雷の山を越えて
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ごつごつとした岩山を登るカイの息は、次第に荒くなっていた。
靴底が削れ、岩に爪を立てるようにして這い上がる。
カイ「なかなかの傾斜……だな」
額の汗をぬぐった瞬間、背中の羽が不機嫌そうに声をあげる。
羽『飛んでいきゃいいじゃねぇか、ヒヒ』
左腕『無駄話はせずに、さっさと登りなさい』
カイ「……ったく、どっちも口が悪いんだよな」
ーーー
しばしの沈黙。
重い足取りで進んでいたカイは、ふと右腕を見やった。
カイ「右腕はあんま喋らないんだな?」
右腕『……早く歩け』
短い、だが鋭い返答。
その声音に逆らう気も起きず、カイは肩をすくめて岩をつかむ。
カイ「わかったよ、歩くよ……」
ーーー
山風が吹き抜ける中、カイは口を開いた。
カイ「ところでさ……」
言葉を探すように足を止め、拳を握る。
カイ「お前たちのパーツを揃えて……どうやったら、エリシアを救えるんだ?」
羽がくつくつと笑う。
羽『ヒヒヒヒ……おめぇ、今さら何言ってんだ』
羽『そんなことぁな――』
左腕が羽の言葉を遮った。
左腕『まだ知る必要はありません。まずは目の前のことに集中しなさい』
カイ「……そうか」
唇を噛み、視線を前へ戻す。
ーーー
二日がかりで険しい山を越えた。
足は棒のようになり、背中は汗で濡れきっている。
カイ「……はぁ、はぁ……ここ、か……」
目の前に広がるのは、荒涼とした山岳には似つかわしくない光景だった。
一面に広がる緑の野原、鏡のように澄んだ湖。
その湖畔に、ぽつんと小さな木造の小屋が建っていた。
カイ「すげぇ……のどかだなぁ。なんか、俺の村を思い出すよ」
湖の水面に映る空は澄み渡り、雲の隙間から光が差し込む。
その静けさを破るように――
キィ……。
小屋の扉が開き、低く響く声が野に広がった。
ヴォルト「……何の用だ、人間? ここでは戦いたくない」
雷鳴を孕んだような声。
その瞬間、全身の毛穴が総立ちになる。
カイ「いやいやいや! 戦いたくて来たわけじゃないんだ。ちょっと話を聞きたくてさ」
ヴォルト「……ならば、そこで待て」
湖を見下ろす崖の前を指し示し、ヴォルトは一度扉を閉めた。
ヴォルト「すぐに行く」
小屋の奥に消えていく気配。
澄んだ湖を背に、カイは大きく息をつきながら、その場に腰を下ろした。
カイ「……さて、どうなることやら」
吹き下ろす山風が、嵐の前触れのように湖面を揺らしていた。
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