第14話 勉強
お正月が明けた頃、薬師ギルドのルルーさんから、学校に通って見ないかと誘われた。
確かに、文字の読み書きが出来ないのは不便だ。
ルパート達に相談してみよう!
♢♢♢♢♢
「私が教えましょう。それなら、時間に縛られないでしょう?」
「・・・ありがちょ!ルパート」
ルパートの教え方は丁寧でおっさんの俺には少々むず痒かった。
ローマ字のような法則がある文字で形を覚えれば、後は簡単だった。
ただ書き辛さは漢字の比ではない。しかも筆記体になると、読めない。
「だりぇが、かんがえちゃにょ!」
「ほらほら、そこは【い】です。・・・ちょっと休憩しましょうか」
「すりゅ!」
「エイチ様、紅茶と緑茶どちらにします?」
「げきあまにゃ、こうちゃ!」
糖分でも取らないとやってられっか!
激甘な紅茶は砂糖がジャリジャリしてたが、3杯くらいまえたら、元が取れた。
「書くのは上手になりましたね」
「しょう?」
さすがルパート!褒めて伸ばす男!
「後はもうちょっと筆記体が読めるようになりましょうね?」
グハッ、豪速球が来た。
「大丈夫です。まだまだ冬は明けませんから、時間はあります」
何でルパートに教えてもらおうと思ったんだ!俺は!!
普通に鬼じゃねえか!俺のバカーーー!
書くのは上達したが、筆記体を読むのは一進一退という何とも言えない状態のまま、勉強の終わりを告げられた。
冬が終わりを迎えたのだ。
オニキスとビジューが起きて来てまた、交易が始まった。ポーション作り⇨修行⇨勉強を繰り返し、夏を迎えるある日、それがやってきた。筆記体がスラスラ読めるようになったのだ!俺は大喜びして、ビジューとリキとナハト(リキの父親)達に狩って来たシルバーサーペントを大盤振る舞いした。
※※※※※鑑定
レベルが上がったせいでしょう。コツコツ勉強したからですね。今度は筆記体が書けるようにしましょう。
※※※※※
ぐぬぬぬぬ、勉強、終わったと思ったのに!!
※※※※※鑑定
正式な文書は全て筆記体です。まだ、貴方はスタートラインにも立ってない。や~いや~い、あほたれぷー。
※※※※※
!!!
ぜっったい、書けるようになってやる!!
馬鹿にされたままでへこむ俺じゃない!
まず、手始めにドゥーマ宛に手紙を書きリキとナハトにお使いしてもらった。
習うより慣れろ!だ。
ドゥーマなら悪筆の手紙にも慣れてるだろうし、樹海での生活にも興味があるだろう。
と、思った時もありました。
返事はこれだけ。
◆○◆○◆
エイチへ。
字が書けるようになってよかったな。俺はこれでもギルドマスターだから忙しい。
手紙の練習ならトニスに付き合ってもらえ。
ドゥーマ
◆○◆○◆
俺はトニスさん宛に毎日手紙を送った。トニスさんはここはこう書いた方が印象が良いとか、ビジネス用の手紙の書き方まで、指導してくれた。
この世界に来て3度目の秋、樹海で小規模なスタンピードが起こった。
原因はハンターがドラゴンの卵を盗んだせいで、危うくセシルガーデン国は、巻き込まれる所だった。
何とかビジューがドラゴンの卵を返して許してもらえたが、ドラゴンが去っただけで、いろんな魔獣が押し寄せて来た。
リキ達にドゥーマの所までひとっ走りしてもらった。セシルガーデン国側のハンター達と一緒に戦ったが、セシルガーデン国のハンター達は弱い。ナハトとビジューが暴れまくって何とか押し返していた。もちろん俺も持てる限りの力で2頭の奮闘を支えた。
リキ達がドゥーマ達を乗せて連れて来た時には俺以外は戦えるハンターはセシルガーデン国側にはいなかった!ビジューもナハトも少なくは無い傷を負っていて治療が必要だった。
「エイチ!よく押さえた!俺達に任せて下がれ!」
「ドゥーマしゃん、ケガは?!」
確か大けがしたからハンターを引退したはず。
ドゥーマは陽気にウインクしてビッと親指を立てた。
「どっかの誰かさんのよく効く薬で全快よ!」
欠損治癒薬で治るケガだったのか!
ドゥーマは草でも刈るみたいに、あっという間に20体の魔獣を討伐した。
ハッ、観てる場合じゃない!ビジューとナハトに木桶いっぱいのポーションを掛けた。
ナハトはお腹が減っているようだ。
俺の兵糧を出して腹いっぱい食べさせた。
ビジューは交戦相手を捕食中。俺もポーションを飲んで軽く食事を食べた。一昼夜討伐してたので、今、猛烈に眠い。
気が付けば、オーガが目の前にいた。
しまった!避けようがない斬撃。身体強化して衝撃に備えた。
シャアアアアアーーー!パクッ。
「間に合った!エイチ様!ただ今帰りました!」
オニキスとルパート、ブラッドが帰って来た!
オニキスを見て魔獣達が撤退し始めた。
オニキスって、どんだけコワイんだよ!!後はオニキスが豪快な食事して討伐完了。
せっかく来た32名の有志達にログハウス前で焼き肉してもてなした。
掃討戦勝利の奮闘ボーナスを貰いに皆でセシルガーデン国へ。弱っちいセシルガーデン国のハンター達もこの時ばかりは元気よく、何だかなあと思っていたら、リベルタのハンターギルドマスターのアスカさんにお仕置きされていた。
「ご協力感謝申し上げる!報奨金の受け渡しは、後日そちらまで、行く!それ程待たせはしない。」
「助かる!よろしく頼む!お~い、帰るぞお前ら!」
「「「「「「「「「「えーーっ?!観光はぁあああ?」」」」」」」」」」
「そんな汚い格好で観光も何もあるか!お土産はルパート達に頼めよ!エイチ、帰りも狼便頼めるか?」
ルパートが送ると言っている。
ハンターだから、オニキスに縛り付けられないだろう。落ちそうになっても踏ん張れ!
フォレストウルフ達だと、戦闘しないといけないから、樹海を安全航行できるオニキスの方が都合が良い。
「ぢょんびきしちぇりゅばあいじゃない!(ドン引きしてる場合じゃない)」
「その通りだ!帰るぞ!」
「でも、お土産みたい!」
「ルパート、シュッしてあげちぇ」
「ああ、クリーンですか?いいでしょう。一人大銅貨1枚で綺麗にしますよ?」
恐るべし、ルパート!課金制だった!
辺境の街のハンター達は、素直に大銅貨1枚払って綺麗にしてもらい、リベルタの街に散って行った。
ドゥーマもルパートに綺麗にしてもらいアスカさんとギルドマスターとして、今度こんなことがあったらの話し合いをしていた。
俺はその間に薬師ギルドに行ってポーションの納品をして小麦屋で、果物のパイを何種類か購入してハンターギルドに差し入れする。
「美味い!どこで売ってる?!」
ドゥーマが叫ぶ。
「もう きょうはうりきりぇちゃよ」
「何で俺のお土産に買って来てくれなかったんだよ!!」
アスカさんがジト目になりながら、ドゥーマに告げる。
「地元の私達でも手に入れられないんですよ?それを苦労せず手にすると?」
ゴゴゴと圧がかかる。
女の子は怒らせてはいけない。
人生の勉強になった良い例だった。