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悪魔の左腕  作者: 770
72/149

女王の賭け、騎士の誇り

(^^)/

黒い霧の中から現れた女——蛇髪を揺らし、鉄扇を手にした艶やかな姿。

北の大悪魔、シュリーデ・ネレイア。


エリシアは思わず後ずさった。

彼女から放たれる魔力は冷たくも滑らかで、けれどその奥に底知れぬ圧力を孕んでいた。


シュリーデ「ふふ……私のことは知ってるのに、私との戦い方は知らないのね」

ヴァルター「黙れ……! 貴様はここで散るのだ!」


ヴァルターが剣を掲げると同時に、周囲にいたゾンビ騎士の数が一気に増殖する。

百、二百……瞬く間に千を超え、やがて一万の軍勢となってエリシアとシュリーデを囲んだ。


エリシア「そ、そんな……!」

ヴァルター「これが我が忠義! 数の壁こそ屍の強みだ!」


だがシュリーデは全く動じなかった。むしろ楽しげに扇をひらひらと動かす。


シュリーデ「賭け事の基本、数が増えれば増えるほど勝率は下がるのよ?」


彼女が指を鳴らすと、空に五つの漆黒のダイスが浮かび上がった。

同じものが騎士たちとヴァルターの頭上にも出現する。


シュリーデ「《ファイブダイス》」


ごろごろと回転し、数字が並ぶ。

シュリーデの目の前に現れた目は——「1・1・1・1・1」。


シュリーデ「ふふっ♡ 一以外は全部ハズレよ」


騎士たちの頭上を見れば、出た数字はばらばら。

ある者は「2・4・6・3・5」、ある者は「6・6・5・2・3」。

ヴァルターの出目も「1・1・1・3・5」と中途半端だった。


シュリーデはくるりと扇を回し、背後のエリシアにウィンクを飛ばす。


シュリーデ「よーく見てて。ギャンブルは、外した方が負けなの」


ぱちん、と指を鳴らした。

瞬間、ゾンビ軍勢全体に異変が走る。

ある者は全身から炎を噴き出し、ある者は雷に貫かれ、またある者は凍りつき、さらに別の者は体内を毒に蝕まれて崩れ落ちていった。


絶叫とともに、数千の屍兵が一斉に地に伏した。


エリシア「……! たった一振りで……!」


ヴァルターは膝をつきながらも、大剣を杖のように支え立ち上がる。

その眼には未だ忠義の炎が宿っていた。


ヴァルター「……はぁ、はぁ……これしきで……屍の忠誠は折れぬ……!」


だが、その瞬間。

鋭い金属音が響き、ヴァルターの首が宙を舞った。


鉄扇が飛んでいた。

いつ投げられたのか誰も見えなかった。ただ結果だけが残っていた。


シュリーデ「駄目じゃない。ギャンブルの掟は一つ。敗者は地に伏せ、勝者は見下ろす。それだけのことよ」


彼女は落ちた首を見下ろし、あっさりと扇を畳むと、エリシアに背を向けた。


エリシア「……あなた……どうして助けてくれたの?」


シュリーデ「さぁ、どうしてかしら? アルガスとセレナの弟子を死なせたら、賭けとしてつまらないでしょ?さ、ドミナスのところへ向かいましょ」


意味深な微笑みを残し、シュリーデは霧となって消えた。


エリシアは膝をつき、深く息を吐いた。

残されたのは崩れ落ちる屍兵の山と、切り裂かれた戦場の静寂だけだった。

(^^)/

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