第三十三話 大雨
「シンドウ、進路はどうする!?」
丘陵の上には5、60メートルの幅で砲が並ぶように鎮座し、盛大に発射炎を噴き出していた。
「反転は論外。迂回してたんじゃ追いつかれる。そうなると……正面の陣地の間をすり抜けるしかない」
「じょ、冗談!? ……ああ、もう、今日はなんなの!!」
一頻り叫び嘆いたテルマは、正面にある丘陵の上を見据えて集中を始めた。
荷馬車に繋がる馬も本能的に危機がせまっていることに気付いているのだろう。4頭の馬は激しい息使いのまま、足を忙しなく踏み出し、緩やかな丘陵を駆け上がる。
眼前には爆炎と無数の人間が行き交い、罵声にも似た命令が飛び交っているが、馬は怯えて暴れる事なく、丘の先へと一直線に走る。元来、馬は臆病な生き物だ。それを品種改良と調教をすることにより、人間に従順で落ち着いた個体にしているに過ぎない。
そんな4頭の馬が正面の騒乱の海に躊躇無く向かって行っているのは、後ろに迫るものがもっと恐ろしいからだろう。
「そこの馬車、邪魔だ!!」
兵士の一人が威嚇をするように叫ぶ。
「知るか、轢くぞ。こちとら朝から散々なんだ!!」
丘の中腹を過ぎ、頂点に差し掛かった時に上空に影が出来た。一見すれば上空に流れる雲の影にも見えたが、それは風により流された雲などではない。
「不味い、投石だ!!」
これが中腹ならば避けようがあった。しかし、ここは左右に装備や人が密集しており、駆け上がった直後で馬も疲労していた。
「飛び降りろッ」
惚けているクロフトを馬車の外に蹴り飛ばし、負傷している魔力の杖団員の腕を掴んで車外へと飛び降りる。テルマとニコレッタは声に素早く反応して一足先に外へと逃れていた。
落石は荷台へと直撃すると木片を飛ばしながら、呆気なく馬車を圧壊させた。
「全員生きてるな!? 馬は……」
興奮した馬の鳴き声に目をやると、綺麗に貨物部分だけ粉砕された荷馬車を置き去りにして、馬達は走り去って行くところだった。
「薄情者!!」
テルマが涙目で叫ぶが当然馬が戻って来ることなど無い。そのまま我先へと丘から姿を消した。
投石により荷馬車が粉砕されるという事態が起きたにも関わらず、周囲の人々は少しも気を止める様子もなく戦闘を続けていた。
外圧は人々の心を一つにすると言われているが、あながち間違いではなさそうだ。
「次弾装填完了!!」
慌しく装填をおこなっていた兵士が射手の肩を叩き、耳元で叫んだ。爆音が鳴り響く中で装填を確実に射手へと知らせるためだろう。
「発射ッぁあ」
短く確実に宣言した射手はレバーを引いた。狙い通りに放たれた砲弾だが、期待された効果を発揮することは無い。身体を左右に揺さぶるウンディーネの所為で、照準を崩されたのだ。寸前のところで砲弾は当たらず、後方の地面を深く掘り返した。
「装填を……」
「目の前だ。目の前にきた。間に合わない!!」
「た、退避っ」
作業員が言い終わる前に、丘陵が長い右手に振り払われた。丘の地面ごと削る様に機材や人員が根こそぎ取り込まれ、吹き飛ばされる。
「手が俺の手が!!」
「う、あ——あぁ——ッ」
空中から不規則な軌道で大砲、防具、人間が降り注ぎ、不運な人間は断末魔を上げることも出来ずに圧死した。
俺の側にも落下物が幾つも落ちてきた。頭上を見上げ左右に避ける。落下物の密集度は低い。注意さえ払えば十分避けられる範疇だった。
「近過ぎる。これじゃ撃てない」
射手の泣きそうな声が聞こえてきた。
知恵かそれとも本能か、長大な射程を持つ大砲の弱点である内側に入り込まれていた。俺の知る限りの情報では、この世界で大規模運用したことのない大砲だ。砲撃陣地を守る的確な防御線の築き方は、無数の試行錯誤と実戦を以て構築される概念と言える。とても現段階で再現出来るものではないだろうし、相手は規格外の化け物だ。
