カイの試練
(^^)/
暗く湿った玉座の間。
ゾンビの群れを指先ひとつで操る支配者が、重厚な椅子からゆっくりと立ち上がる。
土の悪魔――ドミナス。その眼光は濁りきっているが、そこに宿る圧は重苦しく、空気ごと押し潰してくるかのようだった。
羽「ヒヒ……カイ、今の見たか?」
カイ「なんだよ……?」
左腕「……いましたね。なぜこのような輩に……」
カイ「おい、どういう意味だよ?」
羽が喉を鳴らすように笑う。
羽「よく感じろ……あいつの腹の奥だ。もう一本、俺の“腕”があるぜぇ。ヒヒヒ……返してもらわなきゃなぁ?」
ぞわり、とカイの背筋を冷たいものが走る。
ドミナスの腹部、ぼんやりと紫色の光が脈打っていた。
ドミナス「ほう……人間にしては上等な部位を所持しているではないか」
カイ「そりゃどーも! だがそいつももらうぜ!」
勢いよく地を蹴り、風を纏った斬撃がドミナスへと迫る。
しかし――。
カイ「はっ!」
刃が肉を裂く感触。続けざまに二撃、三撃と畳みかける。
確かに当たっているはずだ。ドミナスの巨体が後退し、血が飛び散る……。
カイ「いける! これなら――!」
その時だった。
「……せ!」
誰かの声が聞こえた。遠く、霞のように。
カイ「?? なんだ今の……?」
羽「目を覚ませぇ! ヒヒ!」
カイ「!?」
目の前の光景が、霧が晴れるように消えていく。
血を流していたはずのドミナスは、そこに“無傷”で立っていた。
全てが幻覚。いや、違う。自分の攻撃は、そもそも届いてすらいなかった。
カイ「……っ!」
次の瞬間。
ザシュン――。
冷たい痛みが左半身を走り抜けた。
視線を落とすと、自分の左腕が――肘から先が、床に転がっていた。
カイ「……っぐ……あぁぁぁっ!!」
絶叫が玉座の間に木霊する。
返り血も浴びていないドミナスは、ただ淡々とカイを見下ろしていた。
ドミナス「勘違いするな、小僧。お前が“攻めていた”のではない。私が“遊んでやっていた”のだ」
羽「ヒヒ……油断したな、カイ……!」
カイは歯を食いしばり、額から汗を流しながら、残された右手で剣を握り直した。
視界が赤く滲む中、彼の戦いは――本当の意味で、これから始まろうとしていた。
(^^)/




