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悪魔の左腕  作者: 770
78/149

カイの試練

(^^)/

暗く湿った玉座の間。

ゾンビの群れを指先ひとつで操る支配者が、重厚な椅子からゆっくりと立ち上がる。

土の悪魔――ドミナス。その眼光は濁りきっているが、そこに宿る圧は重苦しく、空気ごと押し潰してくるかのようだった。


羽「ヒヒ……カイ、今の見たか?」

カイ「なんだよ……?」

左腕「……いましたね。なぜこのような輩に……」

カイ「おい、どういう意味だよ?」


羽が喉を鳴らすように笑う。

羽「よく感じろ……あいつの腹の奥だ。もう一本、俺の“腕”があるぜぇ。ヒヒヒ……返してもらわなきゃなぁ?」


ぞわり、とカイの背筋を冷たいものが走る。

ドミナスの腹部、ぼんやりと紫色の光が脈打っていた。


ドミナス「ほう……人間にしては上等な部位を所持しているではないか」

カイ「そりゃどーも! だがそいつももらうぜ!」


勢いよく地を蹴り、風を纏った斬撃がドミナスへと迫る。

しかし――。


カイ「はっ!」

刃が肉を裂く感触。続けざまに二撃、三撃と畳みかける。

確かに当たっているはずだ。ドミナスの巨体が後退し、血が飛び散る……。


カイ「いける! これなら――!」


その時だった。


「……せ!」


誰かの声が聞こえた。遠く、霞のように。

カイ「?? なんだ今の……?」


羽「目を覚ませぇ! ヒヒ!」

カイ「!?」


目の前の光景が、霧が晴れるように消えていく。

血を流していたはずのドミナスは、そこに“無傷”で立っていた。

全てが幻覚。いや、違う。自分の攻撃は、そもそも届いてすらいなかった。


カイ「……っ!」


次の瞬間。


ザシュン――。


冷たい痛みが左半身を走り抜けた。

視線を落とすと、自分の左腕が――肘から先が、床に転がっていた。


カイ「……っぐ……あぁぁぁっ!!」


絶叫が玉座の間に木霊する。

返り血も浴びていないドミナスは、ただ淡々とカイを見下ろしていた。


ドミナス「勘違いするな、小僧。お前が“攻めていた”のではない。私が“遊んでやっていた”のだ」


羽「ヒヒ……油断したな、カイ……!」


カイは歯を食いしばり、額から汗を流しながら、残された右手で剣を握り直した。

視界が赤く滲む中、彼の戦いは――本当の意味で、これから始まろうとしていた。

(^^)/

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