大砲は使用不可能、このまま戦うか、それとも——俺が逡巡する中、明確な命令が《魔力の杖》支隊長により下された。
「……散開させろ。密集すると一度にやられる。作業員は後退。これよりは白兵戦だ。数で押し潰せェ!!」
大砲を扱っていた魔力の杖の隊員は自前の武器を取り出すと、詠唱を開始した。
「魔法だけでアレに挑むの!?」
テルマが無謀だという色を含んだ声で、絶句する。そんなテルマに対し、諭すようにクロフトが答えた。
「アレの形状が不安定だね。もう一息だよ」
「……確かに、傷が治っていない」
細めた目でウンディーネもどきを見上げる。片腕は肘から先を喪失し、胴は不自然に肥大化した箇所と攻撃により消失した箇所の落差が目立つ。追い込まれたのはウンディーネも一緒だった。
「手だ。手が来る!!」
「避けろ——」
ウンディーネは散らばる団員を一人ずつ葬り去ろうとするが、全員が最低でも上級魔法が使えるような魔法使いだらけ。精霊もどきの動きに合わせ、魔法を巧みに使う。
ある魔法使いは、振り降ろされる拳の軌道をファイアボールで捻じ曲げる。またある魔法使いは、腕の動きに合わせファイアウォールを張り、関節部に攻撃を集中させた。
そんな魔法による戦闘に慣れた団員だが、それでも規格外の化け物により戦闘不能者や死亡者は止まらない。
「レイソンが——レイソンが班ごと喰われた!!」
「後方に回り込め、一度にはやられん」
必死に部隊を立て直そうとする団員だったが、それを遮るようにウンディーネもどきは行動を続ける。
本体によってすくい上げられた砲が幾人もの人を巻き込んで地面を転がる。まるで歪なボーリングの球のような勢いだ。
「伏せろっ」
正面に迫るのは大砲の砲身。その荷重は大きく当たれば即死は免れられない。前にいた兵士は話すのも躊躇う様な姿へと変わった。
「このままじゃ、全滅するぞ!?」
誰が言ったかは分からないが、この場にいる全員の気持ちを代弁した叫びが聞こえた。そんな中、視界の端でローブが揺れた。目を向ければ、そこにいたのは《魔力の杖》である支隊長エイグナスだ。
最初の指示以降黙り込んでいたエイグナスがゆっくりと動き出すと、杖を振りかざし、宣言するように言葉を叫ぶ。
「猛炎よ焼き尽くせ」
エイグナスが使用したのは火属性の中でも上級魔法に分類されるものだった。原理こそ単純だが、使いどころによっては重歩兵の1個小隊さえ、無力化させる威力を持つ魔法だ。
辺りの空気がウンディーネもどきを中心にするように集まり、足元から一気に燃え上がった。空気の渦が猛炎によりくっきりと肉眼でも確認できるほどだ。
「うぉお!?」
熱風が辺りに吹き注ぎ、肌を炙る。俺自身の目や口からですら水分が奪われ、乾いていく。
「離れろ。巻き込まれるぞ!!」
遠巻きに燃え盛る炎の渦を眺める。十数秒は経っただろうか、炎の渦が弱まり始め、溶けるように掻き消え、影が現れた。その光景に誰しも息を飲む。
「う、嘘だろ!?」
そこにいたのは巨大なままの精霊もどき。あの猛攻に耐えたのだ。焼け爛れた全身を震わせ、隻腕を振り回し、身体を崩壊から守る為に新しい命を取り込むために、全身が弾けるように動き始めた。
「ぎゃぁあああっ——」
団員の断末魔も長くは続かず、途切れた。何が起きたかは明確。文字通り喰われたのだ。
「動き出しやがった」
「まだ駄目なのか!?」
攻撃を物ともしないウンディーネに総崩れになり掛ける部隊だったが、一人の団員の言葉がそれを阻止した。
「待て、胸だ。胸を見ろ。核が露出してるぞ」
一人の団員が指差す先にはウンディーネの胸の中心では、どす黒い水晶のようなものが太陽の光により鈍く光っていた。
