表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちゅきちゅき、あいちて!  作者: 榛名のの(春夏冬)
6/14

パン屋になった稲穂屋

商業ギルドから監査が入ってプリンは新しく稲穂屋の物として登録された。

 ネネの登録したものは、細かい手順を踏んでなかったのだ。プリン液を目の細かいザルで濾したり、蒸し時間やカラメルソースの作り方が全く書かれてなかったのだ!

 ネネは知的財産を盗んだ罪で犯罪奴隷に堕とされた。

 ディンクス一家もやっと懲りたらしい。ネネを買い戻す為、イネの契約の継続を求めた。

 今度は商業ギルドで契約書を作ってもらった。ネネがまた、稲穂屋のレシピを漏らしたら次は処刑だと記してある。

 結局、契約には至らなかった。

ネネが稲穂屋のレシピを他の食堂に売っていたことが発覚したからだ。

 他の食堂は、そう知って稲穂屋に改めて修行に来た。

 

 稲穂屋は、開き直り米粉パンを売るだけの店にシフトチェンジした。

お惣菜パンと菓子パンを売ればバラエティ豊かだし、他の店との差別化を図れる。

 真夜中からパンを焼いて、様々なフィリングを用意して早朝から売り切れるまで売る!

だいたい昼までに売り切れるまでになり、ここ3カ月で、半日で金貨1枚稼げるようになった。

 ハンター達が「今日も買えなかった」とうるさいので、オーブンを増設することにした。裏庭を潰して厨房を広げてリフォームすることにしたら、翌日から、大工さんとオーブンを設置する業者さんとがタッグを組んで3か月かけて作ってくれた。


 その間、俺は、狩りにソースづくりに忙しくてディンクス一家が、また問題を持ち込もうとしていることさえ、その娘アンに密告されるまで、気が付かなかった。


 ♢♢♢♢♢


「稲穂屋みたいなパン屋を作る?・・・何だそりゃあ!」


アンは、ドゥーマの迫力に気圧されて体を丸める。


「どこかりゃ、おかにぇかりたの?」


「それが・・・領主様なんです」


これは、思ってたより大ごとかもしれない。


「そういやぁ、水車小屋作ったらしいぜ。何すんだと思ってたらろくでもない!」


「そ、それで、私に、家に帰って来て、店をやれって、言うんです!ムリだって、言ってるのに、全然話聞いてくれなくて!」


ドゥーマが機嫌悪そうにアンに言う。


「そりゃあ、領主様からのお力添えがあるんだから、何でもやりたい放題だろ!アン、済まなかったな、板挟みにされて。つらかったろう?実家に帰って店をやれよ」


「いいんですか?・・・本当に?」


「アン、にょりぇんわけぢゃよ。しんぱいない」


アンはいっぱい泣いて、ドゥーマに馬車で送られて行った。

 正直に言うと「オレは領主様の使いである。この店の職人を献上しろ!」と遠回しにここ半年近く言われて、皆が困っていた。

 だから、アンに暖簾分けしたのもあるが、客が多すぎて対応出来ないので、「支店」という形で一応認めてやった。

 ただ、ソース類の仕込みは一切教えてない。

 ハーライト商会で買ったソース類をそのまま使っても、いいし。そこら辺は内緒って事で。ハーッハッハ!ざまあみろ!


