草原に響く笑い声
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ー草原の道ー
街を出て二日目。
カイとエリシア、そして新しく仲間に加わったリーディは、広がる丘陵を歩いていた。
リーディ「ねぇ、カイ。さっきから草の匂いが濃くなってる……なんか、獲物の匂いも混じってるよ」
カイ「獲物?」
リーディの鼻がひくひくと動く。
次の瞬間、茂みから牙をむいた獣型の魔物が飛び出してきた。
カイ「エリシア、下がれ!」
カイは短剣を抜き、魔物の突進を受け止めようとする。だが、先に飛び出したのはリーディだった。
リーディ「ボクに任せて!」
土が隆起し、魔物の足元を絡めとる。リーディが放った土魔法だ。驚く間もなく、リーディは素早く背後に回り込み、拾った石で魔物の側頭部を叩きつけた。
魔物はうめき声をあげ、その場に崩れ落ちる。
エリシア「すごい……! リーディ、本当に戦えるのね!」
カイ「ただの子供じゃなかったか。いいセンスしてるじゃねぇか」
リーディは照れ笑いを浮かべた。
リーディ「えへへ……奴隷だったとき、魔物相手に生き延びるしかなかったからさ。戦い方は自然に覚えたんだ」
カイは無言で頷き、短剣を納めた。
ー野営の夜ー
その日の夕方、三人は森の中で野営をすることにした。
リーディ「ちょっと待ってて。今すぐ寝床を作るから!」
両手を土に触れ、魔力を流し込む。すると、地面が隆起し、丸いかまくらのような小屋が形作られていく。
エリシア「わぁ……すごい。ちゃんと屋根も壁もある!」
リーディは次に森の中へ走り出した。少しして戻ってきたとき、両手には木の実やきのこ、さらに小さな野兎を抱えていた。
リーディ「晩ごはん、これでいい?」
カイ「……おいおい、野営なのにずいぶん豪華だな」
エリシア「本当に器用なのね、リーディ。こんなに立派な食事ができるなら、旅も安心だわ」
焚き火の上で肉が焼ける匂いが漂う。三人は笑い合いながら、簡素だが温かい食卓を囲んだ。
ー川辺ー
食後、近くの小川で水浴びをすることになった。
カイは火のそばで待機し、エリシアとリーディが川に入る。
エリシア「リーディ……やっぱり女の子にしか見えないわね。黒髪で、青い瞳……」
リーディ「えっ、ボク男だよ!? でも……昔、大怪我したときにこの“悪魔の目”を移植されたんだ」
そう言って赤い右目を指さす。水面に浮かぶその瞳は妖しく輝いていた。
リーディ「父さんは狼の獣人で、母さんは狐なんだ。でも二人とも死んじゃって……耳のイヤリングだけが形見なんだ。これ、呪いがかかってるから外せないけど……ボクにとっては宝物なんだ」
エリシアはそっと微笑み、リーディの髪を撫でた。
エリシア「……とても大切にしているのね。リーディは、きっと強くなれるわ」
リーディは照れたように顔を背け、水をぱしゃっと跳ねかける。
リーディ「そっちこそ、あんまり無理するなよ! なんか、時々苦しそうだから」
エリシアの胸元を一瞬見てしまい、慌てて視線を逸らす。
エリシア「……ありがと」
二人の笑い声が川に広がり、夜の森に溶けていった。
ー夜更けー
焚き火を囲んで、三人は横になる。
カイ「……変なもんだな。こんな賑やかな旅になるなんて思ってなかった」
リーディ「ボクもさ。自由って、こんなに楽しいんだな」
エリシア「ふふ……これからが本当の冒険の始まりね」
星々が輝く夜空の下、三人の旅路は静かに、しかし確かに歩み出していた。
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