それだけ言えばこの場に居る者には十分だ。全身に向けられた攻撃は胸部だけに集中する。無論、ウンディーネも黙ってはいない。胸を庇うように胴部をくねらせ、片腕で自身をねらう敵を的確に葬り去っている。
数十と繰り出される攻撃の内、幾つかは胸の核に到達はした。だが、分離体とは違い本体の核は頑強、その一言に尽きる。
「くそ、分厚い。あれじゃ焼き切れない」
弓の射手が限界まで弦を引き、放った渾身の一撃も、腕や胴部の流体に阻まれ、肝心な核には到達しなかった。
「弓矢じゃ無理だ――」
「剣や槍じゃ届かないぞ。バリスタは無いのか!?」
「あんな重量物、展開する前に皆殺しだっての!!」
攻撃の手段が無いと攻めあぐね、討論していた団員達は迫る手により、四方に散らばった。
俺も張り手の様に繰り出された攻撃に対して、足を使い全力で回避する。後ろから鈍い衝撃が走り、辺りの地面が揺れた。振り向けば逃げ遅れた数人が潰され、もがき苦しんでいる。
精霊もどきの腕が咀嚼するようにうねると、取り込まれた哀れな兵士達が叫び声すら上げる暇も無く、掻き消えた。考えたくもないが、溶かして吸収したに違いない。
そうして消化しきれなかった衣服や装備類をガムや唾を吐くよう吐き出した。
「クソが!!」
三度、振り上げられた腕から背を向けて、懸命に走る。今度はなぎ払うような低い軌道で迫って来ている。地面に抱きつくように伏せた俺の直ぐ上部を隻腕が通過した。
口に入った土がじゃりじゃりと苦々しい。唾と共に土を吐き出す。投擲物も魔力も尽き、剣も届かない。追い込まれた状況に悪態を吐き、起き上がろうと地面に手をついた。
地面の硬い感触の代わりに、手から伝わって来たのは、柔らかい感触だ。
「なんだ……?」
目をやれば、黄金の杖にとまった不死鳥を描いた旗がそこにある。血で汚れてこそいるが、間違いなく《魔力の杖》を象徴する旗だ。
上質な布が使われ、手触りは良い。だが、重要なのはそこではない。俺が引かれたのはその旗に結び付けられた物――。
その旗が結びつけられたのは、細かい紋様に、装飾が施された槍だ。ミスリル合金製のそれは魔法使いが好む代物と言える。
無意識に笑みが零れた。
「いいもんがあるじゃないか」
槍に付いた邪魔な旗を足で踏みつけて固定し、両手で力一杯引っ張る。金属のひしゃげる感覚とぶちぶちと布の繊維が切れる音の後、リング状の固定部はもぎ取れた。
槍の柄を持ち、石突を地面へと突き立てる。見上げる先には満身創痍の化け物が猛威を振るっていた。距離で言えば40メートル余り、投げても槍は届くだろうが、接触までにはタイムラグがある。確実性は無い。必殺の位置まで近づく必要があった。
「近寄りたくないが……ああ、やるしかない。やるしかない!!」
自分を奮い立たせるように、自分に言い聞かせるように独り言を呟き、無数の魔法と荒れ狂う化け物目掛けて駆け出す。それに比例して距離はどんどんと近くなる。心臓は鳴り止まず、冷や汗が止まらない。射られた弓が空を切り、火球が地面を爆ぜさせる。
友軍の攻撃を避ける為に俯いたウンディーネもどきと一瞬目が合う。それでお互いが意図する事が伝わってしまった。
(まずい――)
片足を突き出し、重心を変え、体の体勢を傾ける。右腿が地面に接触するとそのまま体は滑った。
ウンディーネの飛び散った体液により、辺りの土は水分を多く含んでいる。スライディングするにはうってつけだ。
滑り通った俺の背後に重低音が響く。それは虫を叩く様に繰り出されたウンディーネもどきの手のひらだった。
まさに間一髪——心の中で吠えるが上手く逃げた事に安堵する暇は無かった。
「うっ」
