第15話 バルト山へ
また、遅くなりました。次も遅くなります。申し訳ありませんm(__)m
季節は巡り巡って俺は8才になった。
文字の筆記体での読み書きも出来るようになったし、樹海での修行も終わった。
ドラゴンには苦戦したが、引き分けに持っていけるくらいには強くなった。
その日の夕食の席でルパートとブラッドにお別れを言った。
「バルト山に挑む!二人とは、ここで・・・何してるの?」
「「一緒に行きます!仕度をしてます」」
「一人で挑戦しないと、弟子にはしてもらえないから、ついてくるな!」
「「イヤです。ついていきます!」」
「何で言うこと聞いてくれないの?!命令だよ!」
さすがに「命令」は聞くだろう!
しかし、2人は荷作りを止めようとしない。
明日の出発に向けて買い出しの話をしているくらい呑気だ。
「ちょっと!聞いてる?!」
「バルト山に行くのでしょう?お祖父様にお土産が必要ではありませんか?」
うっ。
「お弟子さんもたくさんいるから、たくさん用意しなければならないでしょう?アイテムボックスの出番です!」
ううっ!
「それにバルト山、何処にあるか知ってるんですか?!」
うううっ!!
「悪かったよ!一緒に行って下さい!お願いします!」
ルパートとブラッドは、2年前から、行商を他の人に委ね、樹海での修行を始めた。
俺もルパート達も行くところ敵無しだ。
何で鍛えてるのかわからなかったけど、付いてくる気だったなんて驚いた!
「バルト山って、何処にあるの?」
「「樹海のど真ん中です。魔獣が強いから、バルト山のふもとでしばらく修行してから、山登りしましょう!」」
「保存食もたくさん用意してありますからね」
お前ら、ずる賢いな!
とりあえずリベルタの薬師ギルドのルルーさんには、最後のポーションを納品して、商業ギルドで大金貨300枚ほどお金を引いて来た。
ここら辺より魔獣が強いなら、何度か挑戦するハメになるだろうからだ。
ルパート達の装備品も新調した。
ルパートには、業物の双剣を買って、利英先生の刀を返してもらった。
ブラッドには、センチピードの胸当てとガントレットを新調した。
俺は胸当てとブーツを新調し、弓矢を500本ほど購入した。
マントは、寝具の代わりになるのでなるべく分厚い物を選んだ。幸いバルト山は常夏の気候らしく山頂付近しか寒くないようだ。
◆◆◆◆◆
「バルト山って、樹海のど真ん中にあるの?!」
ただいま、ビジューに乗って露払いしながら、バルト山に向かって移動中。ビジューもここ数年間で随分成長して母親のオニキスと変わらないくらいデカくなった。
オニキスは、ルパートとの従魔契約を解消した。バルト山は、オニキスの縄張りでは無いので同行出来ないと断られた。
ビジューは連れて行かないと途中で全員死ぬだろうから連れて行くよう言われて3人共ドン引きした。ナハトはブラッドを乗せてフォレストウルフ74頭を率いてワンワン行進中。
エサは現地調達、新鮮食材!
しかし、ナハト達が付いて来られたのも別のフォレストウルフの群れの縄張りと接触するまでだった。
体格が、大人と幼児ほど違う激ツヨのフォレストウルフ達の前ではワンワン行進も引き返さざるを得なかったのだ。
辺りを警戒しながら、昼ご飯を食べていると、やっぱり魔獣が襲って来た。
利英先生の形見の剣のサビにしてやったら、その魔獣の遺体は、あっという間に集まって来た他の魔獣に骨まで食べられた!
一頭づつは弱い魔獣だが、群れると手に負えない強さになる。
何本か、大樹を切って整地するとログハウスをブラッドがアイテムボックスから出して、久しぶりの風呂に入る。幸せぇ~♬
結界の魔導具を4隅に置いて久しぶりにゆっくり眠った。
朝になりルパートがミートソースのピザを焼いてくれた。サラダは現地調達した食べられる野草。クルミのドレッシングが最高だ。
その時、玄関のドアが手荒くノックされた。
「オ~イ、開けてくれ!バトルマスターキエイ様からの使者だ」
俺は素早くイスから降りると玄関へダッシュした。
玄関を開けるとビジューにとぐろを巻かれて苦笑いしてる細マッチョの兄ちゃんがいた。
「おお、この蛇何とかしてくれ」
「ビジュー!お客さまだよ。問題ない!離してあげて。すみません!中にどうぞ。朝ごはんいかがですか?」
「お?いいね!ごちそうになるわ」
ミートソースのピザを焼いて、アツアツを食べさせると、ビジュー用のステーキを焼いてビジューのご飯とトリルさんの朝ごはんの足しにする。
「美味ぇ~!このピザって、ヤツ師匠に食わせてやりたい!」
「お弟子さんは何十人いますか?」
「あ、作ってくれんの?!材料持って一緒にキエイ師匠のとこ行こうぜ!」
「!ハイ!行きます!」
ルパートに肩を突かれる。
「何の用か、聞きましょう?」
あ、そうだ!
「トリルさんの御用は何ですか?」
トリルさんは、1ピースをヒョイパクして、口の中身が無くなるとお使いの理由を話してくれた。
「チャレンジは一人づつ、一日置きに。坊やは挑戦者か?」
「ハイ!そうです!エイチと言います!」
「エイチくんは、今日特別に登山ルートを教えてあげよう」
「俺は食材持って行けないから2人共連れて行っていい?利英先生にお土産持って来てるから」
「仕方ない。付いてこい!エイチくんは俺の背中に張り付いてな!」
こうして、2日かけて、道なき道を行き、途中でルパートが付いて来られなくなった。
魔獣も強かったが、断崖絶壁を手の力だけで登らなきゃいけなくて、握力が弱いルパートは、脱落した。
「ルパート!!」
「騒ぐな、エイチくん。仲間が拾って来るから、シ~ッだ。ブラッドは付いて来てるか?」
「うん、頑張ってる」
「ここの魔獣が一番厄介だから、見つからない内に登るぞ、って、言った傍から出てきやがった」
グリフォンだった。背中に背負っていた弓で目を射抜く。ヒットした!もう片方も射抜くと崖下に落ちて行った。待ち構えていたビジューが、ヒョイパクした。
「あの従魔な、反則だから、試練には使うなよ?」
「ハイ!」
崖登りは、一日かかった。崖の上でシチューを作りブラッドとルパートの到着を待った。ルパートはビジューが届けてくれた。
遅れてブラッドが肩で息をして到着した。
「キツっ!メシくれ!エイチ」
「ロールパン出して、ブラッド」
「クソォ!オレもビジューに運んでもらやぁ、よかった!」
ブチブチ文句を言いながら皆にクリーンを掛けて、アイテムボックスからパンを10個出すブラッド。ルパートはマントにビジューの牙が引っかかって穴が開いたと悲しんでいる。
「シ~ッ、グリフォンいるから、静かに!」
「いや、登ったら出て来ない。ここからはキエイ師匠の散歩コースだから、安全だ」
シチューを木皿によそって、食べていると物凄い威圧感を感じて思わず警戒すると、トリルさんが鍋の中身を覗き込んだ。
「これ、仲間にあげていいか?」
「もう一鍋作るよ。これはこの4人の分です」
「エイチくんはお母ちゃんみたいだな」
所帯染みているって、事か?
ウケてるブラッドには、お替わりなしにして、その分をルパートトリルさんの木皿に入れた。
「え?!何で?!」
胸に手を当てて考えろ!