荒野の果てに光る瞳
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ー大都市アーヴェント到着ー
門をくぐった瞬間、カイとエリシアの目に飛び込んできたのは、色とりどりの屋台と石畳を行き交う人々の活気だった。
カイ「うおっ……すげぇな。家が何層も重なってる」
エリシア「ねぇ見て、あそこ! 絹のドレスよ。こんなに華やかなの、生まれて初めて……!」
農村育ちの二人にとって、城塞都市の光景はまるで別世界。
焼きたてのパンの匂い、商人の呼び声、子どもたちの笑い声。ほんの束の間だけ、血と炎の夜を忘れさせてくれるほどに。
ふと、人だかりの奥に檻が見えた。鉄格子の中で膝を抱える少年――獣人の耳を持つが、右目には赤黒い魔紋が刻まれていた。
リーディ(か細い声)「……お腹、すいた……」
思わずカイは腰の袋から干し肉を取り出す。
カイ「ほら、食え。腹減ってんだろ?」
檻の隙間から差し出すと、少年の目がぱっと輝いた。だがその瞬間――
奴隷商人「こらァッ! 勝手に商品に餌を与えるんじゃねえ!!」
鞭が振り下ろされる。
カイ「……商品、だと?」
奴隷商人「そうだ。こいつは〈悪魔の目〉持ちだ。珍しい見世物として売り飛ばす予定よ」
怒りで拳を震わせるカイ。だが、背後からエリシアが小さく肩に触れた。
エリシア「カイ……ここで暴れたら、街の警備兵が来ちゃう」
カイ「……チッ」
睨みつけながらも、カイは無理やり背を向けた。
ー夜・宿屋ー
温かいシチューが運ばれる。だが、カイの表情は険しいままだった。
カイ「……見世物なんて、冗談じゃねぇ」
エリシア「私だって悔しい。でも今は……」
その時だった。外から悲鳴と爆音が響く。
宿屋の客「わあああ! 悪魔だ!!」
二人は外に飛び出した。
通りには三体の悪魔が暴れ、人々を蹂躙していた。
視線の先、奴隷商人も悪魔に追い詰められている。檻の横で腰を抜かし、必死に助けを求めていた。
奴隷商人「た、助けてくれぇ! このガキのせいだ、目が狙われてるんだ!」
悪魔の赤い瞳は確かにリーディを捉えていた。
カイ「……取引だ」
奴隷商人「な、なんだと!?」
カイ「助けてやってもいいが、こいつはもらっていくぜ」
奴隷商人「な、なんでもいいから助けろォ!!」
カイは腰の短剣を抜き、背から黒き羽が広がる。
羽の声『ヒヒヒ……血の匂いだな、相棒!』
暴風が吹き荒れ、閃光のような一撃。二匹の悪魔が倒れ、残る一体はエリシアの光に焼かれた。
檻の鍵を斬り落とすカイ。
カイ「よし、お前は自由だ」
リーディは一瞬、呆然とした顔をし、そして小さな声で――
リーディ「……オレも、ついて行っていいかな? お前ら、冒険者だろ?」
エリシア「もちろん。君の居場所は、ここにあるわ」
カイ「決まりだな。ようこそ――俺たちの旅へ」
夜空にまだ煙が残っていた。
だが、その下で三人は確かに繋がったのだった。
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