押しつぶす様につきだされた腕を掻い潜った俺に待っていたのは、肘の打ち下ろし。最悪のタイミングだった。飛び込んだ先ではろくに避ける事もできない。無駄とは分かっていながらも、両手で体を庇い、少しでも耐えようとした時だ。
「炎弾よ敵を焼き尽くせ」
火属性魔法であるファイアーボールが肘にめり込むように直撃すると肘を上部へと押し返した。
「助かった!!」
偶然か意図した物かは分からないが、最高のタイミングで援護が入った。
「早くっ!!」
そう指示を出すのは、馬車の中で介抱した《魔力の杖》の団員のものだった。素早く飛び起きた俺は、二歩、三歩と踏み込み助走を付ける。手から伝わるずっしりとした感触は何時も通りの感覚だ。
短く息を吐き、右手を大きく引き、助走の勢いを槍に乗せる。《異界の投擲術》を発動させた俺の腕はしなりながらも、押し負けず槍を押し出した。
「くぅたァばれぇええええ――!!」
風切り音を伴い槍は飛翔する。吸い込まれるように核へと一直線に飛来した槍は、一瞬のせめぎ合いの後に甲高い音を立て、核を打ち砕いた。巨大な鼓動の後に訪れたのは耳を突くような金切り音。
「ア、アアあ、アアァッ、ア——アアアァアッ!!」
鼓膜を揺るがす絶叫と共に辺りには破片と体液が降り注ぐ。形状を維持できなくなった精霊もどきが内外から崩壊を始めたのだ。
「あ——ァあ!? アァアあ――ッ」
一際高い断末魔を最後に精霊もどきはただの水へと変化した。頭上からはスコールの様な大雨が降り注ぎ、肌を叩く。だが、それも長くは続かなかった。
先ほどの騒乱が夢幻の様に掻き消え、打って変わったかのような静寂。その均衡を破ったのは《魔力の杖》支隊長――
「化け物は、化け物は死んだ。我らの勝利だ!!」
「「「うぉあああああああ!!」」」
エイグナスの勝どきの後に続き、全ての人間が体の底から叫んだ。
「勝った。勝ったのか。アレに」
現実感が無い。ジェル状のあれは明確な死体すら残さずに消えてしまったからだろう。
「はは、終わった終わったぁー」
腰が抜けたようにテルマは地面へとへたり込み、脱力した。俺も座り込もうか悩んでいるときに声が聞える。
「冒険者」
声の主は戦いを指揮した《魔力の杖》支隊長エイグナスのものだった。
「見事な腕だ、助かったよ。後は我々の仕事だ。休んでくれ」
無言で頷いた俺は、ぼんやりと後処理の様子を見る。負傷者の治療、残骸の撤去、伝令が忙しなく駆け回っていた。
終わったという実感が沸いてきた瞬間、体が見えない何かにのしかかられる様に重くなった。目眩や動悸がいっぺんに降り掛かり、このまま立っているのも辛いので、先ほどまで乗っていた馬車だったものへと腰を掛けた。
「なんとか生き残ったわね」
振り向かなくても誰かは俺にはわかった。ニコレッタだろう。続いて現れた者も分かる。
「今回はとんだ災難だったね。人はたくさん死んでしまうし、同族とアレに会えたのだけは救いだ」
化け物を倒しても、クロフトの不健康そうな顔は治っていない。
「相変わらず、不健康そうな顔だな」
思った事がぽろりと漏れたが、クロフトは気にもせずに何時もの調子だ。
「不思議な事を言うね。僕は健康だよ? それはともかく、そうだね。シンドウ君には世話になったし、これをあげよう」
半裸のクロフトがいつの間にか、どこから取り出したのか謎だが、表紙を分厚い革でなめて作ったメモ帳を手にしていた。
「なんだ、これは?」
傷だらけの腕を伸ばし本を受け取る。ぱらぱらとページを捲り内容を飛ばし、飛ばしで見ていく。歴史的な年表、事件、生物の絵、特徴など様々なことが書き込まれている。その中には俺が必要とすることも情報も記載されていた。
「……いいのか?」
「ああ。構わないよ。僕には必要ない。何せ、もう一冊頭の中に入っているからね」