 こうして、不本意ながら稲穂屋の姉妹店が出来た。

 そうすると領主様からのパワハラがなくなった。しかし、稲穂屋は相変わらず売り上げは凄まじく、金貨2枚稼げる日もあり、コックを増やして対応した。

 アイアンランクのハンター、マルクとバンドの双子の兄弟だ。

 店の前で行き倒れてたから、ついでに雇ったのだ。アイアンランクらしく、何をやらせても器用で気が利く二人は、あっという間に店に馴染み、俺は本来の仕事に戻った。


 そう、討伐だ。俺はこの半年間の経験より接近戦の方が得意だと解ったので、装備をちゃんとすることにした。

 ルパートにはオーガの皮鎧と、篭手とフォレストドラゴンのブーツを買い与えてある。

 遠慮してなかなか受け取らなかったので仕方なくこう言った。


「おりぇが、あぶにゃくなったとき、じかんかしぇぎに、ちゃべりぇりゅでしょ?かちゃいちょ、じかんかかりゅでしょ?!ちゅべこべいわじゅにちゅけにゃしゃい!」


その日からルパートは他のハンターに【生け贄のルパート】と呼ばれるようになった。

 ルパートは自分だけ良い装備で、申し訳なさがっていたので今日は良い機会になった。

蹴り技と短刀がメインなので、靴底がごついブーツと持ち込みのシルバーサーペントの皮の鎧に、まともな弓を買った。

 俺は自慢するわけじゃないが、弓の腕は良い。しかしながら、毎日狩っていると魔獣も警戒態勢をとる。2頭いたら、1頭が狩りをし、もう1頭が周りを警戒する。

 つまり弱い魔獣ほど、チームワークを覚えて群れるようになった。厄介だ。

 でも、5頭くらいなら、突入して瞬殺出来るくらいにはなった。ルパートも1頭くらいなら、引き受けてくれるし。

 一度、本当にルパートを生け贄にしかかった事があったので無理はしない。

 シルバーサーペントみたいな「ぼっちでもやっていける」系の強い魔獣はばかばかしいほど狩り安い。


「しょういうわけで、りぇっちゅ、ごー!」


今日は月に一度のシルバーサーペントの納品日だ。

貸し馬屋でいつもの魔馬・デュークを借り、ルパートの前にライドオンしていつもの狩り場に着く。

 何だかいつもと気配が違う!

シルバーサーペントが4頭で何かを奪いあっている。意識がこちらに向いて無いので弓で眼を狙う。ルパートが矢を渡してくれるので次々に射かける。弦が少し硬いが身体強化を覚えた俺の敵ではない!

 眼も錬金術の素材になるらしいがこの状況ではツベコベ言ってる場合じゃない!

眼から脳に達したようで、4頭のシルバーサーペントはお亡くなりになった。

ルパートは急いで4頭のシルバーサーペントをアイテムボックスにしまうと俺をお姫さま抱っこして魔馬に向かって駆け出した。

 めちゃくちゃ必死だ。

そう言えば、何を奪いあっていたのだろう?


※※※※※鑑定

ブラックラインサーペントの子供です。あのままでは、母親が来るまでに死にます。シルバーサーペントの脳味噌を食べさせると良いでしょう。

※※※※※


「ルパート!もぢょっちぇ!」


「ダメです!」


「あかちゃん、しんじゃう!」


ルパートは現場に戻ってくれた。


「鑑定さんは何て言ってるんですか!」


「シルバーサーペントにょ、にょうみしょたべしゃしぇちぇ!」


ルパートは脇差しでスパッとシルバーサーペントの頭頂部を切り飛ばすとボロボロになったブラックラインサーペントの赤ちゃんをその中に入れた。赤ちゃん蛇は、シルバーサーペントの脳味噌をスゴい勢いで食べた。


「傷が治ってる!」


「ほんちょら!しゅごいにぇ!」


※※※※※鑑定

母親が来ました。こちらをジッと見てます。

※※※※※※


木の上からダイブした母親蛇は、観たことも無いデカさでまともに戦ったら死んじゃうなと冷静に判断した。シルバーサーペントをごちそう様して、赤ちゃん蛇を俺の首にかけた。


「にゃんで?」


※※※※※鑑定

人間の匂いが付いたから、多分、託されたのではないかと…テイムして差し上げなさい。

※※※※※


「ルパート、テイムってどうやるにょ?」


「・・・正気ですか?あの大きさになるんですよ?」


「もりにしゅむ!おりぇ、かんがえちぇちゃ、ハンターのしぇいかちゅ、もりにしゅむほうがいい」


「・・・わかりました。とりあえず後半年間は連れあるけるでしょうから、その間に森に家を建てましょう」


※※※※鑑定

母親蛇がイラついてます。早くテイムして下さい。名前決めて魔力流すだけですから!

※※※※※


「にゃまえ?キラキラしてりゅから、【ビジュー】。ほうしぇきっていみぢゃよ?」


魔力を流す。ビジューと俺がピカッと光った。ソレを見届けると静かに去っていく母親蛇を見送った俺達だった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