白き空間、黒き誓い
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結界の内部は、白く塗り潰された無の空間だった。
足元に立っている感覚こそあるが、地平も天も区別できない。
カイ「……なんだ、この空間。見えているようで何も見えねぇ」
カイの呟きは虚空に吸い込まれていく。
やがて――影が揺らめき、そこに異形の存在が姿を現した。
アエロス「ヒヒヒ……やっと起きやがったか」
カイ「お前……いや、わかってる。そんな姿だったのか」
アエロス「意外とビビらねぇんだな、フフヒ」
カイ「まぁな。見た目だけなら、ドミナスとかの方がよっぽどやばかったしな」
アエロスは楽しげに喉を鳴らす。
アエロス「いい気概だ。……だが、いいのか? 願いを叶えた瞬間、お前は俺と完全に同化しちまうぜ」
カイ「構わねぇ。エリシアの心臓を、人間の心臓に戻してやってくれ」
アエロス「あぁ、いいぜ。だが……ネレウス。バシリスクの野郎を殺したら、お前もとっとと死んでくれよ、ヒヒ」
カイ「なんでだよ。……まぁいい、あとのことは自分で考えるさ」
アエロスが腕を広げ、白の空間に黒い亀裂が走る。
アエロス「――【魔契の終誓】」
その言葉と共に、強烈な光が結界を揺るがした。
―――
結界を破り出てきたカイは、かつての面影を残しつつも、その姿は褐色の肌と鋭い瞳へと変わっていた。背から広がる羽根と両腕の魔の紋様は、見る者に畏怖を抱かせる。
エリシア「……カイ。カイっ!」
駆け寄る彼女を見下ろし、カイは微笑んだ。
DC「あら、男前になっちゃって」
リーディ「ジンもカイも見た目こわっ! 何その変身!」
イグニス「完全同化するとここまで圧が変わるのか……すげぇな」
シュリーデ「でも意識は乗っ取られてないみたいね。上出来じゃない」
―――
夜。宿の部屋。
窓の外で風が鳴く。焚かれた灯が、二人の影を壁に揺らしていた。
エリシア「ほんとに、なんともないの?」
カイ「あぁ。まぁ……肌がちょっと褐色になって、目の色も変わったくらいだ」
エリシア「……よかった」
ふっと安堵の息をつく彼女を見て、カイは問いかける。
カイ「心臓は? 実際どうなんだ?」
エリシア「全然大丈夫。魔力だって心臓に頼って出してたわけじゃないし……今なら瘴気も平気」
カイ「そっか。……ならよかった」
少し間を置いて、カイは天井を見上げて呟いた。
カイ「心残りがあるとすれば、育ててくれた村長にもっとお礼しとけばよかったなってのと……」
エリシア「……?」
カイ「昔、約束しただろ。『ずっと守ってやる』って。……もう俺、人間界には戻れなさそうだしな」
その言葉に、エリシアは唇を震わせ、そっとカイの手を握る。
互いの想いは、言葉を越えて確かに通じ合っていた。
沈黙の中、距離が縮まり――やがて二人は影を重ねた。
……夜は静かに、更けていく。
―――
廊下の影にて。
DC「んーふふ♡ やっとって感じかしらねぇ」
監視魔法を飛ばして、ニヤニヤ笑う彼女。
翌朝のからかいを想像して、口元を抑えきれずにいた。
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