内容を全て記憶してるか、それとも本当に本その物が頭の中に入っているのか……。常人では後者は有り得ないが、クロフトの体ならば後者も有り得そうだ。
「ありがとう」
ここは素直に礼を言って受け取った。
「せっかく生き残ったんだからね。“この世界”を楽しんでくれ。その命が尽き果てるまで」
踵を返してどこかに去ろうとするクロフトをニコレッタが止めた。
「ちょっと待って、私の体は!?」
「うん? 治らないよ。そもそもヌルドゥルクの器官を体に取り込んだんだから、君の体は正常だ。君の言う治すというのは再生した君の腹部を切り裂いて、ヌルドゥルクの器官を取り出すことかい? あまりお勧めはしないよ。成功例は君しかいないし、すっかり適合した器官を取り外したら、いったいどんな副作用がでてくるか分からないね。寧ろ、何が不満なんだい。膂力と再生能力が跳ね上がって腕が増えたのだから、メリットしかない」
ニコニコ顔のクロフトとは対照的に、ニコレッタの顔は暗い。
「あー、どうしてこうなるのよ」
認めたくない説明を聞いたニコレッタは視線を落として渋々諦めたようだ。
「それじゃ、僕はこの辺で」
クロフトはゆっくりとした足取りで歩き出す。そうして騒乱の中に溶けるように消えていった。
ふと、目を横に向けると話を聞いていたテルマが「しょ、触手……」と呟き、じりじりとニコレッタから距離を取っていた。ニコレッタが誤魔化そうとしているが、うまくいくかは微妙だろう。
「君たちも生きていたか」
土埃や煤に汚れていたが、声の主は研究員ながら地下の迷宮を共に戦い抜いたホルムスのものだった。周りには指示を待つ部下であろう研究員に囲まれている。
「そっちも怪我は無さそうだけど……大丈夫?」
疲れが一周したのか、どこか達観したような表情でホルムスは答えた。
「疲れただけだ。直ぐにでも家に帰りたいが――この様子じゃ無理そうだ」
そう語るホルムスの視線の先は半壊した大砲に注がれている。無事な大砲もあるが、大半はなぎ倒されるか、どこかしらに破損が生じていた。あれらを解体して、運び出し、修理する手間は、俺の想像を絶するものだろう。
「ゆっくりとお礼を言う暇が無くて申し訳なかった。シンドウ達が来てくれなかったら今頃瓦礫の下かアルカストラネの腹の中だ」
「逆にホルムスいなかったら、私達も死んでいたかもしれないわ。感謝してる」
同意するように俺はうなづいた。魔法が尽きかけていたあの時には、切り札とも呼び難い《暴食》しか残っていなかったのだ。あの時、ホルムスに出会えなかったら無事にここにいるかは微妙なところだろう。
「そう言って貰えると嬉しいよ。積もる話もあるが……作業に戻る。仕事が山積みなんだ。文字通り」
同情の念を送り、俺は深くため息を吐いた。本当なら何かしらの作業を手伝うべきかもしれないが、幾度の命の危機のせいで、心身ともに疲れ果てた。後はギルドハウスに報告して、後は仮宿でゆっくりと惰眠を貪るべきだろう。
「2人はどうする? 俺も行くけど」
顔を見合わせたニコレッタとテルマは頷き合い意思の確認をすると、ニコレッタが代弁を行なった。
「私たちも行くわ。こんなところに何時までもいると、今度は何が起こるか分からないし」
喧騒の中、つい昨日まであったはずの建物を一瞥し、くたびれた足に無理を言わせて丘の上から街へと歩き始める。既にゆっくりとだが、日は暮れようとしていた。
【名前】シンドウ・ジロウ
【種族】異界の人間
【レベル】49
【職業】魔法剣士
【スキル】異界の投擲術、異界の治癒力、暴食、運命を喰らう者、上級片手剣B-、上級両手剣B、上級火属性魔法B、中級水属性魔法A、 奇襲、共通言語、生存本能
【属性】火、水
【加護】なし
どうもトルトネンです
長らくお待たせしました。