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悪魔の左腕  作者: 770
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王の剣、セドマ=グラヴェル

(^^)/

暗闇――それは広がるだけで方向感覚を奪うような、濃密な黒い海のようだった。足元も距離感も分からぬまま、風だけが耳を刺す。


カイ「くっ! みんな! 大丈夫か!」


エリシア「カイ!? 大丈夫!?(光環の盾を広げながら)」


カイ「エリシアだけか?」


視界の中、闇の中から映し出されたのは一振りの大剣を背にした女――セドマだった。鎧は土の褐色に鉄錆のような文様が浮かび、腰には刃物が幾重にもぶら下がる。顔立ちは涼やかだが、瞳には冷徹な職人のような光が宿る。剣の柄には祖の紋章——グラヴェル家の紋が深く刻まれていた。


セドマ「私がお二人の相手ですか」

セドマ「失礼、私は土の王、バシリスク=グラヴェルの剣、セドマ=グラヴェルと申します。あなた方程度で王に刃が届くとは思いませんが、降りかかる火の粉を払うのも剣の役目——いざ。」


その言葉と同時に、セドマの足元から黒褐色の土煙が立ち上がり、無数の岩片が一斉に跳ね上がる。岩片は刃となり、エリシアへと刺さるように飛来した。


エリシア「!?」

エリシア「光環の盾!!」


だがセドマは微笑みさえ浮かべ、剣を水平に振るう。盾を一閃で切り裂くその一振りは、まるで固まった大地をなでるかのような重みを持っていた。光環は崩れ、エリシアの防御の輪郭が歪む。


セドマ「おぉ、素晴らしい反応速度ですね。ですが——」

セドマ「貴女の光は“防ぐ”ための光。盾は破られるために張るのです」


カイ「させるか!」


カイは叫び、剣を振るった。風の刃が暗黒を切り裂き、セドマの攻撃軌道へと突っ込む。だが剣撃は岩塊に阻まれ、刃は跳ね返される。セドマの笑みはほんの一瞬薄れたが、すぐに鋭く戻った。


セドマ「なるほど、剣剣と申すか。よい、貴様の“剣”を見せてもらおう」


セドマは地を踏み締め、大地そのものを握るかのように剣を振り上げた。地面が唸り、数十本の土の槍が天へと伸びてくる。槍はカイの半身を縦横に貫こうと襲い掛かった。


カイ「くっ……!」

カイ(心の中)〈みんなを守る──それだけだ〉


カイは左腕に意識を集中する。左腕から伝わる冷やかな声が鼓膜をくすぐる。――魔力を吸い、返せ。だが今はまだ、完璧には動かせない。腕は吸収だけを示唆するが、それだけで十分だった。


カイ「……吸ってくれ!」


左腕の掌が黒い渦を生み、周囲の瘴気と土の槍を一瞬で吸い込んだ。吸い込まれた魔力は腕の内部で蠢き、腕からは淡い灰色の霧が漏れる。吸収の反動でカイは膝をつきそうになるが、そこでエリシアが光の糸を伸ばし、彼を支えた。


エリシア「しっかり! カイ!」


カイは身体を起こしながら、吸収した魔力を刃へと流し込む。風と瘴気が混ざり合い、刃は黒と翠の二色に輝く。斬撃はただの風ではない。相手の“力”を断ち切るための刃だ。


カイ「これで終わりだ!」


刃はセドマの腕に突き刺さる。だがセドマは笑って剣を受け止め、逆にカイの刀身を握る。剣と剣がぶつかり合い、火花が散る。セドマの瞳に一瞬、驚きが走る——吸い込んだ魔力の質が、彼女の計算を狂わせたのだ。


セドマ「……巧い。だがそれだけか?」


セドマは地面を蹴り、カイを弾き飛ばす。だがその弾きはカイの意図した通りだった。弾かれた軌道にエリシアの光の刃が走り、セドマの側面を切り裂く。傷口からは濁った土の汁が滴り落ちる。


エリシア「行くよ、カイ! 一緒に――」

カイ「行く!」


二人の連携は鋭く、呼吸を合わせた一撃がセドマの防御の隙間を突いた。セドマはたじろぎ、地面に膝をつく。だが王家の剣士はすぐに態勢を立て直し、周囲の土を一瞬で再生させる。


セドマ「なるほど……ただし、王の力はそう簡単には削げぬ。ここで終わると思うな」


セドマは地面を拳で叩き、衝撃波を放つ。衝撃は暗闇を震わせ、衝撃の余波でカイとエリシアは吹き飛ばされる。二人は地に倒れるが、互いの視線は離れない。苦渋の笑みを交わし、再び立ち上がる。


カイ「まだ、終わらねぇ──俺たちのやり方で行くぞ!」


エリシア「うん! 必ず止める!」


暗闇の中で、二人の決意だけが白く燃えた。セドマは立ち上がり、土の剣を掲げた。その肩に、王の威厳と刃の宿命が宿る。


セドマ「いいだろう……ならば見せよ、己の最深を。貴様ら人間がどれだけまで行けるのか——」


闇の中、再び剣と光と風が混じり合う。戦いは深まっていった。

(^^)/

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