空腹を断ち切る炎
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結界の中、唸る瘴気を背景に三人の影が交錯する。
槍を構えるイグニスと、狼の爪を煌めかせるリーディ。
巨大な口を開けては獣のように襲い掛かるのは、七大貴族“空腹”のベロガンだった。
槍と牙、炎と瘴気――攻勢は一進一退を繰り返す。
ベロガン「ふ~む」
イグニス「なんだ?どうした!」
リーディ「何企んでんだよ……!」
ベロガンは口元をぬぐいながら、妙に落ち着いた声で告げる。
ベロガン「お二方とも、なかなかやるようだ。だが……槍の貴方、まだもう一段階、隠してますね?」
イグニスはニヤリと笑う。
イグニス「そりゃあお互い様だろ?そっちこそ、何隠してやがんだ?」
リーディは一瞬、眉をひそめた。
リーディ(……ほんとにまだもう一段階あるのか……?)
ベロガンは喉の奥から獣じみた声を響かせ、両腕を広げる。
ベロガン「では見せてあげましょう―― 飢餓顕現!」
その身体が異形へと変貌していく。
頭部は縦に裂け、口が腹部まで伸び、牙は瘴気をも噛み砕く巨大な形状に変化した。
「ゴオォォォ!」と音を立てながら周囲の瘴気すら吸い込み、魔力の流れまでも引きずり込む。
リーディ「なっ……!? 魔力が……喰われてる……!」
イグニス「ちっ……!」(俺もリーディも魔力で戦うタイプじゃねぇ。だから気づかなかったのか……!)
ベロガン「どうです!?この力!あなたたちの魔力まで食い散らかしてあげましょう!」
イグニスは槍を握り直し、鬼のような形相で吠える。
イグニス「へっ!でかくなったから何だってんだ!―― 焔魔顕現!!」
炎が迸り、イグニスの肉体がさらに膨張する。角のような焔を生やし、背に炎の羽根を纏ったその姿は、まさに南天の魔神。
外に漏れる魔力は極限まで絞られ、代わりに内部に凝縮された力が炎となって滾っていた。
イグニス「リーディ!てめぇの背負ってる師匠の剣、あるだろ?あれを腕に同化してみろ!」
リーディ「同化!? ……うん!やってみる!」
リーディは両腕を胸の前で交差させ、声を張り上げた。
リーディ「―― 武魂同化!」
その瞬間、腕が爪剣へと変わり、白銀に輝く刀身が顕現する。
刃の表面は灼熱の炎で覆われ、赤と白が交じり合う光がリーディを照らした。
ベロガン「……な、なんですそれは!? 魔力を取り込めない……だと……!?」
イグニス「おうよ。これは魔力の流れなんかじゃねぇ、魂そのものを刃に変えたんだ!」
イグニスは燃える槍を構え、リーディは光爪を握りしめる。
二人の視線が交錯し、同時に頷いた。
イグニス「行くぞ――リーディィィィ!!」
リーディ「うんっ!!」
二人の声が重なる。
イグニス&リーディ「―― 焔牙双襲!!!」
灼熱の突きと、白刃の斬撃が交差する。
一対の炎牙が巨大な獣の頭を貫き、内部から燃え尽くしていった。
ベロガン「がっ……がぁぁぁぁぁっ……!!」
絶叫をあげる間もなく、その身体は灰となり、瘴気ごと燃え尽きていった。
結界が揺れ、静かに晴れていく。
イグニス「ふぅ……ちっと焼きすぎたか?」
リーディはその隣で、全身を震わせながらも笑った。
リーディ「イグニス……怖かったけど……楽しかった……!」
炎の残り香の中、二人の影が再び前線へと歩みを進めていった。
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