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ちゅきちゅき、あいちて!  作者: 榛名のの(春夏冬)
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第11話 涙と絆

ルパートに叱られたがハノン草は新鮮さが命の薬草。

 軽く湯通ししてガーゼみたいな布で搾る。

乳鉢に溜まった絞り汁を最高品質のポーションにガラス棒で混ぜる。ホワッと明るくなり欠損部位治癒薬が出来た。


「ルパート、にょんで」


「もったいない!売って下さい」


「ルパートにょためにょ、くしゅりにゃにょ!おにぇがい!」


ルパートは親指の無い手で器用にポーション瓶を握ると一気に中身を飲み干した。


「何の薬ですか?」


親指は生えてこなかった!


「あちゃまが、よくなりゅ くしゅり・・・」


「どういう意味ですか?!もう、ご飯食べて寝ましょうね!」


ハノン草じゃなかったのかな?


 あんまり食も進まずルパートに心配をかけた。

 翌朝、良い匂いで目が覚めた。

この匂いは、オークの生姜焼き!炊き立てのごはんの匂いもする!


「・・・おにゃかしゅいた」


オークはビジュー達が狩って来たのかな?

でも、解体は誰がしたんだ?


ベッドから下りると鼻歌交じりのルパートが料理してるのが見えた。菜箸を親指・・と人差し指で操っている。

 欠損治ってる!

俺はそのまま走って、ルパートの足に抱き付いた。


「うおぅ?!エイチ様、もう少々お待ちください」


「うん!まちゅよ」


「着替えて下さい。お顔も洗いましょうね?」


「うん!きがえりゅ」


着替えて顔を洗うと朝なのに夜並みのメニューがテーブルの上に並んでいた。


「エイチ様、私の無くした親指を取り戻してくださり、ありがとうございます!このご恩は一生掛けて返します!では、食べましょう!いただきます!」


「いちゃーきましゅ!」


・・・何故かコショウが入ってたが、生姜焼きと思わなければ美味しかった。

 これからは料理もちゃんと教えないと!


今日は、セシルガーデン国の辺境の街リベルタへ各種ポーションの納品だ。

セシルガーデン国に来てもう2週間経つ。3日に一度のポーションの納品は順調に済んでいる。

 立て替え中のパン屋は、柱が腐ってなかったので、もう、ちゃんとした店になっている。今は厨房と、内装を整えてるだけだ。

2階はたくさん部屋があって、なかなか快適な生活空間になっている。

 

 ポーションを薬師ギルドに卸したら、ベッドとタンスを買いに家具屋まで行くつもりだ。

 今日はお買い物の日。

ベッド10個に布団10組、タンスはそれほど良い物は買えないけどと、ルパートに言ったらあるだけ贅沢です!と言い切られたので、まあ、いいか。

後は文机と椅子を一脚。これにはルパートと買う買わないで揉めた!


「てがみかくにょに、ひちゅようでしゅ!」


「ほとんどの平民は文字を知りませんし、部屋は、それほど広くありません!」


「だったりゃ、おちえてあげたりゃいい!」


「では、こうしましょう。生活してみて、必要なら買う!今は買わないであとから皆の意見を聞きましょう?」


俺はプウッと頬を膨らませた。

 ルパートめ!こういう時だけ譲らない!

思い切り二の腕を抓ってやった。


それからの2週間はあっという間だった。

パン屋をやるのに、必要な食材の仕入れ先をルルーさんに手配してもらい、契約書を交わす前に今度こそ、騒動に巻き込まれないように綿密に打ち合わせした。

 セシルガーデンでは小麦粉1キロが、小銅貨3枚と、本当に安い!

