雷の山の出会い
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しばらくして、小屋の扉が再び軋む音を立てた。
姿を現したのは、濃い青の甲冑を纏い、全身に電気のオーラをまとった巨躯の悪魔――ヴォルト。
ヴォルト「……待たせたな」
雷鳴のような声が湖畔に響き渡る。
カイは思わず背筋を伸ばした。
ヴォルトは湖を背に、カイから距離を置いて立つ。
その表情は厳しくも、どこか自嘲を含んでいるように見えた。
ヴォルト「ここまでだ。……私には“呪い”がかかっている。この距離以上は近づかない方がいい」
一拍置いて、淡く笑みを浮かべる。
ヴォルト「……まぁ、貴方の魔力なら、もはや関係ないかもしれないが」
カイは首をかしげながら答えた。
カイ「呪い……? いや、まぁそれはともかく、話があって来たんだ」
ヴォルト「……話?」
カイ「ああ。俺たち……悪魔の部位を集めてるんだ。どこかに部位があるって情報を知らないかなって思って」
ヴォルトの瞳に一瞬、鋭い光が宿る。
ヴォルト「……なるほど。つまり私の部位を奪いに来たということか」
カイ「だから違うって!」
慌てて両手を振る。
カイ「俺はそういうつもりじゃない。あんたは……なんていうか、そういう“奪い合うだけのやつ”には見えないんだ。ただ、もし情報があればと思って」
ヴォルトはしばし沈黙し、湖面に視線を落とした。
静かな水面に、雷雲が映り込む。
ヴォルト「……本当か?」
カイ「本当だよ」
ヴォルト「……そうか。だが、済まない。私はそういう情報には疎い。ずっと……一人でこの地の争いを収めることだけをしてきたからな」
その声には、孤独と疲労がにじんでいた。
カイは少し残念そうに肩をすくめる。
カイ「そっか……。わかった。ありがとな! それだけ聞ければ十分だ。じゃあ、俺はもう戻るよ!」
踵を返そうとした瞬間――
ヴォルト「……待て」
カイは振り向く。
カイ「?」
ヴォルト「貴方……風属性だな?」
そう言って、腰の鞘から一本の捻じれたナイフを取り出した。
刃は薄く、風を裂くように揺らめき、微かな電気を帯びていた。
ヴォルト「これは……風を操る者にこそ相応しい武器だ。ただし、命を削る特性を持つ。軽々しく振るうな。どうしても……どうしても命を懸けなければならない時だけに使え」
カイは思わず息を呑む。
カイ「命がけでも戦わなきゃいけない時……そんなのごめんだけどな!」
にかっと笑ってナイフを受け取る。
カイ「ありがとう。大事にするよ!」
ヴォルトは返事をせず、ただ湖を見つめ続けた。
遠ざかるカイの背を、無言で見送りながら――その瞳に、一瞬だけ痛ましげな影を落とした。
雷鳴が遠くで轟く。
その音に紛れて、ヴォルトの低い吐息が風に消えた。
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