてくる。
「覚えていない? 五ヶ月前の森の中であったゴブリンの集団とホブゴブリン。あれ、私よ?」
今でさえ、話に付いていくのに精一杯だと言うのに、更にとんでもない事を言われて考えが纏まらない。
(はっ、ホブゴブリン……? オサが??)
起きてから頭の中をかき混ぜられる事ばかり起きる。
「だが、今のオサは人間の姿を……」
「知られていないけど、ハイゴブリンは鬼人とも言うのよォ? 今の獣人達も元々は魔物だった。それが進化して今の獣人の姿になったの。昔の学者が人間こそが至高の存在であり、獣人はそれを真似したんだ、って言う人がいたんだけど、すぐにその考え方は廃れてしまったわァ。元々、神々が今の人間のような姿をしていて、強くなればなるほど、全ての生物はそれに近い形で進化して行く。あの龍ですら普段は馬鹿でかい姿だけど、人の姿になれるのよ? 驚いてしまうわよねェ」
もしその話が事実だとしたら、俺やアーシェはあの森でゴブリンを殺した。なら今の俺達はオサにとっての憎い仇のはずだ。
「俺はオサの仲間を殺してしまった……」
俺の謝罪を聞いてもオサは優しく微笑む。
「ふふ、元々素質があったのか、与えられたものか、今となってはどちらか分からない。でもシンドウくんと会えたからこそ私は、私達はここまで進化出来た。逆にみんな感謝してるわよォ? 死んだ仲間も立派に戦って死んだ。死は終わりと同時に始まりを意味する。破滅の絶望、再生の喜び。死んだからと言って、単純にそれで終わりではないの。それにあのホブゴブリン、嫌いだったからいいわァ」
触れる程近かったオサが離れ、肩に掛かった緑の長い髪を後ろに払う。
そして俺の頬に手を伸ばしてきた。
「もしかしたら、全知全能を気取っている神々が、運命が、私達2人を殺し合いをさせようとしている。そんな時に、その真逆のことをしたら楽しいと思わない? 想像しただけで笑いが止まらないわァ」
軽く口を開けたオサはその舌で、自らの赤い唇をなぞる。
「ねぇ、シンドウくん。……アナタはこの世界の人間じゃないわよねェ?」
今まで、誰にも言われなかった事を言われ、俺は動揺を隠せない。
「ッ――」
「ふふ、当たりかしらァ? この世界に来て大変だったでしょ。異世界に来た人間の大半は一日目で死ぬ。七つの大罪持ちも使い方が分からなかったり、発動前に死んだらただの飾り。そんな中を運と実力で生き抜いて来た」
俺は目覚めたら森の中を全裸で放り出され、ホーングリズリーに襲われたところを、紙一重で白銀騎士団に助けられた。
その後も助けられたはずの白銀騎士団にボコボコにされ、奴隷商人に奴隷にされ、盗賊やゴブリンに立て続けに襲撃される中、どうにか生き抜いてきた。
冒険者になるまでに何度も死に掛けた。冒険者となっても死に掛けたのは、一度、二度ではない。一つでも間違えたら、何時死んでもおかしくなかった。
アーシェやハンク、アルフレートが居なかったらどうなっていたかも分からない。
「でも、仲間に自分の事を何も言わないのは酷いんじゃ無い? それとも異世界から来たから仲間に自分の事を言わなかった。言えなかった」
まるで俺の気持ちを見透かしたようにオサは喋り続ける。
「裏切られる。拒絶されるのが怖かった。この世界との繋がりである仲間を、やっと得たこの世界との繋がりを失いたく無いわよねェ。でもね。何時までも黙っていても何も解決しないわよォ。先延ばしにすればするほど、それこそ永遠に黙っていなければならなくなる」
「……」
「ねぇ、なんでこの短刀は作られたと思う? こんな短い短刀じゃ武器として使うのは心もとない。武器として使うなら、槍にしてしまった方が遥かに強力。なのに何故、オリハルゴンを使ってこんな歪な短刀が作られたか」
俺のいた世界、それも写真だけだが似たような短刀を見た事があった。恐らく――
「それはね。この短刀は自殺用だからよ。もしも、力が抑えきれずに仲間を殺しそうになったら、この短刀を首に刺せば全て終わるわァ。まぁ、最低な死に方だけどねェ」
自分の命を望んで自分で絶つ。そんな事をする、出来る人間は少ない。俺がそういう場面に陥ったらどうなるだろうか――。
「……力を制御出来るようになりなさい。じゃないと仲間も自分も全て失ってしまう。それまでは私が相手をしてあげてもいいわよォ?」
「何故、俺にここまでしてくれるんだ」
「好奇心よ。それにダメと言われる行為ってしたくならない? 落ち着いたらアーシェとリアナに話をしてあげたら。そしたらまた暇なときに私と遊びましょうね」
五話ぶりに主人公が喋るという……