さよなら
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――魔王との戦いを終え、カイたちは北の街へと戻ってきた。
久しぶりの安堵、穏やかな風。
通りに笑い声が戻り、人々が英雄たちを称える。
イグニス「やっぱこの街はいいなぁ!」
リーディ「なんか……やっと終わったんだって実感するね」
DC「ふん、まだ後処理が山ほどあるけどね」
シュリーデ「ま、まずはゆっくり休みましょ♡」
そんな中、エリシアが少し足を止める。
エリシア「……みんな、ごめん。ちょっと……気分が……」
カイ「え?おい、どうした――」
言葉が終わる前に、エリシアが膝をつく。
口元から赤い雫がこぼれ、石畳を染めた。
カイ「エリシア!!」
イグニス「おいっ、しっかりしろ!!」
ジン「……脈が弱い、魔力の流れが乱れてる」
DC「早く診せるわよ、魔術師の館へ!」
――その後、老賢エルダルによる診断が下された。
エルダル「……残念ながら、この娘は“瘴気”に侵されておる」
カイ「瘴気だと!?でも、戦いのあとすぐに回復魔法を……」
エルダル「普通の傷ではない。瘴気が普通の人間に適応することはない……瘴気が彼女の魔力を汚染している」
DC「……つまり?」
エルダル「このまま魔界にいれば、数日のうちに命を落とす」
沈黙が落ちる。
誰も何も言えなかった。
カイ「エリシア.....帰るんだ....」
DC「そうね....その方がいいわ」
エリシア「……」
リーディ「でも……帰ったら、僕たちとは……」
エリシア「……うん、私……人間界に帰るね」
エリシア「ここにいたら、みんなに迷惑かけちゃうし」
静かに笑うエリシアの頬を、涙が伝った。
――夜。
港の外れ。薄明かりの月が湖面を照らす。
転送陣の光が静かに揺らいでいた。
カイ「……元気でな......」
エリシア「うん」
ジン「……早くいけ....」
エリシア「ジンこそ、もっと優しくしてよ」
ジン「……悪かったな」
イグニス「なぁ、帰ったらちゃんと飯食えよ!野菜もだぞ!」
エリシア「ふふっ……うん、約束する」
リーディ「エリシア……また、会えるよね?」
エリシア「会えるよ。信じてれば、きっと」
DC「……あんたがいなくなると、静かになるわね」
エリシア「DC……ありがとう。あなたの魔法、いつもすごく心強かった」
DC「……泣かせないでよ」
シュリーデ「お別れの言葉なんていらないわ。また遊びにきなさいな♡」
エリシア「うん……必ず」
そして最後に、カイの前に立つ。
エリシア「カイ……本当にありがとう」
カイ「……俺、ずっと一緒にいたかった」
エリシア「私も。……でもね、もう戦わなくていいんだ」
カイ「バカやろう……」
エリシア「ねぇ、カイ。人間界に戻ったら伝えるね。『みんな、ちゃんと生きてた』って」
カイ「……あぁ、約束だ」
二人は見つめ合う。
言葉にならない想いが、夜の風に溶けていく。
エリシア「……じゃあ、さよなら」
転送陣の光が強くなり、彼女の姿が淡く滲む。
カイ「――エリシアぁぁぁぁ!!」
手を伸ばすが、その手は光をすり抜けた。
そして、光が消える。
静まり返る夜。
リーディがしゃくり上げながら泣き、
DCが涙を袖で拭う。
シュリーデはただ黙って空を見上げ、
ジンは拳を握りしめていた。
カイだけが、誰よりも長く、その光が消えた空を見つめていた。
頬を伝う涙が止まらない。
――その夜、誰も笑わなかった。
そして、誰もが気づいていた。
エリシアが残していった“温もり”が、もう二度とここに戻らないことを。
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