運命を喰らう刃
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結界の中に響く甘美な旋律。
セラヴィナが目を細めながら、歌声に呪詛を乗せる。
セラヴィナ「ふふ……この歌を聴いた者は等しく死に至る……♪」
空気そのものが黒い揺らぎを帯び、カイの耳奥に鋭い痛みが走る。
カイ「っ……耳が……!」
二人はシュリーデが展開した水のドームに包まれた。
波紋のように震える水の壁が、外の歌声を遮る。
シュリーデ「音で来る魔法の対抗策はね――」
カイ「……うん」
シュリーデ「もっと大きな音でかき消しちゃえばいいの!」
カイ「は?マジで言ってんのか!?」
シュリーデ「大マジよ!でも、それだけじゃ彼女は倒せない」
カイ「じゃあ他に何が必要なんだ?」
シュリーデはわずかに視線を逸らし、唇を噛んだ。
シュリーデ「……運、よ」
カイ「……運か……よし!……って運なのか!?」
シュリーデ「これも大マジ。彼女は”絶対に低確率を引く魔術”を持ってるの。要するに、外れクジを絶対に引く女」
カイ「……つまり、めちゃくちゃ運が悪いってことか?」
シュリーデ「いいえ……良くも悪くも、”必ず少数派を引く”。それが彼女の絶対性。だから普通なら絶対死んでる場面でも死なないの」
カイ「……で、お前が一緒にいる状態だと、少数派は?」
シュリーデ「私に勝つ確率が少数派……つまり、私に勝っちゃう」
カイ「負け確イベントじゃねぇか!!」
シュリーデ「仕方ないでしょ!セラヴィナが復活してるなんて誰も思わなかったんだから!」
セラヴィナ「あなたたちぃ~、いつまでおしゃべりしてるのかしら~?♪」
甘美な声と共に即死の波動が押し寄せる。
シュリーデが杖を振り上げた。
シュリーデ「―― 大潮衝破!!」
水のドームが崩れ、轟音を立てて津波が巻き起こる。
その爆音がセラヴィナの歌声をかき消し、空気が震えた。
カイ「うおぉぉ!!―― 疾風斬閃!!」
風を纏った斬撃が光速に近い速さで飛び、セラヴィナを狙う。
シュリーデ「今よ!―― 運命の千金!!」
空から無数の金貨が降り注ぎ、運命を賭けた魔術が発動する。
セラヴィナ「999コイン!?あんた……死ぬ気!?」
セラヴィナの目に狂気が宿る。
セラヴィナ「その魔術なら絶対、私は負けない!!」
その言葉を遮るように、カイの刃がセラヴィナを両断した。
カイ「……よし!」
シュリーデ「……カイ、あんた……なんで……」
カイは懐から歪んだダガーを取り出す。刃は黒い瘴気を纏い、呻くように震えていた。
カイ「ん?あぁ、これ使ったんだ。どうせ死ぬなら、こいつに命吸わせてみようかなって思ってな」
シュリーデ「それは……”魂喰らい”……!? まさか、まだ残ってたなんて……」
崩れ落ちたはずのセラヴィナが、血を吐きながら顔を上げる。
セラヴィナ「……あんた……なんで……それを……」
カイ「なんだお前!?まだ生きてる!? 貴族ってのは全員不死身なのか!?」
セラヴィナの目が微かに見開かれる。
セラヴィナ「……その短剣……やっぱり……あいつ……」
掠れる声を最後に、彼女の体は塵となって消えた。
結界が霧散していく。
カイはダガーを腰に戻し、息をつく。
カイ「よし!……DCを助けに行こう!」
シュリーデ(……この子、そのダガーの価値も、持ち主も知らないんだろうな)
シュリーデ「OK、いくわよ!」
二人は駆け出す。残響のようにセラヴィナの歌声が消えていった。
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