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悪魔の左腕  作者: 770
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黒き羽根は運命を裂く

(^^)/

荒野の風が吹き抜ける。

漆黒の羽を背に持ち、異形と化した青年は空を仰いだ。


カイ「さて、どうしたもんかなぁ」


独り言は乾いた空気に消えていく。

その姿はかつて村を守ろうとした少年とは似ても似つかない。

けれど、彼は確かに人であり、悪魔を斃すために歩んできた。


目を閉じると、血と炎の夜が甦る。


ー10年前ー

村は火に包まれていた。

幼いカイは泣き叫びながら両親の背を追って走る。

隣には同い年の少女、エリシア。必死にカイの手を握って離さない。


母「カイ!エリシアを頼んだよ!」

父「走れ!絶対に止まるな!」


しかし、次の瞬間。

カイの目の前で、父が悪魔に槍で貫かれ、母が炎に飲まれて崩れ落ちた。


カイ「お父さん……! お母さんッ!!」

エリシア「いやぁぁぁぁぁっ!」


村長サジーが二人を抱きかかえる。


サジー「見ちゃいかん!振り返るな!走るんじゃ!」


背後で、村のご神木が裂け、封じられた悪魔の部位が引きずり出される音が響く。

炎、血、絶望――それがカイの原点だった。


ーーー


二人は村を失い、山小屋でひっそり暮らすことになる。

エリシアは心臓の病を抱え、時折苦しみに顔を歪めた。

しかし、それはただの病ではなく「天使の心臓」の拒絶反応だと、後に判明する。


農作業に励みながら、カイは心に誓った。


カイ(……いつか俺が悪魔を全部斃す。二度と大切なものを失わないために)


ー6年後ー


16歳になったカイは、森で小型の悪魔を倒す。

残されたのは一枚の漆黒の羽。

それは「悪魔の羽」――運命の欠片だった。


その夜、エリシアが高熱で倒れる。


カイ「エリシア!目を開けろ!」

サジー「これはただの熱ではない……嫌な気配がする」


緊張が走る中、戸を叩く音が響いた。

現れたのは天使教南西支部の司祭と教徒二人。


司祭・マルコス「女神の加護を受けし娘よ……その心臓、我らが使命のために回収させてもらう」


サジー「何を言うか!この子はまだ生きておる!」


マルコスの背後から、二人の教徒が進み出る。

一人は銀髪の青年、レオニス。その右腕は白光の鎧を纏っていた。


レオニス「司祭殿、やはり強行ですか……」


もう一人は黒髪の少女、フィオラ。背中から純白の翼を広げる。


フィオラ「早く終わらせましょう。……この娘には時間がない」


サジー「ま、待て!それは……『天使の右腕』、そして『天使の羽』か……!」


マルコス「無駄口を叩くな!」

レオニスの拳が振るわれ、サジーの体は壁に叩きつけられた。


カイ「やめろぉぉぉ!!」

だがカイもまたフィオラに吹き飛ばされ、隣室に転がる。


目に入ったのは、床に落ちた漆黒の羽――悪魔の羽だった。


カイ(……守れるなら、俺は……!)


羽を掴むと、声が頭に響く。


羽の声『おお……いい度胸だな、俺を使役しようってのか? ヒヒヒヒ』


カイ「……エリシアを守れるなら、なんだってする!」


暴風が吹き荒れ、壁が吹き飛ぶ。

次の瞬間、カイは二人の教徒の背後に立っていた。


カイ「エリシアに……さわるな!!」


レオニス「なっ……速いッ!」

フィオラ「この力は……悪魔の……!」


二人は吹き飛ばされるが致命傷には至らず、カイはその隙にエリシアとサジーを抱えて逃げ出した。


マルコス「追え!絶対に逃がすな!」


だが、教徒たちは動かない。


レオニス「……なぜ加入させるのではなく、殺そうとしたのです?」

マルコス「黙れ!私は司祭だぞ!命令に従え!」


フィオラの目が冷たく光る。

フィオラ「……あなたでは、アリス=ドミナの未来はない」


次の瞬間、マルコスの身体は両断され、血飛沫が舞った。


レオニス「行こう。真なる旗の下へ」

二人は炎の夜を背に去っていった。


ーーー


カイ「……あれは、なんなんだ」


羽の声『ヒヒヒ、天使教のやつらだろうよ。あのお嬢ちゃんの心臓を狙ってたんだな』


カイ「病気じゃなかったのか……?」

羽の声『お嬢ちゃんの心臓は天使のもんだ。拒絶反応で死にかけてんだよ』


カイ「どうすれば助けられる!?」

羽の声『ヒヒヒ、一つだけ方法がある。オレが拒絶反応を封印してやる。その代わり……悪魔の部位を集めろ』


カイ「……悪魔の手下になれってことか」

羽の声『悪くねえ取引だろ?お前はお嬢ちゃんを助けられる、オレは部位が集まってハッピー、ヒヒヒ』


カイ「……わかった。やってやる。エリシアを守るためなら」

羽の声『いい返事だ、相棒!』


羽の声が消え、エリシアの苦悶も収まった。


ー翌朝ー


エリシア「……カイ?」

目を覚ましたエリシアが微笑む。


カイ「おはよう、エリシア」


サジーに昨夜のことを語ると、老人は重く頷いた。


サジー「……昔聞いたことがある。部位をすべて集めれば、どんな願いも叶うと」


カイ「なら決まりだ。俺は行く。エリシアを守るために」


サジー「気を付けるんじゃぞ……。いつでも戻ってこい」


カイは振り返らなかった。

背に広がる黒き羽が、運命を裂く風を掴んでいた。

(^^)/

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