第13話 交易と冬休み
すみません!またまたお待たせ致しました!
誠に申し訳ございません!
「私達が貴方方の発泡酒を買い取りましょう。その代わりこの村に店を構えさせて下さい」
ファリオさんは困った顔をした。
「しかし、皆 金なんて持ってない」
「そこで、狩って来た魔獣の革をなめしたものと引き換えに商品を渡すようにします」
「老人や独り身の夫人が困る」
「そこは村人たちで助けてやれよ、オヤジ」
ファリオさんの隣りにいるご婦人がはつらつと言った。
「良い条件じゃないか!アンタ!引き受けな!」
「しかしなぁ・・・」
「何ごちゃごちゃ考えてんだい!独居老人なんて里にはいないし、独り身の女は狩りが得意だよ!店はこっちで建てとこうか?!」
「いえ、持って来てるんで場所だけ指定してもらえれば」
村の広場の一角に俺たちの自宅を改装した岩の店をルパートが出し、棚や平台に商品を置いて行くと、狼獣人達は家に帰って鞣した魔獣の革を競走せんばかりに持って来た。
鑑定さんで、食材や雑貨、調味料などと等価交換してノルドの里での1日目が終わった。
泊まるのは、ブラッドの家の納屋になったが、ベッドを持って来てるんで問題ない。
食事はさすがに作ったが。食べたそうにしてた里人を無視して(食材の残りが少なかったので)オニキスとビジュー達に大量に食べさせて俺たちも食べた。
実家で食べるかと思ってたブラッドが余計な一言を皆の前で言った。
「実家で飯?嫌だ。だってエイチ様の飯が美味いから!」
ブラッドォオオオオ!
ブラッドはルパートにお仕置きされていた。
発泡酒の取り引きもあるので3日ほど里に滞在したが、皆さん食事の時間を狙ってくるので仕方なくごちそうする事に。
最後の日は俺が主催の宴会みたいになって、ブラッドのおバカさんにパンチをくれてやった。これで帰りの食材がない。
等価交換のお店は、ブラッドの従兄弟で革を目利き出来るヒューさん(31)に任せた。
大量の革を手に入れた俺たちは、これも交易品にする事にした。
発泡酒と魔獣の革をデューバーグ国の王都に売りに言ったら、発泡酒がひと樽金貨1枚で売れた!慌ててひと樽国王陛下への献上品にした。ハーライト商会の会長ラペルさんが、後々面倒くさいからそうしなさいと忠告してくれたのだ。ありがたい!
王都では、樹海の魔獣の革は珍しく、随分儲けさせてもらった。
ノルド村の店に置く商品をたっぷり買っても、問題ないくらいだった。
砂糖/小麦粉⇨発泡酒/魔獣の革⇨香辛料⇨魔獣の肉を安く取り扱う露店をデューバーグ国内を巡って行商した。
あと、デューバーグ国の王都に稲穂屋の3号店を出した。もちろん小麦粉のパン屋さんだ。従業員は、皆奴隷さんにした。ちょっとお金がかかったが、俺たちは、各国に店を出してもおかしくない程、儲けていた。大金貨1000枚くらいは、商業ギルドに貯蓄がある。
主にブラッドとルパートがオニキスと仕入れと行商にまわり、俺はビジューを用心棒にひたすら、ポーション作りと樹海での修行を積んだ。
セシルガーデン国は、冬が来るのでログハウスをDIYして、冬に備えた。
ビジューとオニキスも冬眠するので樹海の巣に帰ると言って行商も3カ月のおやすみになった。
それまでに、薬草をたっぷり採取してルパートとブラッドのアイテムボックスに溜め込んでおいたので薬とポーション作りがはかどった。
しかし、雪が止んだ日にリベルタの薬師ギルドに行くと、果物のパイやパンがないと嘆かれた。
忘れてた!デューバーグ国から輸入しなきゃ!
でも、どうやって?
「私に考えがあります。お任せください!」
ルパートが、ブラッドを連れて樹海に入って行った。心配だったから、気配を消して追跡したら、何と樹海の魔獣相手にテイムしようと危険を犯している。
足の速そうなガタイのいい魔獣を見つけて片っ端から弱らせてテイムしようと奮闘してるが、さすがに馬車グモはイヤだ。
ウルフ系の魔獣を求めて二人から離れた。
ウルフ系の魔獣の巣なら知っている。
群れたら強いからなるべく近寄らないしてたけど、ここは一発「ちゅきちゅき、あいちて!」の出番だ!
