稲穂屋(sideササン)
コッパーランクのハンターチーム【黄金の兜】は、ブルーブルのテイムの依頼を終えて疲れていた。でも、まあ、銀貨8枚はおいしい!
「ねえ、ササン。ギルマスの店で食事しない?」
カーマインがニコニコと提案する。
「そうだな、1度くらい話のネタに行っとくか」
宿屋で着替えてから、ギルマスの店に行くと香ばしい何とも言えない良い香りが漂っていた。
10人くらいの行列の後ろに並ぶ。しばらく、この凶悪な匂いと空腹感と戦っていると店の入り口から朱色の髪の毛を上品に後ろでまとめたエイチがメイド服姿で出て来た。
「「「「「可愛い!」」」」」
「かわいくにゃいもん!ササンさんきちぇくりぇちぇありがちょ!」
カーマインが捕まえようとするのをヒラリと躱してメニュー表とやらをエイチは押し付けて、また、店の中に入って行った。
「ボア肉のステーキ?あ、これ!パンが付いてるって!!」
ココットの叫びに後ろに並ぶハンター達がざわめく。
「ブルーブル丼」
「コカトリスの唐揚げ定食」
「コカトリスの照り焼き定食」
「パンはさみ卵」
「パンはさみ卵が気になる!私これにする!」
カーマインは決めてしまった。
ココットはボア肉のステーキにした。
ナントはブルーブル丼。
リマは「この匂いの料理!」と明解だ。
「俺もこの匂いの元にする」
決まった頃に店から叩き出されるハンター達。
入り口にホウキを持って仁王立ちするエイチ。
「エイチちゃん!唐揚げ定食もう一皿」
「エイチちゃん!プリン!6つ」
「おかわり、ししゅぎ!あしちゃ、こい!ちゅぎにょかちゃどうじょ」
ココットがつぶやく。
「食べ過ぎたら追い出されるんすね」
「「「「気をつけよう」」」」
店の中は普通の食堂みたいで変わったことが無いが、この凶悪な香ばしい匂いがますますする。
「ボア肉のステーキを一つと、ブルーブル丼を一つ、パンはさみ卵一つ、この匂いの料理を二つ」
「かしこまりました。ボア肉のステーキが一つ、ブルーブル丼が一つ、パンはさみ卵が一つ、コカトリスの照り焼き定食が二つ。よろしいですか?」
「「「「「はい!」」」」」
10分経たない内にメシは来たのだが、添えられてるのが、イネの炊いた物で、これで大銅貨1枚は高いと客が口々に叫ぶ。
大丈夫か?エイチ。
ブルーブル丼をほおばるナントが脇目も振らずガツガツと食べて、また、メニュー表を見る。
「唐揚げ定食一つ!」
「ありがちょ!ナントしゃん」
照り焼き定食を食う。なんだこれ?!味付け濃いけど甘辛くて美味い!炊いたイネと交互に食べるとちょうど良い!キャベツの切ったものも残らなかったが、まだお腹いっぱいではない!
その時、ナントの元に唐揚げ定食が来た。
「「「「美味そう!」」」」
「「「「唐揚げ定食4つ!」」」」
バカな奴ら。多分このソースだけで元が取れるはず。イネも、他の物より甘く腹持ちがいい。
唐揚げ定食、これで大銅貨1枚ってマジか!!エイチを目で追うと終業の札をドアにかけている。
「エイチ、疲れたろう?」
「にゃれちゃ。みんにゃ、おおぐりゃいにゃ」
カーマインが笑う。
「値段が高くてもいいからボリュームが欲しいんだが」
「ふーん?かんがえちょく」
「大銅貨2枚くらいでパンがついてたら、絶対皆が注文する。また、明日の夜くるな!」
「よるはちてにゃいの。ごめんにゃしゃい!そにょかわり、あしゃがはやいにょ」
「明け方からやってんのか!良いこと聞いたぜ!」
「パンのメニュー、いっぱいでしゅけど、おみしぇにょにゃかがいっぱいにゃりゃ、おもちかえりしてもりゃいましゅ」
「お持ち帰り?」
「屋台みたいに買ってすぐ帰れるって事じゃない?」
カーマインの閃きに首が取れるかと思うほどエイチがうなずく。
「じゃ、会計頼む!」
「しょうぎんか1まいでしゅ。ちゃしかにうけちょりまちた!ちょっとまっちぇちぇ、ササンしゃんちゃちには、おみあげがありゅにょ。あまいにょちゃべりぇりゅ?」
「好きよ!」
「ん!」
スカートを翻して店の奥に駆け込んだかと思うと、ルパートに大きな籐かごを持たせて帰って来た。
ルパートは片付けられたテーブルの上にその籐かごが置かれた。
5つの壺が入っている。結構大きい。
「ちゅめちゃくしちぇかりゃ、ちゃべちぇね!」
「おう!ありがとうな!エイチ。また明日な!」
「あしゃは、とうばつでてりゅかりゃいにゃいよ」
「察し。肉の調達ね?」
「しょうにゃにょ!カーマインしゃんしゅごい」
カーマインは立ち上がると、しゃがんでエイチの頭を撫でた。
「気をつけてね?」
「カーマインしゃんも!」
俺達5人はお土産を持って宿屋に帰ってお土産を氷室で冷やしてから食べた。
こんな美味いもの食べたことない!皆、夢中で食べた。
「私今度はこれにする!」
わざわざ「お土産」って言った物を売ってるかが問題だ。
◆◆◆◆◆sideエイチ
「ぐはっ」
最後の客を見送ったらおっさんみたいな声が出た。ルパートが部屋まで抱っこして連れてってくれた。
ちょっと遅いお昼寝をする。メイド服はアニーさんが着替えさせてくれたみたいで、起きたらコックコートだった。
店に降りるともう、夕方で、皆で明日の食パンを焼いていた。
図々しいネネがプリンをローレンさんにねだる。アニーさんのゲンコツが火を噴いた!
コイツ、要注意かも。何の勘違いしたんだか、皆より、自分が偉いと思っている。
ドゥーマに相談してみよう!
♢♢♢♢♢
「ああん?!ディンクスんちに返してくる!」
ヤケにすんなり帰ったと思ってたら翌日アイツはプリンを商業ギルドに自分が開発したものとして登録したのだ。
「お姉ちゃんがごめんなさい!」
舐めやがって!
守秘義務違反を追求したら、ディンクスさん一家は、「イネはいいんですか?」とドゥーマを脅したらしい。
カンカンになって帰って来たドゥーマは夜中どこかへ出かけたかと思うと上機嫌で帰って来た。
翌日の夕方、ディンクスさん家が魔獣に襲われた。皆でアンを慰めた。幸いブルーブルが全部喰われただけ。ディンクスさん一家は、当然のようにブルーブルのテイムの依頼を契約書を盾に俺達に迫った。
しかし、どのハンターチームも依頼を受けなかった。プリンのことがウワサになっていたのだ。ディンクスさん一家は、今や街の注目の的(悪い意味で)。
領主様の査察も始まったと言う。
アンには悪いがちょっとスッとした。