魔王の器
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村の門をくぐった瞬間、温かな声が飛んできた。
イグニスが大槍を肩に担ぎながら、白い歯を見せて笑っている。
イグニス「おう!お疲れさん!……って顔だな。かなり荒れてたろ? 悪いが早速で済まねぇ、長老が呼んでる。どうにも大事な話らしい」
カイ「長老が?……わかった、行こう」
村の奥、小さな祠のような建物。その中央に座すのは、しわ深く刻まれた顔の老人だった。
長老はゆっくりと目を開けると、カイたちを見回す。
長老「来たか……。お前たちには伝えておかねばならぬことがある」
リーディ「伝えること?」
長老「“魔王の器”についてじゃ」
火の粉が弾けるような沈黙が落ちる。
長老「古き伝承によれば、部位を集め願いを叶える代償は“魔王の器”となること。しかし……器がすでに埋まっておる場合は、その必要はない。すなわち、魔王がすでに存在するならば、誰かがその座に縛られることはないのじゃ」
エリシア「! じゃあ……今は仮とはいえ魔王が復活してるから……」
DC「あら、面白いじゃない。……ってことは、“器”なんて今は不要ってわけ?」
羽がクツクツと笑った。
羽『……ヒヒヒ、聞きやがったな。都合よく解釈しやがって……』
左腕「しかし理屈は合っております。器を必要とするのは“空席”の時のみ。今は埋まっている……」
DC「ふーん……あんたらが器狙ってるの、バレバレなのにね?」
羽は黙り、気まずい沈黙。
カイ「……よし、決まったな。魔王を完成させて願いを叶え、そのあと討つ。やることがはっきりした」
リーディ「本当に……討てるのかな」
カイ「討つんだよ。絶対にな」
その時、子供たちがどっと駆け込んできた。
リリアナ「お父さん!また無茶する気でしょ!」
カイエル「父さん、俺たちも一緒に戦える!」
ナディル「ぼ、僕だって……!」
イグニスは困ったように頭をかき、子供たちをまとめて抱きしめる。
イグニス「バカ言え。お前らはまだまだ伸びるんだ。ここで死なれちゃ、俺が困る。……でも心配すんな。父ちゃんは死なねぇよ。カイたちもいるからな!」
エリシア「イグニス……」
イグニス「まぁあれだ、魔王が復活したらまた魔界は荒れる。だったら俺も討伐に参加するしかねぇだろ?カイ、お前らだけに任せる気はないぜ」
力強い声に、子供たちは涙目で頷いた。
DC「ふふっ、仲間が増えるのは歓迎よ。で、あの北のお姉さん――」
カイ「シュリーデも呼ぶか。エリシアを守ってくれた恩人だしな」
リーディ「なんだか心強くなってきた!」
長老が小さく頷き、低く言葉を落とす。
長老「東は雷、中央は魔王。……西を経由して北へ向かえ。運命の糸は、必ずそちらへとつながる」
カイは立ち上がり、深く息を吸った。
カイ「よし、じゃあ決まりだ。まずは北へ向かうぞ!」
焚火の火が高くはぜ、決戦の夜が近づいていることを告げていた。
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