下手な鉄砲も数打ちゃ当たる!
巣に近づくとお出迎えのフォレストウルフ達、久しぶりのエサ(俺)に興奮している。
手でハートの形を作ってウインクしながら、呪文を唱える。
「【ちゅきちゅき、あいちて!】」
魅了されたのは、1匹だけだった。しかも、周りのウルフ達よりか細くて小さい普通の狼サイズ。
※※※※※鑑定
「ちゅきちゅき、あいちて」は一日一体にしかかかりません。アホですか?
※※※※※
しまった!
皆さん襲いかかって来た。
死にたくないから、頑張って戦っていたが、数の暴力に負けた。
右脇腹に食い付かれた!
※※※※※鑑定
とりあえず魅了したウルフに指示を出して危機を乗り越えましょう!
※※※※※
「【おにぇがい、おりぇにょ、じゅうまにゃって!】」
アオオオォオオオオーーーン!
小柄なフォレストウルフはどこにそんなパワフルな雄叫びを上げる力があったのか、見事にフォレストウルフ達を止めた。
そして俺の腹に食らいつくフォレストウルフを猫パンチで吹っ飛ばした。
※※※※※鑑定
名前と魔力をあげて下さい!
※※※※※
名前、名前、見た目より強いから、力、リキ、・・・どうかな?
「【リキ、おりぇにょじゅうまにゃってくだちゃい!】」
平伏したリキに魔力を流す。すると、リキは俺を背中に乗せ雪の樹海をセシルガーデン国へと真っ直ぐ走る。俺は貧血で気絶した。
翌朝、ログハウスに帰って来たルパートとブラッドは、血塗れの俺を見てリキを討伐するところだったらしいが、不思議な力を感じて討伐は一旦中止して俺をポーションで治したようだ。
「エイチ様!!このケガと、このシルバーウルフの説明を求めます!」
「・・・しょにょまえに、ぞうけつざいにょましぇちぇ」
ルパートが、俺を抱き起こして造血剤を飲ませてくれた。
「ありがちょ。リキはおりぇにょ、じゅうま にゃにょ!」
ルパートとブラッドは、顔を見合わせて項垂れている。
「「私(俺)達が情けないばかりに、貴方にご迷惑をお掛けした。申し訳ございません!」」
「いいにょ!こんぢょはみんにゃでやりょうにぇ!」
ルパートと、ブラッドが俺をぎゅうする。
「くりゅちっ!はにゃしちぇ!ルパート、ブラッド!」
ルパートが俺をベッドに運ぶ。
ああ、どうしよう?小さいフォレストウルフなんてテイムしても俺しか乗れないよね?
一日一体にしかかかりませんとか、聞いて無いし!
この世界に来てから2年も経つのに、自分の能力さえ知らなかったのは、俺の怠慢だ。
「リキに、ごはんあげて・・・」
俺は、眠りについた。
翌朝、騒がしい気配で目覚めると、ログハウスいっぱいのフォレストウルフ達が、いた。リキはその中でもサイぐらいの大きなフォレストウルフとお互いを舐め合っていて仲良くしていた。
どういうこと?ルパートは?ブラッドは?
「リキ、ほかにょ2りは?」
ログハウスの玄関のドアが開いた。
雪を被ってるルパートとブラッドが俺が起きてるのを見て笑った。
「エイチ様!体調が良かったら料理お願いします!」
「う、うん!」
料理しながら、話をルパートから聞くと、俺が寝た後、リキを探してリキの親が群れを率いてログハウスを取り囲んで遠吠えしていたが、リキに怒られて雪の降る中しょんぼりしてたらしい。
かわいそうに思ったブラッドがテイムに失敗して討伐した魔獣を解体してあげたらしい。飢えていたフォレストウルフ達はお腹がぽんぽこりんになるまで食べて、そしてログハウスに入って来た。
リキの父親のデカいフォレストウルフが、ブラッドと契約を交わして従魔になったらしい。
「よかっちゃ!」
「良くねえよ!17頭もいるこいつらのエサみなきゃならないんですよ!エイチ様!」
「50とうよりはまし」
「私も手伝うから、頑張ってくれ。ブラッド」
大っきい従魔ゲットだぜ!
こうして、冬の間の交易の足を手に入れたのだった。