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悪魔の左腕  作者: 770
95/149

雷の山の出会い

(^^)/

しばらくして、小屋の扉が再び軋む音を立てた。

姿を現したのは、濃い青の甲冑を纏い、全身に電気のオーラをまとった巨躯の悪魔――ヴォルト。


ヴォルト「……待たせたな」


雷鳴のような声が湖畔に響き渡る。

カイは思わず背筋を伸ばした。


ヴォルトは湖を背に、カイから距離を置いて立つ。

その表情は厳しくも、どこか自嘲を含んでいるように見えた。


ヴォルト「ここまでだ。……私には“呪い”がかかっている。この距離以上は近づかない方がいい」

一拍置いて、淡く笑みを浮かべる。

ヴォルト「……まぁ、貴方の魔力なら、もはや関係ないかもしれないが」


カイは首をかしげながら答えた。


カイ「呪い……? いや、まぁそれはともかく、話があって来たんだ」


ヴォルト「……話?」


カイ「ああ。俺たち……悪魔の部位を集めてるんだ。どこかに部位があるって情報を知らないかなって思って」


ヴォルトの瞳に一瞬、鋭い光が宿る。


ヴォルト「……なるほど。つまり私の部位を奪いに来たということか」


カイ「だから違うって!」

慌てて両手を振る。

カイ「俺はそういうつもりじゃない。あんたは……なんていうか、そういう“奪い合うだけのやつ”には見えないんだ。ただ、もし情報があればと思って」


ヴォルトはしばし沈黙し、湖面に視線を落とした。

静かな水面に、雷雲が映り込む。


ヴォルト「……本当か?」


カイ「本当だよ」


ヴォルト「……そうか。だが、済まない。私はそういう情報には疎い。ずっと……一人でこの地の争いを収めることだけをしてきたからな」


その声には、孤独と疲労がにじんでいた。


カイは少し残念そうに肩をすくめる。


カイ「そっか……。わかった。ありがとな! それだけ聞ければ十分だ。じゃあ、俺はもう戻るよ!」


踵を返そうとした瞬間――


ヴォルト「……待て」


カイは振り向く。


カイ「?」


ヴォルト「貴方……風属性だな?」


そう言って、腰の鞘から一本の捻じれたナイフを取り出した。

刃は薄く、風を裂くように揺らめき、微かな電気を帯びていた。


ヴォルト「これは……風を操る者にこそ相応しい武器だ。ただし、命を削る特性を持つ。軽々しく振るうな。どうしても……どうしても命を懸けなければならない時だけに使え」


カイは思わず息を呑む。


カイ「命がけでも戦わなきゃいけない時……そんなのごめんだけどな!」

にかっと笑ってナイフを受け取る。

カイ「ありがとう。大事にするよ!」


ヴォルトは返事をせず、ただ湖を見つめ続けた。

遠ざかるカイの背を、無言で見送りながら――その瞳に、一瞬だけ痛ましげな影を落とした。


雷鳴が遠くで轟く。

その音に紛れて、ヴォルトの低い吐息が風に消えた。

(^^)/

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