 家庭で焼くからパン屋は、無いそうだ。

 惣菜パンと菓子パンが売れそうな感じがする。

 樹海手前の家で、いろんな惣菜パンを試作してルパートと意見交換しながら、パン屋のラインナップを決めて行く。

セシルガーデン国は果物が無いのでデューバーグ国で仕入れてフルーツサンドや、バナーナ生クリームあんコッペパン、季節のタルト、パイなども売り出す。


やがてセシルガーデン店が完成して、いよいよ従業員の引っ越しと相成った。

 シルバーサーペントを5頭狩って来て、皮だけもらい、オニキスにエリオット達をその皮でくくりつけ樹海を渡ってセシルガーデン国に入国した。皆、オニキスにくくりつけた時点で気絶したので騒がなくてよかった。

1日休んで、2日目から3日間新しい商品の研修をして、開店した。


季節の果物のタルトやパイが飛ぶように売れて嬉しい悲鳴を上げていた。

 客はほぼ女性で、ちらほらハンター達も来てボリュームメニューを買って行った。昼を過ぎると完売して終業。


会計のメイサが今日の売り上げを発表する。


「今日の売り上げは金貨3枚と、銀貨1枚、小銅貨5枚です!」


皆、拍手した。これで盛り上がらない訳がない!ミンミが起きて来た。


「おはよう!あ!パイ売れてる!嬉しい!!というか、ひょっとして完売?」


「そうらよ!ミンミ。おちゅかれしゃま」


「や~ん!すごいね!皆。オーナーもお疲れ様です!」


ミンミは、パイ生地とクロワッサン生地を担当してる為、1人勤務時間が違うのだ。

昼から真夜中までが、出勤時間だ。もちろん夕方までは、皆が修行を積む時間だ。早くパイ生地を作れる料理人をふやさなきゃ、早晩クレーム対応に苦慮するだろう。


翌日、似たような商品を売る露店があちこちに出来ていた。しかも、常連客を持っているらしく惣菜パンはサッパリ、売れなくなった。思い切って、惣菜パンをやめて、菓子パンとタルトとパイ、焼き菓子などを売り始めると、笑いが止まらなくなるぐらい売れ始めた。パイの店、小麦屋は日一日と売り上げを伸ばしていた。

 

 お世話になったルルーさんにペリの実のパイを持って行くと何故か拝まれた。


「6ホールあるから皆でどうぞと、エイチ様からの差し入れです」


「ありがとうございます!皆、並ぶけど売り切れになってることが多くて、一度だけでもいいから食べたいと言ってたのです!大事に食べます!」


「また、持ってくるから、楽しんで食べて欲しいとエイチ様はおっしゃっています」


 ルパートは俺のろれつが怪しいから、アイコンタクトだけで、大体言いたいことを代弁してくれる。


ありがとうルパート。頼りにしてるぞ。


 小麦屋が開店して1カ月経たない内にリベルタを含めた辺境を治める領主様からの呼び出しがかかった時、厄介なことになったなと、内心思っていたが、その日の営業を休んである商品全部持って訪問すると、その日の午後のお茶会にパイやタルト、焼き菓子などが、流用されたようで、もう少し甘い方が良いとお言葉をもらった。

 それはわかっているが、砂糖が高いから、控えているのだ。そう正直に答えると髭の手入れも欠かさない感じのじいさん領主は、砂糖大根の畑と加工所をホイッとくれた。

 職人もつけて。管理する人が必要になる。

半泣きでルルーさんにすがったら、ルルーさんのお父さんを紹介してくれた。


「国の事業に関われるなんて、光栄です。このヴェルヌこの身を賭してかかりましょうぞ!」


国の事業???


ルパートも疑問視したらしい。


「砂糖大根が国の事業とは?どういうことですか?」


「実は、わが国は、樹海に囲まれてる故、外国と鎖国状態で、君達が持ち込まないと果物さえ無い。種の提供ありがとうございます」


「いえいえ、お役に立ててよかったです。いずれの国からも孤立無縁なのですか?」


ヴェルヌさんは、ヘコんだ顔で頷く。


「色よい返事を貰えても、実際に樹海を渡ってみたら、魔獣が強すぎて全滅したりするんです。ハンター達に護衛を頼んだら、大赤字必須!気が付けば外からの旅人もいない状態が普通になってました。そこで、貴重な物なら、取り引きを行いたいと思うのではないかと、砂糖大根の種を農業の神ミネルヴァ様から賜ったのです」



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